茨城県南部を中心に発行されている常陽新聞の1月3日付一面に、国勢調査の速報値を受けて、県議選の選挙区見直しに関する記事が掲載されました。
この記事では、「定数の逆転区も目立つほか、合併後の新市町の一体化を促進する観点では旧市町村のままの選挙はこれに逆行するとの批判もあり、県議会がどう対応するか注目される」と指摘しています。具体的には、人口と定数が逆転する選挙区が、日立市とつくば市、下館市、真壁郡と龍ヶ崎市、牛久市、東茨城郡南部と稲敷郡など5箇所に上る。また、市町村合併で消滅している郡(西茨城郡、鹿島郡、行方郡)の代表を選ぶことになる。一票の格差が2倍以上となる選挙区が5つある。潮来市と行方郡では特例が時間切れとなっている。合併のよる選挙区の矛盾が3つ起こる。などと指摘しています。
どうなる選挙区見直し
常陽新聞(2006/1/3付け一面)
12月に県議選・国勢調査で格差拡大、合併で定数の逆転区も
12月に県議選(定数65)が行われる。市町村合併が進み、3月末では44市町村に再編されるが、選挙区は2004年の第3回定例県議会で従前の選挙区のまま実施される方向が示されており、合併前の市町村の枠組みで実施される見通しだ。ただ、昨年12月に発表された国勢調査の速報値では、定数の逆転区も目立つほか、合併後の新市町の一体化を促進する観点では旧市町村のままの選挙はこれに逆行するとの批判もあり、県議会がどう対応するか注目される。
県議会は04年9月に「市町村の合併に伴う県議会議員の選挙区の特例に関する条例」を制定。合併後、最初に行われる県議選は従前の選挙区のまま行うことを決めた。ただ、「合併による郡市の区域の変更の状況、国勢調査の結果による人口の状況等を勘案して見直し、必要があると認めるときは、必要な措置を講ずる」とされた。
昨年の国勢調査結果によると、定数5の日立市(19万9203人)と定数3のつくば市(20万546人)が逆転しているほか、定数2の下館市(6万3480人)や真壁郡(7万5527人)と、定数1の龍ヶ崎市(7万8954人)、牛久市(7万7220人)、定数3の東茨城郡南部(11万3483人)と(定数2の)稲敷郡(12万6760人)などがある。
合併に伴う区割りの見直しは先送りしても、逆転区をどう扱うかが焦点になる。また、選挙の時点で西茨城郡、鹿島郡、行方郡、筑波郡、真壁郡は郡自体が消滅しており、存在しない郡の代表を選ぶことになる。
一票の格差は最も少ない東茨城郡北部(定数1)と龍ヶ崎市(同)が2.89倍、牛久市(同)2.83倍となっており、2倍を超える選挙区が5つある。
選挙区の見直しでは、行方郡(定数2)は避けて通れない。潮来市が誕生(02年4月1日)してから県議選が行われており、特例が切れるためで、行方郡と合区で実施するか、行方郡と潮来市で分割するか、いずれかの結論を出さなければならない。
また、合併に伴う選挙区の矛盾もある。従前の選挙区で行うと、水戸市と合併した旧内原町は東茨城郡南部、常陸大宮市に合流した旧御前山村は東茨城郡北部、取手市と合併した旧藤代町は北相馬郡-など、新しい市の県議を選ぶ選挙から疎外される。04年9月に自民党などの提出議案に対し、民主清新クラブと公明党は共同で対案を出すなど、自民以外からは早急な見直しを求める声が強い。
県議会の定数是正は前回、定数2だった久慈郡を1とし、全体の定数を66から65に1滅しているが、合併後の見直しが必要なため、最小限度にとどめた経緯もある。
県議選の区割りと定数、公明 見直し求める
公明党県本部も昨年12月28日、国勢調査結果に基づき、県議選の区割りと定数見直しを求める声明を発表した。
国勢調査結果で一票の格差が最大で2.89倍と前回調査時の2.80倍よりも拡大しているほか、日立市(定数5)とつくば市(同3)の人口が逆転するなど、「定数の見直しなくして県民の声を等しく県政に反映することはできなくなった」と指摘。
さらに合併で市町村が大きく再編されているため、「合併した市町村の一体的な発展を考えたとき、新たな合併後の市町村の枠組みによる県議会の選挙区見直しが必要」としている。
栃木県議会が昨年の12月定例議会で次の統一地方選から選挙区と定数を抜本的に見直す条例を可決するなど、抜本的な見直しを行わないのは12道県とし、全会派が参加して選挙区割りと定数を話し合う検討機関の設置を求めた。
検討に当たっては①議員定数を削減する②選挙区、定数は合併後の枠組みを基本にする③一票の格差を最大2倍以内にする-を考慮すべきとした。
選挙区抜本的見直しを、国勢調査を受け民主県連が声明
民主党県連(大畠章宏代表)は昨年12月28日、今年の国勢調査結果が明らかになったのを受けて、県議選での一票の格差が拡大したほか、合併で市町村数が44となることを踏まえ、抜本的な区割りの見直しが必要との声明を発表した。県議選は、一昨年から今年3月にかけての合併にかかわらず、従前の選挙区で行うことが既に決まっているが、同党は「住民は合併後の市単位に行うと思っている人が多いのではないか」とし、見直しを求める声が大きくなるよう訴えていくことにしている。
国勢調査の結果、議員一人当たりの人口が最も少ない東茨城郡北部(2万7304人)と龍ヶ崎市(7万8954人)は2.89倍、牛久市(7万7220人)は2.83倍となるなど、格差が拡大。一方で、県内市町村数は3月末までに44市町村に減少、早期に新市町の一体性を確保すべきで、「従前の選挙区のままでは合併の趣旨に反する」と主張している。
常陸大宮市となった旧御前山村の有権者は合併後、2年以上が経過しているにもかかわらず、常陸大宮市選出の候補者に投票することができないなど、次の県議選まで6年以上も民意を明らかにすることができない矛盾もある。さらに、本県の場合、従来の郡を分断する合併も多く、西茨城、鹿島、行方、新治、筑波、真壁郡は郡自体が消滅するため、「従前の選挙区では民意を反映した選挙とは言い難い」と批判している。