6月30日、社会保険庁を解体した後を引き継ぐ日本年金機構のあり方を検討する政府の有識者会議は、その基本方針をまとめました。
基本方針では、日本年金機構の正規職員の数は、2010年1月の発足時点で今の1万3000人余りから2割近く減らし、1万880人とし、このうち1000人程度は新たに外部から採用することが適当だとしています。うち社保庁からの移行者が9880人となります。
また、他人の年金記録ののぞき見などで懲戒処分を受けた職員、876人に対しては、正規職員には採用しない方針です。ただし、厳正な審査の上で1年契約の有期雇用職員として採用することはできるとしています。政府は、この方針に沿った基本計画を策定し、早ければ来月4日にも閣議決定します。
社会保険庁の杜撰な仕事によって、多くの年金受給者が被害を被ったと言っても過言ではありません。職員のデタラメな仕事ぶりが国民の信頼を損ない、社保庁解体を招いたことを考えれば、当然の措置です。
しかし、処分歴があっても、専門知識を持つ成績優秀者は例外的に正規職員にするとされています。厚労省は「第三者機関が個別に面接し、厳正に審査する」と説明しています。しかし、その採用基準は「新組織の構成及び運営上不可欠な人材」とされただけで、具体的基準は明らかにされていません。
そもそも、職員の再雇用数は1万3000人から9900人に減となるわけですが、新たに採用される外部職員は1000名で、全体の1割以下です。これでは、新鮮な体制での再出発が果たして可能なのでしょうか?
さらに、問題があって正職員に採用されなくても、3年ごとに契約を見直す有期雇用職員としては採用されることになっています。有期雇用職員は、働きぶりによって正規職員に切り替えることもできるとしています。有期雇用職員の労働条件や待遇は正規と全く同じです。さらに、退職金まで正規と同じく社保庁在職期間を通算して機構が一括して支払う形になります。
ここまで来ると、旧社会保険庁職員は、希望すればほとんど同じ条件で年金機構に再就職できると言うことではないでしょうか。
年金機構が、単に社保庁からの看板の掛け替えで終わっては、年金への国民の信頼は取り戻せません。