4月10日、海外からインターネットを通じて配信される電子書籍や音楽、映像などに消費税を課すことを求める緊急集会が開かれました。ネット通販大手アマゾンなど海外業者から買う場合は消費税がかからない一方、日本企業から買う場合は消費税が掛かります。消費税率が8%に上がったことで、消費者が負担の少ない海外業者に流れる可能性がさらに高まると懸念されています。
集会では国内の書店や出版、インターネット広告の業界団体が連名で、早く税制改正を実施するよう求める声明を発表しました。
朝日新聞の報道によると、「出版デジタル機構」の植村八潮会長は「記者会見で増税を受け、国内の電子書籍業者の間で廃業を検討する動きが広がっている」と指摘しました。また、紀伊国屋書店の高井昌史社長は「8%は大変なハンディ。消費税率が10%になった時にはうちも白旗を揚げる」と述べ、来年10月に予定される10%への増税時に税制改正がなければ、自社の電子書籍事業を打ち切る可能性を示唆しました。
ネット通販や音楽などのネット配信を利用する機会が比較的多いものにとっては、消費税が課税されない方が良いのに決まっています。しかし、課税への不平等解消は避けては通れない課題です。
政府税制調査会は、海外事業者に納税を義務付ける制度に見直し、2015年度の税制改正をめざして議論を進めていくことになっています。
調査会の見直し案では、海外事業者は、電子書籍など個人向けでは消費税込みで配信し、日本国内の税務署に申告納税することになります。ネット広告など事業者向けでは、配信を受けた国内事業者が申告納税する仕組みを導入します。
消費税は現在、輸入品と国内取引が課税の対象で、国境を越える電子取引の場合、サービス供給地が国内の場合には課税されるが、国外の場合は課税されません。
このため、同一の電子書籍でも、国内発か海外発かで価格は異なります。例えば、国内のネット書店では消費税8%を含む1512円で配信されているものが、アメリカやカナダに拠点を置くネット書店では1400円になっています。同じソフトでも、海外版のソフトを購入すると単に為替のレートだけでなく、消費税の影響も受けてかなり安く購入できる事例が多くあります。
このままでは「消費税の空洞化」を招く恐れがあります。「税の抜け穴」をふさぎ、内外格差を是正し公平な制度にするべきでです。
昨年9月には、文字・活字文化推進機構や日本出版インフラセンター、日本書籍出版協会、日本雑誌協会など出版業界の9団体が、「公平な競争が阻害されている」として、「海外事業者のコンテンツに対する公平な消費課税に関する要望書」を政府税調などに提出しました。消費税の税率アップもあり、国内の事業者の不公平感は高まっています。
海外から配信される電子書籍などにも消費税が課せられることは、価格の上昇になります。しかし、現状を放置すれば、税収が失われるだけでなく、日本のネット産業の競争力低下や海外流出(日本の企業が海外に別法人を作ったり、サーバーを置いたりすれば課税を免れる)を招いてしまうことになります。
経済のグローバル化に伴って、国境を越えて活動する大企業は節税に努め、先進国はその後を追って懸命に課税の道を探ろうとしています。欧州連合(EU)でも、2015年から、域内、域外を問わず、電子的手段により提供されるサービスへの付加価値税(日本の消費税に当たる)の課税は、サービス提供者の居住国ではなく、消費者の居住国となります。
政府には、海外の動向に目を凝らしながら、国内産業を守り雇用を維持するため、スピード感のある対応が求められています。