9月24日、九州電力(九電)が再エネ電力について、固定価格買取制度に基づく新規買い取りを、一般家庭用を除き制限すると発表しました。
計画中を含む全太陽光発電が稼働すれば九電管内で必要な電力需要を大幅に上回り、送電設備に過剰な負担が掛かることで、大規模な停電に陥る恐れがあるという理由です。東北電力も買い取り制限の検討に入ったようです。
天候に発電量が左右されやすい再エネ利用の難しさを露呈したとの声もあるが、問題の本質は制度の運用にあります。
企業が大規模に太陽光パネルを設置して生産する電力と一般家庭が再エネ発電機器で作る余剰電力は、買取制度に基づき地域の電力会社が買い取ります。買い取り価格は毎年度見直されますが、その年度ごとの価格は最長で20年間、同額に設定されます。
制度を開始した2012年度は普及を促すため、価格は高く設定されました。太陽光発電を中心に買い取り申請数は伸びましたが、一方で価格の高い時期に申請だけし、その後に太陽光パネルが技術革新などで値下がりするのを待った上で事業化して、利益のかさ上げを狙う悪質な事業者が後を絶ちません。
再エネ市場をこれから育成する日本では、国が適正価格を設定することが必要ですが、高めに設定すると企業参入を過剰に刺激し、必要以上の電力供給に拍車を掛けます。企業に適正な利益をもたらす上でも、再エネ大国のドイツと同様に価格を年に何回か改定することも検討すべきではないでしょうか。再エネ電力を余すことなく活用するには、送電網の強化と拡充も不可欠です。
東京電力福島第1原発の事故後は、電力供給にあまり余裕がありません。場当たり的な買い取り制限は電力供給全体を不安定化し、安定需給と低価格に貢献できる再エネのメリットを失わせかねません。
経済産業省は専門家の会議を設けて制限の現状を調査する方針を示しました。再エネの普及に向け「何ができるか、あらゆる角度から検証する」(小渕経産相)ことが必要です。
発電事業者と消費者の双方に利益が生まれる買取制度へ改善が期待されます。
九州電力株式会社
平成24年7月の固定価格買取制度(以下、FIT)開始以降、太陽光発電(以下、太陽光)を中心に再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及が進んできました。特に九州は、太陽光のFITによる設備認定量、及び既に発電中の設備量のいずれも全国の約1/4を占めており、他地域と比べても再エネが急速に普及拡大しています。
当社は、国産エネルギーの有効活用、並びに地球温暖化対策として優れた電源であることから、再エネについては、水力、地熱などを積極的に開発するとともに、太陽光などの受入れを推進しており、合わせて更なる再エネの受入れ拡大に向けたスマートグリッド実証試験などの取り組みを行っております。
そのような状況において、本年3月の1か月間で、それまでの1年分の申込み量に相当する約7万件もの太陽光の接続契約申込み(以下、申込み)が集中したことから、内容の詳細を確認してまいりました。その結果、7月末現在の申込み量が全て接続された場合、近い将来、太陽光・風力の接続量は約1,260万kWにも達することが判明しました。これらの全てが発電すると、冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時などには、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れ、電力を安定してお届けすることが困難となる見通しです。
以上の状況を踏まえ、当社は昼間の揚水運転の実施や地域間連系線を活用した九州外への送電など、現状で可能な最大限の需給バランスの改善策により、九州本土において再エネをどこまで受け入れることができるかを見極める検討を行います。この間(数か月)、別紙のとおり、既に再エネの申込みをされている事業者さま、及び今後新規申込みをされる事業者さまにつきまして、申込みに対する当社の回答をしばらく保留させていただきます。
ただし、ご家庭用の太陽光(10kW未満)などは、当面回答保留の対象外とします。
当社といたしましては、電力の安定供給を前提として、今後も再エネの円滑な接続に向けた対応を進めてまいりますので、関係者のみなさまには大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご協力をお願い申し上げます。