地球温暖化という人類的課題に対して、北海道洞爺湖サミットで先進8か国(G8)は、低炭素社会への第一歩を踏み出しといえましょう。
公明党の太田昭宏代表も9日、「G8それぞれが温室効果ガス削減の中期的な総量目標を決めて前進しようとしたことは大きな成果」と述べ、サミットでの合意を高く評価しました。
G8は、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの世界全体の排出量を半減させる目標を、先進工業国だけで負うのではなく、中国やインドなど新興経済大国を含む世界全体で「共有」し、国連気候変動枠組み条約(気候変動条約)の締約国会議で採択するよう求めることで合意しました。議長を務めた福田康夫首相の「低炭素社会へカジを切れるか」との呼び掛けに各国が応じた結果です。
これを受け、サミット最終日に開催された主要排出国会議(G8を含む全16カ国)も、この目標を世界全体の長期目標として気候変動条約の下での交渉を通して採択することが「望ましい」と明言しました。
中期的には先進諸国は国別総量目標を実施、一方の新興国は国ごとの適切な排出削減を実施することで合意がまとまりました。
2050年までの半減をG8の義務にできず、中期目標についても数値目標が出せなかったことなど課題は、多く残されています。しかし、昨年(2007年)のサミットでは半減目標は「真剣に検討する」止まりだったことを考えると、G8が目標を「共有」するとの合意ができた意義は大きく評価すべきです。
さらに、世界全体の排出量のほぼ半分を出している新興国・開発途上国も参加する国連での交渉によって、半減目標を採択する道が開かれたことも注目に値します。
また、中期目標について、国別で排出総量の目標を設定する合意ができ、日本が提唱している、産業別に削減量を積み上げるセクター別アプローチについても「有益な手法」と認められました。
こうした成果が首脳宣言に盛り込まれたのは、今回のサミット議長国を務めた日本政府の努力の結果であり、また、半減目標に一貫して消極的だった米国の合意を得るため、サミット2日目の首脳会合直前までギリギリの努力を続けた福田首相のリーダーシップに負うところも大きいと思います。最終日の記者発表での疲労困憊の様子は、各国との厳しい交渉を物語っていました。
次に日本が行うべき行動は明確です。公明党が先に提案したように、2025年までの野心的な中期目標を国内で取りまとめることです。そのためには、新たな基本法の制定も不可欠になります。
そして、日本の積極的な行動でアメリカを議論の中心に呼び込み、新興国にも半減目標を明確にすることを促すことが必要でしょう。私たちに残された時間には限りがあることを、重く認識し行動すべきです。
(公明党の「北海道洞爺湖サミットに向けた地球温暖化対策に関する提言」より)
北海道洞爺湖サミット議長総括
2008年7月9日
(仮訳)
Ⅱ.環境・気候変動我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。その際、我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力という原則に沿って、世界全体での対応、特にすべての主要経済国の貢献によってのみこの世界的な課題に対応できることを認識する。このような長期目標に向けた実質的な進展は、既存技術の展開の加速を必要とし、低炭素技術の開発と展開に依っている。
我々は、先進主要経済国が行うことと途上主要経済国が行うことは異なることを認識する。この点、我々は自らの指導的役割を認識し、我々各国が、各国の事情の違いを考慮に入れ、すべての先進国間における比較可能な努力を反映しつつ、排出量の絶対的削減を達成するため、また可能な場合には、まず可能な限り早く排出量の増加を停止するために、野心的な中期の国別総量目標を実施する。我々はまた、技術、資金及びキャパシティ・ビルディングにより、途上主要経済国の緩和の計画を支援することもできる。同時に、実効的かつ野心的な2013年以降の世界的な気候に関する枠組を確保するためには、2009年末までに交渉される国際合意において拘束される形で、すべての主要経済国が意味ある緩和の行動をコミットすることが必要である。セクター別アプローチは、各国の排出削減目標を達成する上で、とりわけ有益な手法である。
我々はまた、エネルギー効率の向上、クリーン・エネルギーの利用の拡大、適応、技術、資金供与、市場を基礎とするメカニズム及び関税削減といった、様々な問題について議論した。エネルギー効率については、我々は、エネルギー効率に関する協力のための国際パートナーシップ(IPEEC)を設立するという最近の決定を歓迎した。再生可能エネルギーについては、我々は、科学に基づく基準と指標を含む、持続可能なバイオ燃料の生産と使用の重要性を強調した。我々は、第二世代のバイオ燃料の研究開発の継続にコミットしている。原子力については、我々は、気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組むための手段として、原子力計画への関心を示す国が増大していることを目の当たりにした。日本は、3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブを開始することを提案した。適応については、我々は、開発途上国による気候変動への適応努力につき、開発途上国との協力を、援助規模の拡大を含め、継続し強化することで合意した。技術については、我々は革新的技術のためのロードマップを策定するための、国際的イニシアティブの立ち上げに合意した。我々は、研究開発の重要性を強調し、研究開発における投資を増大させることをコミットした。G8メンバーはこれまで、今後数年間にわたり毎年100億米ドル超を拠出することをプレッジしてきている。資金供与については、我々は、クリーン・テクノロジー基金(CTF)や戦略気候基金(SCF)を含む気候投資基金の創設を歓迎し支持した。G8メンバーは、これまで約60億米ドルをODAとしてこれらの基金に拠出することをプレッジしており、他のドナーからのコミットメントを歓迎する。国内及び国家間の排出量取引、税制上のインセンティブ、パフォーマンスに基づいた規制、料金あるいは税金、及び消費者ラベル等の市場メカニズムについては、我々は、これらが費用対効果の高い方法で排出量削減を実現することに役立つことを認識した。我々は、WTO交渉における環境関連物品及びサービスに対する関税及び非関税障壁を撤廃するための努力が強化されるべきこと、またこれらの物品及びサービスに対する自主的な貿易障壁の削減又は撤廃について考慮されるべきことを強調した。我々は、国際開発金融機関による、クリーン・エネルギー投資枠組(CEIF)に関する大きな進展に留意し、公的な及び民間の投資を1000億米ドル以上の水準とするというこれら金融機関による共同の野心的目標を歓迎した。
我々はまた、森林、生物多様性、3R及び持続可能な開発のための教育(ESD)といった環境問題に取り組むことの重要性を認識した。
我々は、他の主要経済国の首脳と会談し、主要経済国首脳会合のUNFCCCへの積極的な貢献を支持した。