民主党は、すべての販売農家を対象に、販売価格が生産費を下回った場合、差額を税金で埋め合わせる「農業者戸別所得補償制度」を主張しています。この法案は、昨年(2007年)5月、参議院に提出され、衆参両院で十分な審議を尽くした後、今年5月に衆院で否決されました。
一度明確に否決されて法案を、次期総選挙の重点政策に掲げる民主党の姿は、見苦しいものがあります。
改めて、民主党の戸別所得補償制度について、4つの視点からその問題点を整理してみたいと思います。
財源を明示できない「まやかしの政策」
国会審議で民主党は、「対象農産物の範囲」「生産数量の目標設定」「支援単価の水準」など戸別所得補償制度の骨格部分について、何一つ具体的に説明できませんでした。だからこそ、廃案になったのです。
民主党は戸別所得補償に必要な財源を1兆円程度と説明しましたが、その積算根拠すらあいまいです。市場価格が下がれば、投入するお金も増えますから、1兆円をはるかに超える恐れもあります。財源を明確に示せないようでは、「まやかしの政策」と言わざるを得ません。
民主党は戸別所得補償に必要な財源を1兆円程度と説明しましたが、その積算根拠すらあいまいです。市場価格が下がれば、投入するお金も増えますから、1兆円をはるかに超える恐れもあります。財源を明確に示せないようでは、「まやかしの政策」と言わざるを得ません。
「理念なきバラマキ農政」で農業を衰退させる
民主党の戸別所得補償制度の最大の問題は、「理念なきバラマキ」であることです。
今、農家の抱える問題は「高齢化」「後継者難」であり、耕作を放棄した農地が増加の一途をたどっていることです。所得補償でお金をばらまいても、国内農業が直面する厳しい状況が固定化するだけで、解決しません。「担い手の育成」「農地の集積」など農業の将来につながる理念や展望が、民主党の政策には全くないのです。戸別農家の補助金依存を促し、農業を衰過させる危険性の方が大きいのです。消費者との信頼関係においても、多くの国民から理解を得がたいでしょう。
今、農家の抱える問題は「高齢化」「後継者難」であり、耕作を放棄した農地が増加の一途をたどっていることです。所得補償でお金をばらまいても、国内農業が直面する厳しい状況が固定化するだけで、解決しません。「担い手の育成」「農地の集積」など農業の将来につながる理念や展望が、民主党の政策には全くないのです。戸別農家の補助金依存を促し、農業を衰過させる危険性の方が大きいのです。消費者との信頼関係においても、多くの国民から理解を得がたいでしょう。
「国」による農業統制を推し進める
昨年の参院選で民主党は、戸別所得補償制度と合わせて「米の生産調整を廃止する」と明言しました。生産調整をやめれば米の価格は暴落し、生産費との穴埋めに必要な補償額も増加します。こうした矛盾を指摘されると「生産数量目標を設定し、その日標に従った販売農家を対象に交付金を出す」と言い出しました。米・麦・大豆、牛肉など主要農産物の生産数量目標は最終的に国が決めるようです。仮に生産目標以上に営農を拡大しようとする農家は、どうなるのでしょうか。「お上」による農業統制の下で、農家は生産意欲をなくし、地域農業の主体性や個性も失われていきます。
結果的に小規模農家を切り捨て
衆議院の農林水産委員会で民主党議員は、「5年後には小さな農家はなるべく辞めていただく。そして8年後には、50アール未満はもう直接支払いしない。そして大きな農家にだけする」と答弁しています。民主党の戸別所得補償制度が導入されると、結果的に小規模農家は切り捨てられ、農業を続けられなくなってしまいます。
戸別所得補償制度は税金を使った農業衰退策である。
零細農家の農業収入は年収で100万円以下である。
一方、大規模農家の年収は1千万円を超えている。
農業の構造改革により、農業の大規模化を計り、ほとんどの農家が年収1千万円を超えるようにすることが望ましい。
農業の生産額約5兆円に対比してみれば、農業就業人口は約300万人はあまりにも多すぎる。高齢化で農業従事者が減ることは望ましいことである。大切なのは、耕作放棄地とならないようにする制度を作り、農業の大規模化を進めることである。