千葉県不正経理:公金感覚マヒ、県庁96%で 知事「慣例化していた」
読売新聞(2009/9/10)
私的流用が疑われる使途不明金約1億1000万円を含め、7億円の血税が乱費されていた--。森田健作知事らが9日会見し、県庁の不正経理の全容を公表した。知事部局や教育庁、県警本部を含む県庁の全401部署のうち、全体の96%で不正経理が確認された。公金という感覚の欠如は県庁全体に及んでいた。
■幹部は沈黙
重苦しい記者会見の終盤に、記者からこんな質問が出た。「この中で不正を見聞きした方はいませんか」。森田知事や居並ぶ県幹部は一瞬、静まり返った。
会見冒頭、森田知事は険しい表情で「不祥事について現知事として心からおわび致します。すみませんでした」と深々頭を下げた。
「何に使ったか分からないでは県民に示しがつかない。おまえたち何やっているんだ、とどなられても仕方がない」と声を荒らげる場面も。不正経理については「毅然(きぜん)として対処していく。生まれ変わったつもりで県民から信頼される県庁を一丸となって作っていかなくてはならない」。最後に「私たちは一丸となって頑張ります。本当に本当に申し訳ありませんでした」と述べ、改めて謝罪した。
■返還要求へ
不正な「預け」の手口で02年度以前から業者にプールされてきた県費は、現時点で4億1800万円に上る。県は今後早急に返還を求めていく。しかし、廃業している業者もあり、返還に応じないケースも想定されるため、県は回収できなかったプール金は関係職員に返還を求めることにしている。
職員による返還額は県の推計で約7億円にも上る。返還率は外部委員会で定められ、私的流用の可能性が高い商品券やお茶やコーヒーなどの職場での飲食費、職場の冷蔵庫やポット、テレビやAV機器などは全額返還を求める。
また、紙や文房具などの消耗品、業務用パソコンやデジカメなどは、10%の返還にとどめる。返還を求められるのは、03~07年度に管理職の立場にあった職員約3400人とOB約2000人の計5400人。当時の職責に応じて、額は試算する。
森田知事は、今年4月に就任しており、今回明らかになった不正経理は堂本暁子前知事の下で行われていたことになる。森田知事は、「就任前の話。私の責任はこういう不正を起こさないことだと思う」と語り、自身が返還に加わることは否定した。県は、堂本前知事にも協力を依頼し、一部の返金を求める考え。
■背景と原因
組織的な不正経理が起きたのはどうしてなのか。歯切れのよい「理由」はなく、森田知事も「私の推測だが、ちょっと慣例化していたと思う」と述べるにとどまった。
慣例化していたことについて、真田範行・経理問題特別調査外部審査委員会会長は「経理をやっている経験者は、預けというものがあることは知っていたのではないか」と指摘した。
調査結果の報告書は、原因について、長年の慣習や前例踏襲▽発注と商品を確認する検品を同じ職員が行っていた▽予算枠を使い切らないと翌年に影響する--などを挙げた。納品を受ける時には納品書の添付を求めておらず、県側はずさんなチェック体制が「不正の温床になった」とも答えた。
■再発防止策
組織的な不正に記者からは「やめようと言う人は誰もいなかったのか」など厳しい質問が飛んだ。小宮大一郎総務部長は「(そういう人がいたとは)聞いていません」と答え、自浄作用が働かなかった理由については「長年の慣行があって」と繰り返した。
今後の再発防止策として県は、11月に総務部内に特別監察組織を立ち上げることを決めた。再発防止策の検証▽毎年度、抜き打ちで特別監察を随時実施▽不正経理が発覚した場合にさかのぼって徹底--することを定め、特別監察の結果は森田知事に報告する。
◇164部署で確認
県は業者へのプール金額約4億1800万円の内訳を、部局別に公表した。401部署中164部署でプール金の存在を確認。国庫補助事業を抱える2部署でプール額は突出して高く、農林水産部で1億189万円、県土整備部では2億3016万円に上った。
県によると、国からの補助金が余った場合、煩雑な返還の事務手続きが必要で、翌年度の補助金額が減らされる。県幹部は、「帳簿上、使い切ることが必要だったのではないか」と話している。
■部局別の「プール」額■
部局名 金額(千円) 部署数 業者数
総合企画部 6931 6 7
総務部 15272 20 10
健康福祉部 22726 21 12
環境生活部 8266 7 11
商工労働部 10354 10 12
農林水産部 101898 32 20
県土整備部 230164 36 23
教育庁 13331 15 9
その他行政委員会等 3871 4 5
水道局 3 1 2
企業庁 1186 8 6
病院局 3539 3 2
警察本部 46 1 1
合計 417587 164
※業者数の合計は、重複を除くと計39社

記者会見の内容によると、千葉県が調査の対象としたのは、5年間の消耗品の購入費あわせて64億円余りで、不正な経理処理が行われた額はその半分近くに達していました。このうち金券を購入して業務に使ったか確認できないものや、実際に何に使ったのか特定できていないものなど、私的に流用された可能性があるのは1億1000万円余りに上っています。このほか、「将棋盤」や「卓球台」など、業務と関係のない品物の購入にも540万円余りが使われていました。また、物品を購入したように装って代金を業者の口座にプールさせていたのはおよそ4億1800万円に上り、その一部は業者の破産などで回収できなくなっているということです。
千葉県は、回収できなくなっているものや流用された可能性のあるものなど、あわせて7億円を県への損害として、職員に返還を求める方針です。森田知事は、会見で「県民の皆様に今回の職員の不祥事に対し、心からおわびします。けさの部課長会議では『きょうからもう一度、生まれ変わったつもりで公務員の原点を再認識し、県民から信頼される県庁にならなければならない』と指示しました。県民の皆さん、職員一丸となって頑張ります。ほんとうに申し訳ありませんでした」と謝罪しました。
千葉県では昨年から会計検査院による検査が行われ、その会計検査院の検査と連携して全庁調査(平成15年度~18年度分)を外部審査機関を交えて実施しました。県予算の需用費(主に消耗品費)を県の支出書類の書面上のチェックだけでなく、物品等の納入業者から帳簿(納品書)を取り寄せて、県の支出伝票と一つ一つ付き合わせた結果、約30億円の不正経理処理がなされていた明らかとなったものです。
千葉県は、この不正経理問題の「調査報告書」を公表しました。井手よしひろ県議は、PDFファイルに加工したものを入手しましたので、サイズは約5MBと重いですが、ご活用下さい。
なお、9月10日、井手県議は県の行政監査室より茨城県の対応について、聴き取り調査を行いました。
参考:千葉県不正経理調査報告書(pdfファイル容量5MB:右クリックからファイルの保存を選択してください。)