携帯電話機の料金体系が一変し、0円携帯が姿を消すかもしれません。総務省は9月26日、携帯電話会社から支給される販売奨励金を利用して「1円」「0円」などで携帯端末を販売する慣行を見直すように求めました。
なぜ高価な携帯の端末が1円で売れるか
携帯電話の端末は本来何万円もするものです。いくら大量に生産されているからといって1円や何千円という価格で売って採算の取れるものではありません。ではなぜ原価をはるかに割る安い価格で携帯電話の端末が手に入るのか。その仕組みは携帯電話の会社から支払われる「販売奨励金」にあります。携帯会社は現在、端末新規加入1台あたり平均4万円の販売奨励金を販売店に支払っています。ですから販売店は、たとえ端末を0円で売っても販売奨励金でもうけが出る仕組みなのです。さらに販売奨励金の内容もいまでは複雑になっており、「新規契約なら、いくら」「家族利用の割引を契約すれば、いくら」「年間契約をすれば、いくら」というように、付加サービスや割引サービスの契約をつければ追加で支払われるものもあります。電話の契約のとき、さまざまなサービスをすすめられますが、その理由は販売奨励金にあったのです。機種変更の場合、新規加入よりずっと割高になるのも、前の機種の使用期間によって新機種の価格が変わるのも、すべては携帯会社から出る販売奨励金の額が違うからなのです。
不透明な現行の料金体系
では、その販売奨励金はどこから出ているのでしょう。それは、ユーザーの通話料金から出ているのです。
携帯電話の歴史はユーザーを少しでも多く獲得して自社のユーザー比率を高めるシェア獲得競争の歴史でもありました。そのためどんどん新規ユーザーを獲得するため、端末をただで配っても販売会社が儲かるように高額の奨励金を払ってきたのですが、その費用はあとでユーザーが支払う通信料にすべて上乗せされてきたのです。
このため、頻繁に機種を替える人は新しい端末が安く手に入ってお得なのですが、端末を長く使いつづける人は、他人が買い替えた端末の料金まで含む割高な通信料金を払い続けることになります。この不公平を解消するために端末の代金と通話料を区別して利用者に明示する新料金プランを部分導入するようにという要請が総務省から出されたのです。
2008年から端末は高くなる?
この要請は携帯電話・PHS(簡易型携帯電話)5社に対して行われ、2008年度をめどに端末価格と通信料を完全分離した料金制度の導入を始めていく予定です。これにより来年度からは端末価格は5~6万円で、通信料は割安になるような販売も行われるようになるかもしれません。
いままで不透明だった通信料が誰にとっても分かりやすくするというメリットはありますが、端末自体の販売は落ち込むことになるでしょう。また、すでに割安な料金で端末を手に入れているユーザーは、使用期間によって安い通信料に移行できるのかどうかは、まだ不透明です。
携帯電話事業者側でも、奨励金のない販売、回線契約方法を選択肢として用意してきた会社もあります。auは、11月12日より「au買い方セレクト」として、端末は安く購入できて、従来の料金プランを利用できるコースと、端末は高くなるものの安価な料金プランを選択できるようにすると発表しました。auでは、端末は高くなるが安価な料金プランが選べる「シンプルコース」を「販売奨励金と購入価格・料金プランを切り分けた“分離モデル”」としています。