鳩山首相団体報告書 個人献金者8割削除 「寄付は事実」証言も
北海道新聞(2009/10/1)
鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に故人や実際には寄付(献金)していない人の名前が虚偽記載された問題で、総務省が30日公表した2008年分の収支報告書では、個人寄付者69人のうち、8割に及ぶ55人分が削除されていた。北海道新聞の取材によると、55人のうち少なくとも2人が08年分も寄付したと話しており、今年6月末に鳩山事務所が修正した報告書の記載にも誤りがある可能性が出てきた。
修正後の報告書で、08年に4万8千円を寄付した記載が削除された道内の男性は「献金したのは事実」と証言。東京都内の男性も3万6千円を寄付した記載が削除されているが、「出したと思う。秘書と知り合いで、献金してきた」と話した。
一方、寄付の事実がないのに寄付したことにされた例のうち、神奈川県内の女性は修正前、5万円を寄付したと記載されていた。女性は以前、友人に頼まれて鳩山氏の後援会に名前だけ貸した記憶があるといい、「そのときの名前を勝手に使われたのだろうか。でたらめだ」と憤った。
以前寄付したものの、08年は寄付していないのに名前が記載されていた例も2件あり、金額はいずれも数万円。故人が記載された例も1件あり、いずれも修正後は削除された。
この問題について、鳩山事務所は「必要なときは(報道)各社統一で回答いたします」と文書で回答した。
友愛政経懇話会の05~08年分の収支報告書によると、削除された延べ人数は193人で、総額2178万円に上る。減額分は首相個人からの借入金として同額を計上した。

それによると、鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」08年分収支報告書で、個人献金者として記載された69人のうち、55人(計406万6000円)を実際に寄付はなかったとして削除していたことが判明しました。残ったのは鳩山氏や親族らわずか14人だ。鳩山首相は08年までの4年間に延べ193人分の虚偽記載を認めているが、今回の発表により08年の偽装が最大であることが分かりました。
さらに、名前を出す必要がない5万円以下の「匿名献金」は個人献金の6割超を占め、2668万8500円と「閣僚内で突出」しています。これにより、03年~08年の6年間に集めた匿名献金は計約2億5000万円以上、「年平均は約4200万円で、1人5万円を献金した場合で算出しても延べ5140人が献金した形」となり、不可解さは否めません。
また、読売新聞の報道によると、虚偽の個人献金者(削除された寄付者)に対して発行した所得税の控除証明書を、友愛政経懇話会は返却していないことも明らかになりました。政治資金団体に献金をしたものは寄付金控除を受けられ、その証明書が不正に使われているとすると、悪質な脱税事犯にも発展します。
さら、朝日新聞は鳩山首相の関連政治団体が首相の母親所有のビル(室蘭市東町2-3-3:セントラルフォーラムYHY)を、相場の5分の1の賃料で借りていたと報道。少なくとも年間約600万円に上る相場との差額分は、寄付として08年分報告書に記載する必要がありますが、未記載だったと指摘しています。今後、新たな火種になりそうです。
「不適切」証明書、首相側返還せず…虚偽記載問題
読売新聞(2009/10/1)
政治資金収支報告書の虚偽記載が発覚した鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」が、虚偽の個人寄付者について所得税控除のための証明を受けていた問題で、同団体が総務省の指導に従わず、不適切に取得した証明書を返還していないことが30日、わかった。
同省によると、同団体はすでに判明している2005~07年分だけで延べ113人分の証明を受け、少なくとも延べ66人分については不適切な申請としている。同省は、鳩山首相側が収支報告書を訂正した6月30日、05~08年の4年間に取得した虚偽の申請分について、証明書を返還するよう指導していた。
読売新聞の取材に対し、鳩山事務所から回答はなかった。
鳩山首相関連団体、ビル格安入居 母親所有、月10万円
朝日新聞(2009/10/1)
鳩山由紀夫首相の関連政治団体が、首相の母の鳩山安子さん(87)が所有する北海道室蘭市内のビル1棟を、相場の5分の1以下となる月10万円の賃料で借りていたことが分かった。朝日新聞の取材では、相場との差額は少なくとも年間約600万円に上る。差額は寄付として政治資金収支報告書に記載する必要があるが、同団体は9月30日までに公表された08年分の報告書に記載していない。
ビルは、首相の政策秘書が代表を務める政治団体「北海道友愛政経懇話会」が賃借している。08年までの3年間で安子さんから同会への寄付はないが、一つの政治団体に対する個人献金は年間150万円に限られており、差額の賃料はこの制限を超える。首相の政治活動を支援する母の政治献金の処理をめぐり、今後、波紋が広がりそうだ。
朝日新聞の取材に、北海道友愛政経懇話会の会計責任者は「ビルや敷地全体をうちが使っており、賃料は月10万円を払っている。入居している政治団体は他にもあるが家賃を負担していない」としている。鳩山事務所は文書で「室蘭市の事務所については、すべて政治資金規正法にのっとった収支報告書の通りです。家賃は適正な価格と認識しており、ご指摘にはあたらないと考えます」と回答した。
問題のビルは、94年に室蘭市内に新築された鉄筋コンクリート3階建て。20台分の駐車スペースを含む約1500平方メートルの土地に立ち、延べ床面積は計約880平方メートル。この土地、建物とも安子さん個人の所有となっている。
このビルを借りている同懇話会では、会計責任者の私設秘書と職員2人が常勤。首相の地元選挙区における活動拠点となっている。首相が代表を務める政党支部「民主党北海道第9区総支部」もビル内に机があるが、拠点の事務所は苫小牧市にある。
同懇話会によると、このビルの賃料は月10万円。だが、室蘭市内の四つの不動産業者によると、付近の貸事務所の賃料相場は坪約2千~5千円になるという。坪約2千円の試算では、ビルと駐車場を合わせて月約60万円、年間約720万円になり、実際の賃料との差額は約600万円に上った。
政治資金規正法では、賃借料と相場価格との差は、「財産上の利益」を受けたとして寄付扱いになり、収支報告書への記載が定められている。
一方、安子さんは、同懇話会以外の首相の資金管理団体など複数の団体に個人献金しており、08、07年は少なくともそれぞれに150万円、06年は計300万円。
総務省政治資金課は「事務所の賃料が社会通念に照らし相場より安ければ、差額分を貸主からの寄付相当分として、収支報告書に記載する必要がある」としている。
政治資金規正法に詳しい日本大学の岩井奉信教授(政治学)は、「母親からとはいえ周辺相場と比べて妥当な額を払うべきだ。不当に安ければ寄付とみなされる。なぜ安く済むのか、首相には説明責任がある」と話している。