使えなくなった携帯電話や携帯音楽プレーなどを捨ててしまえばただのゴミですが、上手にソサイクルすれば、まさに”宝の山”になります。
小型電子機器門電気機器は、薄型テレビの液晶に使われているインジウムあどの希少金属(レアメタル)が多量に含まれているからです。
その含有率は、天然鉱石よりも高い良質素材であるといわれています。ー方、こうした使用済みの小型電子機器・電気機器の回収のシステムは現在のところ確立されておらず、大きな課題となっています。こうした中、秋田県大館市の産学官協働の機器回収実験が、先駆的な取組みとして注目されています。
金属類 | 主な用途 |
プラチナ、パラジウム | 排気ガスを浄化する自動車触媒、燃料電池 |
セレン | 光電池、複写機の部品 |
テルル | DVDD記録膜 |
インジウム | 透明電極膜(液晶ディスプレイの原料) |
ガリウム | 化合物半導体(携帯電話、コンピューターなど) |
ゲルマニウム | 光ファイバー添加剤 |
ニッケル | ステンレス、二カド電池、磁性材料 |

ところが、製造業者・消費者・小売業者が協力してリサイクルに取り組むことになっている家電リサイクル法の対象4品目(冷蔵・冷凍庫、ブラウン管テレビ、洗濯機、エアコン)やパソコンなどと違って、携帯電話やゲーム機器、音楽プレーヤーなどの小型家電機器は、一般ごみとして扱われ、焼却や埋め立て処分されているのがほとんどです。
こうした中、「レアメタルが凝縮している廃電子部品類を、金属資源回収な状態で保存(Reserve)し、原料として蓄える(Stock)」リサイクルシステムの確立を提唱しているのが、東北大学多元物質科学研究所の中村崇教授です。中村教授は、このシステムを「人工鉱床」と名付け、RtoS研究会を設立。RtoS研究会は2006年12月から、秋田県や大館市、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、DOWAエコシステム株式会社などと協働し、大館市内で「使用済み小型電子・電気機器の回収実験」を着手しました。
大館市には、家電リサイクル工場や最終処分場があるほか、隣接する小坂町には小坂製錬株式会社があり、そこには廃電子部品などからレアメタルなど非鉄金属を取り出し、廃棄物を安全に処理する環境が整っています。
市民の参加を促し約7トンの小型家電機器を集める
06年12月15日から07年4月30日まで行った回収実験では、大館市内の公共施設、地元スーパー「いとく」全店など22カ所に回収ボックスが設置しました。この実験に市民が気軽に参加できるよう、市は廃小型家電機器に「こでん」の愛称を付け、回収品目リストを作り市広報で全世帯を対象に配布。集めるものは『15センチ×25センチの回収ボックスの入り口に入る電池や電気を使うもの』と市民に分かりやすくアピールしました。
この結果、約3カ月の間に61品目、4642個、重量にして約7トンの「こでん」が集まりました。
これは「ごみ」として最終処分場に埋め立てられる分が削減されたに等しく、大館市環境課の成田政則課長補佐は「最終処分場の延命やごみ処理コスト削減にもつながり、歓迎している」と話しています。
エリアを広げ事業化の基礎調査
この回収実験は、08年度には、県がリサイクル産業の集積に取り組んでいる「北部エコタウン」地域(大館、鹿角、北秋田、能代の4市、小坂、藤里、八峰、三種の4町、上小阿仁村)と男鹿市の5市4町1村にエリアを広げて継続されます。
回収したものは、製品の種類や製造年代別にレアメタルの種類や量を分析し、今後の事業化に向けて基礎調査を行う計画です。
県産業経済労働部資源エネルギー課の工藤力副主幹は「小型家電機器一つ一つに含まれるレアメタルはごくわずか。量を確保するためにも将来は県内全域を対象に回収できれば」と語っています。原材料のほとんどを海外に依存しているレアメタル。国内の先端産業空又える〝ビタミン剤″である希少な資源を、安定的に供給するためにも、産官学、そして市民が力を合わせて、新しいリサイクルシステムを構築することが待たれている。
※レアメタル
埋蔵責が非常に少ない上、存在している地域が大きく偏っている金属。鉱石からの抽出が経済的・物理的に困難なニッケル、タングステンなど31種類の金属(元素)群の総称。
参考:レアメタルの現状と未来について