茨城県内では、交通空白地域の解消や地域住民の利便性を向上するため、地方公共団体などが運行する「コミュニティーバス」が増加しています。
コミュニティバス(community bus)とは、市・区・町・村などの自治体が住民の移動手段を確保するために運行する路線バスと定義されています。市街地などの交通空白地帯において公共交通サービスを提供するもののほか、市街地内の主要施設や観光拠点等を循環する路線などのさまざまなタイプがあり、従来の乗合バスを補う公共交通サービスとして全国的に急速に導入されています。
実際の運行は、地元のバス会社やテクシー会社が行い、NPO法人などが受託する場合もあります。必要に応じ自治体側が経済的な支援を行うのが一般的です。
コミュニティバスのさきがけは、1980年の東京都武蔵村山市の市内循環バスであるとされます。市が車両を購入し、立川バスに運行を委託しました。これに続いて、1986年に東京都日野市で「ミニバス」がスタート。これは日野市が行政サービスの一環として、市内のバス路線のない地域に小型バスによる路線バスを、京王バスに委託して運行したものです。1995年には、武蔵野市で「ムーバス」が登場しました。この成功は、その後のコミュニティバスの普及に大きな影響を与えました。
茨城県企画部交通対策室は、今年4月、誰でも利用可能なバスを前提に、運行の実態を調査しました。4月1日の時点で県内で運行されていたのは有料が10市町44路線、無料が15市町村71路線。このうち16路線が2004、05年度からの実施されています。また、高齢者や障害者等の移動手段を確保することを目的として、福祉施設や公共施設等を巡廻するバス「福祉バス」が、23市町で運行されています。その他、デマンド型の乗り合いタクシーを東海村が運行しています。
地域の活性化やお年寄りや障害者などの交通弱者への支援にため、今後もその普及が望まれます。
地方公共団体,地元商工会議所等の公的主体や地元住民等が主体となって地域の
交通空白地域・不便地域の解消等,地域住民の利便向上等のために一定地域内を運行
するバス。
(今年度内の運行予定)
・H18年10月から取手市,ひたちなか市,かすみがうら市
・H18年11月から坂東市
・利根町がH18年度内の導入を検討中。
高齢者や障害者等の移動手段を確保することを目的として,福祉施設や公共
施設等を巡廻するバス。
予約制で利用者の希望する場所へ乗合で送迎するもの。一般に登録制や会員制をとる。
東海村が,平成17年2月から試験運行を開始し,平成18年4月から本格実施。
(運行予定)
・石岡市,土浦市が,H18年10月2日から運行予定。
・城里町が,H19年2月頃の導入を検討中。
乗合タクシー…1市で運行。さらに,1市で実証実験中。
乗車定員が10人以下の自動車で,路線と停留所を設けて,路線バスと同様な乗合運行を行うもの。
結城市が,昭和63年6月から,路線バス廃止に伴う代替手段の確保と高齢者福祉輸送を兼ねた乗合タクシーの運行をタクシー事業者に委託して実施。
※ 日立市が,11月まで実証実験中。
県内で運行続々 コミュニティーバス
朝日新聞(リポートいばらき 2006/9/14)
民間の路線バスや鉄道が通っていない「交通空白地域」に住む高齢者ら住民の買い物や通院などの足として、中心市街地と周辺部を結ぶコミュニティーバス。県内でも徐々に運行が広がっており、10月からは新たにひたちなかと取手の2市でスタートする。
県交通対策室は、交通空白地域の解消や地域住民の利便性を向上するため、地方公共団体などが運行するバスをコミュニティーバスとしている。
同室は今年4月、誰でも利用可能なバスを前提に、運行の実態を調査した。4月1日の時点で県内で運行されていたのは有料が10市町44路線、無料が15市町村71路線=表参照。このうち16路線が04、05年度からの実施で、無料バスを「福祉バス」と呼ぶ自治体もあるが、同室は「ここ1、2年でだいぶ運行が増えた印象」と話す。
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コミュニティーバスの運行は、乗客が減り不採算に陥った民間路線バスの廃止に伴い増加している。高齢者や自家用車を持たない住民にとって、路線バスの廃止は、通院や中心市街地への移動手段を断たれることを意味し、路線バスに代わる「住民の足」として、自治体や市民団体などが運営するコミュニティーバスに注目が集まり出した。
今年度は4月に稲敷市と河内町で運行が始まり、10月1日からは、ひたちなかと取手の2市で新たにスタートする。
ひたちなか市の場合も、路線バスの廃止に伴うもので、バスはJR勝田駅を中心に市役所や勝田病院などに停車する「勝田西コース」と、茨城交通那珂湊駅からジョイフル本田ひたちなか店や国営ひたち海浜公園を経由する「那珂湊コース」の2路線。バスは茨城交通に委託して運行しており、来年度からはさらに3路線追加して5路線になる予定だ。
一方、取手市は6路線で、関東鉄道など2社に運行を委託する。購入した6台のうち5台の燃料に、県内のコミュニティーバスでは珍しい環境への負荷が少ないとされる圧縮天然ガス(CNG)を使用する。
市の環境基本計画によるものだが、市内に東日本ガスのガス供給施設があることもCNGバス採用の大きな引き金となった。親しみやすさにも気を配り、デザインはアーティストの日比野克彦さんに依頼した。
2市とも運賃は一律100円。取手市では、1日乗車券(200円)や高齢者や障害者を対象とした3カ月定期券(3千円)も販売するという。
そのほか、かすみがうら市では10月1日からこれまでの旧霞ケ浦町内の路線を再編成し、旧千代田町へも運行を拡大する。坂東市でも「坂東号」が11月1日からの出発を控えている。
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「住民の足」としての役割以外に、中心市街地の活性化を念頭に置いているコミュニティーバスもある。土浦市が、国や県の支援を受けて昨年3月から3路線で運行を始めた「キララちゃん」もその一つ。
市街地とその周辺に200以上ある協賛店で1千円以上の買い物をすれば地域通貨「100キララ」がもらえ、1回乗車できる仕組み。JR土浦駅に買い物に来た主婦関本和子さん(69)は「以前は駐車場代がかかるので不便だったが、バスは安いうえに買い物をしたら帰りは無料なのでよく使います」と話す。
徐々に住民にも浸透し始め、8月末までの利用者は延べ17万3千人となり、7月は前年同月比で利用者が16・5%増えた。