自公政権、「成長戦略」に盛り込み、安価で安全・利便性高い機器めざす
政府の新たな成長戦略(日本再興戦略)には、ロボット介護機器(介護ロボット)の開発促進が盛り込まれています。
高齢者や障がい者の介護・移動支援など、生活支援分野でのロボット技術の活用に強い期待が寄せられています。介護者の負担を軽くするロボットの活用によって要介護者の歩行や食事、入浴などの日常生活を手助けする取り組みは、高齢化が進む中にあって重要なテーマといえます。
現在、65歳以上の高齢者が同年代の配偶者らを介護する「老老介護」の割合は45.9%に上り、介護うつの増加が社会問題となっている。また、介護労働者は現在149万人だが、2025年度には249万人が必要と推計されており、介護ロボットの需要は格段に伸びることが予想されます。
ところが、生活支援ロボットの普及・実用化を進めるための安全基準の策定など、制度面の整備が進んでいません。各企業が、経済産業省とNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるロボット開発支援を受けて開発努力を継続してきました。
この点で、今回、経産省が推進し、厚生労働省が支援する介護ロボット開発事業が成長戦略に「ロボット介護機器開発5カ年計画」として組み込まれた意義は、非常に大きなものがあります。
この計画は今年度からスタートする経産省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」をベースにしたものです。主な計画として、(1)安価で利便性の高いロボット介護機器の開発(2)安全基準とそれに基づく認証制度を今後1年以内に整備(3)現場のニーズを踏まえた機器の導入-を柱に最長5年にわたって進められます。
政府は近い将来、1台10万円程度の介護ロボット機器を普及させたい考えです。工業製品の国際規格を作る国際標準化機構(ISO)が今秋にも介護ロボットの安全基準をまとめます。
ISOは163か国が加盟する工業製品の国際規格を作る民間組織です。日本の提案を採用し、安全基準に関する80以上の項目を定めます。その後、ISO加盟国の民間認証機関が各項目に沿って製品の試験を行うことになります。
ISOが定める項目には「室内などの段差を検出できる」、「路上の人や動物などを避ける」、「乗降時に転倒しない」などの機能が盛り込まれます。騒音や振動を抑えたり、電気や熱をため込まないようにしたりする装置を備えることも必要になります。
いばらきは介護用ロボットの揺りかご
この基準作りに中心的な役割を果たしたのが、茨城県のつくばにある「生活支援ロボット安全検証センター」です。日本が世界的な安全基準自体をつくることにも、大きなメリットがあります。
また、茨城県は介護用ロボットとして有名な「パロ」や「HAL」の出生地です。
パロは、認知症予防などに用いられるアザラシ型ロボットです。パロは動物と触れ合うアニマルセラピーと同じ効果をロボットで実現しようと、独立行政法人・産業技術総合研究所(つくば市)が開発したもので、国内に限らず、海外にも普及が進んでいます。
「ロボットセラピー」と呼ばれ、介護ロボットを活用した癒やし効果は、お年寄りの精神状態の安定や会話を取り戻すために役立ち、介護施設でも広く導入されています。
一方HALは、体に装着することによって、身体機能を拡張したり、増幅したりすることができる世界初のサイボーグ型ロボットです。人間が筋肉を動かそうとしたとき、脳から筋肉に神経信号が伝わり、筋骨格系が動作しますが、その際に、生体電位信号が皮膚表面に漏れ出してきます。HALは、皮膚に貼り付けられたセンサでこの信号を読み取り、その信号を基にパワーユニットを制御して、装着者の筋肉の動きと一体的に関節を動かします。これによって動作支援が可能になります。HALの応用分野は幅広く、福祉・介護分野における身体機能に障害がある方への自立動作支援、介護支援などに活用が期待されています。
HALは、筑波大学大学院の山海嘉之教授の研究成果を、広く社会に提供するために2004年6月に設立されたベンチャー企業・サイバーダインによって開発されています。
公明党は最先端技術の開発・実用化を全力を挙げて支援
公明党は最先端技術を活用した介護・生活支援ロボットの技術開発や実用化の促進を求めてきました。介護・福祉環境をより一層改善するためには不可欠だからです。
今後数年間の取り組みが、将来の日本の介護ロボットの在り方を決める重要な時期を迎えています。介護機器の普及・実用化に国はもっと本腰を入れ、利用者の負担軽減のため、介護保険の適用対象に含めるなど、支援体制を充実させていかなければなりません。