▽防災行政無線の早急な整備
▽報道番組の字幕、手話充実
▽自治体データのクラウド化
▽携帯電話など研究開発促進
6月6日、公明党のIT技術活用検討プロジェクトチーム(PT)は、内閣府で古川元久国家戦略担当相に対して、防災・減災対策を柱とする「生命と生活を守るICT(情報通信技術)利活用の推進に向けた緊急提言」を申し入れしました。
古屋範子座長(衆院議員)、木庭健太郎参院幹事長、佐藤茂樹衆院議員、渡辺孝男参院議員の各顧問、稲津久副座長(衆院議員)らが参加しました。
席上、古屋座長は「東日本大震災では、固定・移動電話など、さまざまな情報通信手段に甚大な被害が出た」とする一方、情報通信で「ラジオやソーシャルネットワーク(インターネットを活用したコミュニケーション)が効果を発揮した」と指摘しました。
その上で「情報は命を守ることに直結している」として、公明党が提唱している「防災・減災ニューディール」に言及。「その大きな柱として情報通信の強化をどう打ち出すかが重要な課題。そこに重点投資をすれば、内需も喚起できるし、経済成長に資することもできる」と訴えました。
また、震災で医療データが失われた事態に触れ、災害に強いシステムを築く必要性を強調しました。
提言では、災害時の避難、津波情報を確実に伝えるため、全国的な防災行政無線の整備と消防救急無線の高度化を急ぐよう要望。公共機関が独自に保有する震災関連情報について、地方自治体が効果的に連携させるためのルールを築くとともに、災害弱者に十分な情報が伝わるよう、報道番組での字幕付与や手話放送の充実を進める重要性を指摘しました。
さらに、災害に備え、自治体データのクラウド化(遠隔地で行うデータ管理)や、データセンターの広域分散の推進、携帯電話などの研究開発の加速化などを要請しました。
このほか、(1)高齢者見守りシステムなど介護分野でのICT活用(2)ICTによる高齢者や障がい者の就労支援(3)2020年度までに全小中学で1人1台の情報端末とデジタル教科書などを用いた授業の開始(4)特別支援教育でのICT普及の重点的な取り組み―などを求めました。
古川担当相は政府がまとめる「日本再生戦略」でICT活用が柱になるとした上で「提案の実現に努力していく」と答えました。
国家戦略担当大臣 古川 元久 殿
公明党IT技術活用検討プロジェクトチーム
座 長 古屋 範子
事務局長 山本 博司
情報通信メディアは、国民の生活や経済に欠くことのできないものとなっており、東日本大震災を契機にその重要性が改めて認識されている。
東日本大震災では甚大な被害が発生し、固定・移動通信網、防災行政無線等も広域にわたり損壊した。このため、情報が伝わらず、応急復旧にとって大きな障害となった。また、戸籍簿やカルテなど貴重な情報が失われ、被災者への支援活動にも大きな支障をもたらした。
一方、衛星携帯電話やコミュニティFM、AMラジオ等が被災者の生活を支え、新しいメディアであるインターネットのポータルサイトや、フェイスブック、twitter、mixi等のソーシャル・ネットワーク・サービスが、救命、被災者支援に力を発揮した。また、電子化・システム化されていた住民関連データ等は、データの迅速な復元により支援活動に活用できた。
情報通信メディアは、災害発生時に生命と生活を守る重要なライフライン(命綱)である。自然災害と常に隣り合わせにあるわが国においては、東日本大震災の経験を活かし、震災に強い情報通信インフラの整備と災害対応の情報通信システムの充実が急務である。特に、障がい者、高齢者をはじめとする情報弱者が災害情報に確実に触れることができるよう体制を整備しなければならない。
さらに、命を守り、女性や子ども、高齢者や障がい者が安心できる社会に向けて、医療政策・介護政策の充実を図ることは、国の最重要の責務である。限られた資源を有効に活用し充実した医療・介護サービスの提供を実現するための鍵は、ICTの利活用である。遠隔医療、医療情報連携、在宅介護支援、高齢者見守りなど医療・福祉分野においてICTの利活用をさらに推進しなければならない。
また、子どもと若者を育成し、国力の発展を担う「人材」を育てることは、わが国の未来の礎をつくる大事な仕事である。未来の人材への投資として、質の高い活力のある教育を実現するため、教育分野におけるICTの利活用も推進すべき課題である。
公明党は、国民の生命と生活を守る「防災・減災ニューディール」を掲げ、インフラの再構築を推進している。その重要な分野として、情報通信技術の徹底利活用が求められており、全国レベルで大胆、集中的かつ計画的な投資を行うべきである。こうした投資は新たな需要を喚起し、わが国の経済成長にも資するものであり、官民を挙げた積極的な取り組みを強力に進める必要がある。
このような状況を踏まえ、当プロジェクトチームは別紙の通り、「生命と生活を守るICT利活用の推進に向けた緊急提言」の取りまとめを行った。平成25年度の概算要求をはじめ、今後その具体化を強く求めるものである。
1.防災・減災対策としての情報通信基盤の整備
① 防災・減災のための多様な情報流通環境の整備
- 避難・津波情報を確実に伝えるため、全国的な防災行政無線等の早急な整備を進めるとともに、消防救急無線の高度化を加速する。
- 安心・安全のため「公共情報コモンズ」(効率的かつもれなく住民に避難情報等を届けるため、自治体が発信する災害情報を集約し、放送事業者等に一括して提供する情報連携システム)が実用化されており、速やかにその普及を図る。
- 地方自治体は様々な事態を想定した避難計画等を策定すべきであり、ハザードマップや地盤情報など、様々な公共機関が独自に保有する震災関連情報を効果的に連携させるための情報利活用ルールや災害対応支援システムの構築を進める。
- 災害時の膨大な被災者支援業務を圧縮・効率化するため、被災者支援システムを全国展開する。
- 災害時には学校の教室や体育館等が避難所として利用されることを踏まえ、災害時の情報受発信手段としても活用できる学校ICT環境の整備を進める。
- 震災後の避難が長期にわたることも想定し、被災者の雇用を確保するため、テレワークの積極的な活用を進める。
- 情報弱者にも十分な情報が伝わるよう、報道番組への字幕付与、手話放送の充実を図る。また、聴覚・音声言語障害の方のための音声以外による119番通報システムを全国展開する。
② 災害に強い情報通信システムの構築
- 災害に備えるとともに、平時の住民サービスの効率化にも繋げるため、国が主導して自治体クラウドや医療クラウドなど、重要データのクラウド化、データセンターの広域分散を強力に推進する。
- 通信の基幹的施設・設備について、津波被害を受けにくい場所への配置や地理的分散を図るとともに、災害対応を行う様々な主体が、通信ルートの二重化、衛星携帯電話等の配備、応急復旧のための機材備蓄等を進める。
- 災害に強い情報通信ネットワークを実現するための新たな技術について、携帯電話、衛星通信、クラウド技術などの研究開発を加速し、世界をリードする。
- センサーネットワークにより収集されたデータを活用して安全な公共施設の管理や、災害時の迅速な避難などを実現し、災害に強い新たなまちづくりを推進する。
2.医療・福祉分野におけるICTの利活用
- 地域医療における医師不足等の課題を解決するとともに、災害時における継続的な医療サービスを確保するため、地域の医療機関・薬局・介護施設が、情報通信ネットワークを通じて、患者の医療情報を安全に共有するための医療情報連携基盤の整備や遠隔医療の普及に向けて必要となる支援を強化する。
- 高齢化の進展に伴い在宅医療・介護への需要が高まる中、見守りシステムの普及や多職種間での情報共有など、介護分野におけるICTの活用を推進する。
- 高齢者・障がい者が社会の構成員として活躍できるよう、ICTを活用した高齢者・障がい者の就労支援、日常生活支援、テレワークの全国普及等のICTの活用を推進する。
3.教育分野におけるICTの利活用
- 学校現場でのICT利活用を強力に推進すべきであり、遅くとも2020年度までに全小中学校で1人1台の情報端末とデジタル教科書、各教室1台の電子黒板を用いた授業を開始できるよう、関係省庁が連携しハード・ソフト・関連法制を一体的に整備する。
- ICTの利活用によって顕著な効果が期待できる特別支援教育については、特に重点的に取り組む。
- 校務IT化で、授業の質向上を図るとともに、経費の削減を図る。
- ICTの健全な利活用を図るため、ネットモラル教育を全ての学校で実施する。