4月4日、井手よしひろ県議は龍ヶ崎市内で県議会報告を行いました。その内容は茨城県の地域防災計画の見直しと年金改革の方向性の2つの話題でした。
議会報告の後の質疑応答で、年金問題に関する二つの質問が寄せられました。当日は、時間も限られ、資料も不足していましたので、改めてこのブログ上で質問への回答を掲載したいと思います。
AIJの詐欺的行為と公的年金の安定性は別問題
Q:先日のNHK番組「週刊・ニュース深読み」で、AIJ投資顧問による年金資産消失問題が、公的年金にも大きな影響を与えると放送していました。AIJ問題で厚生年金に加入するサラリーマン全員が、影響を受けるのですか?
A:AIJによる詐欺まがいの悪質な行為と、公的年金制度の安定性の問題は別問題であることを確認しなくてはなりません。
AIJの問題は、いわゆる1階(基礎年金)、2階(厚生年金)部分の公的年金の話ではなく、それぞれの企業が独自に行っている3階部分の年金の話です。初めから3階部分の企業年金に加入していない人は、将来受け取る給付額への影響はありません。
厚生年金の本体にも影響が出て来るような報道がありますが、少し意味合いが違います。
全国には現在、595の厚生年金基金があります。厚生年金基金では厚生年金保険料の一部を預かって、私的年金の部分と一緒に運用しています。これを「代行」といいます。運用がうまくいかずに基金の資産が減り、厚生年金の支払い部分も賄えない「代行割れ」をしている基金が213あることは事実です。
厚生労働省によると代行割れしている総額は6300億円で、最優先で返済するよう各企業に義務付けられています。これまでのところ、返済不可能になって公的年金に穴が開いた事例はありません。2008年度末に478あった代行割れ基金は、213と減っています。各基金とも頑張って返済しているのが実情です。
AIJ問題では、74の厚生年金基金が運用を委託し、公的年金の資産に1000億円もの穴が開いたとされています。この穴埋めは、3階部分を作った企業の責任で行わなければなりません。本質的には、その後はAIJと各基金との問題です。極端な言い方ですが、委託していた基金は高利回りを期待して、AIJの甘い誘い文句に乗ってしまった側面も否定できません。穴埋め分に公的な資金を投入するかしないかの議論は、まだ全く行われていません。民間企業や団体の年金資金に、公的な資金を注入することには、高い敷居があります。
公的年金の積立金も安定
Q:2006年に150兆円あった公的年金の積立金が、現在は110兆円まで減っているとの報道がありますが本当ですか?もし本当なら、公明党が自公政権当時に行った100年安心の年金改革は、破綻してしまうのではないでしょうか?
A:年金給付に積立金を充てて財政運営をしていくと2004年に決めたことから現在、121.9兆円まで、基金は取り崩されています。しかし、これとは別に27兆円が厚生年金基金の積立金が存在しています。一部報道や学者が、「この27兆円が返ってこない」と強調していますが、明かな間違いです。
27兆円のうち10兆円は企業年金連合会が保有し、これは確実に返ってきます。残り約17.6兆円を595の基金が持っています。このうち代行部分が14.8兆円で、これまで順調に返済されてきました。
2008年のリーマン・ショック以降、景気低迷が続いています。デフレ(物価の継続的な下落)で経済成長率も非常に低い中で利回りも良くない。年金制度にとっては極めて厳しい経済環境ですが、景気を好転させることができれば年金財政をもっと安定させることができます。
いたずらに年金の破綻論を叫ぶ、マスコミや年金学者の意図がどこにあるのか分かりませんが、年金が安定して運用されていることは否定できない事実です。こうした不信を煽ぐ結果、基礎年金の支払いに躊躇する若者がでる事の問題の方が、私は深刻であると思っています。