育ち盛りの子どもが家庭の事情に関係なく、十分な栄養を取れる環境を整える義務が地方自治体にはあります。茨城県の学校給食のホームページには以下のような記載があります。
学校給食について
児童生徒を取り巻く社会環境等の変化に伴い、偏った栄養摂取、肥満・痩身傾向など子供たちを取り巻く問題が深刻化しています。また、毎日の給食を通じて、地域等に対する理解や食文化の継承など自然の恵みや勤労の大切さなどを理解することも重要です。これらのことから、子供たちが、食に関する知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、生きた教材となる学校給食の充実を図る必要があります。
http://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gakkou/karada/kyushoku/ibakyusyoku/index.html
現在、給食は自治体と保護者がその費用を折半して負担しています。今年度、文部科学省は、公立小中学校の学校給食の無償化に関する全国調査を、初めて行う方針を明らかにしました。公明党の山本香苗参院議員の質問に答えたものです。
学校給食の無償化は、58自治体が小中学校、3治体が小学校で実施しています。茨城県では、大子町が第1子、第2子は半額、第3子以降は無料化しています。
その数はまだ少数ですが、確実に増加傾向にあります。これらの自治体が無償化に踏み切った理由や子どもへの影響などについて調査・分析することは、まだ無償化していない自治体にとって貴重な資料となります。
文科省が調査に乗り出す背景には、「食のセーフティーネット(安全網)」としての給食に注目が集まっていることがあります。
実際、家庭の事情により、自宅で十分な食事を与えられていない子どもが存在します。低所得世帯の子どもほど朝食を取らない割合が高く、野菜を食べる機会が少ないという調査もあります。
家庭環境による“栄養格差”をどう改善するかという点で、学校給食の果たす役割は大きいといえます。
その上で、なぜ無償化が論議されているのか。
理由の一つとして、“子どもの貧困”があります。給食費の平均は小学校で月額約4300円、中学校で約4900円です。低所得家庭ほど負担感は強くなっています。文科省の調査では給食費未払いの原因の約3割は保護者の経済的な理由によります。
生活保護や就学援助の制度を利用する方法もあるが、申請をためらったり、制度そのものを知らないケースも少なくありません。全国調査で未払い世帯の実態も把握する必要があります。
一方、低所得世帯に絞って無償化するという考え方はありますが、「貧困のレッテル張り」につながり、子どもの心を傷つけかねない懸念があります。
また、少子化対策、当該市町村への子育て世帯の誘致を目的に、他自治体との差別化を行い給食費の無償化を図る自治体もあります。
さらに、給食費を集める教師や学校側の負担も無視できません。
こうした観点から、保護者の所得にかかわらず給食費を無償化することの必要性が論議されるようになってきました。
無償化の実施に当たっては財源の確保をはじめ解決すべき問題も多いのが事実です。この点も含め、今後行われる全国調査を学校給食無償化の論議を深める契機とすべきです。