公明がリード、住宅・自動車購入の負担軽減
1月24日、自民・公明両党は、2013年度税制改正大綱を決定しました。2014年4月に消費税率を8%に引き上げることを前提に、家計向けの住宅ローン減税や企業向けの減税など負担軽減策が中心となっています。大綱では「成長戦略を可能とするため税制措置をこれまでになく大胆に講ずる」と強調。減税を重視したため、2013年度は国税と地方税を合わせ、前年度よりも2500億円の減税、14年度以降は2720億円の減税になる見通しです。
公明党が強く主張していた軽減税率について「消費税率の10%引き上げ時に、導入をめざす」と明記されました。さらには、実現への具体的な課題について、与党税制協議会で速やかに議論を始め、今年の年末までに結論を得ることも示されました。軽減税率の導入時期が明確になり、その道筋まで示すことができたのは、大きな前進といえます。軽減税率に対しては、自民、公明両党とも「導入が必要」との認識は一致していましたが、導入時期については隔たりがありました。公明党は8%段階での導入を求めていましたが、自民党の一部には、将来的に15%以上に引き上げた場合に導入すれば良いとの声さえありました。粘り強い交渉の末に実施時期を前倒しさせたことは、公明党の闘いの成果です。
問題は、消費税率10%時点で、食品などの生活必需品に軽減税率を円滑に導入し、一度上がった税率8%を5%に戻せるかということです。その財源確保も大きな課題となります。軽減税率への国民の期待は大きい。具体化に向け、検討を急ぐべきです。
消費増税の関連では、増税後の買い控えなどが懸念される住宅や自動車の負担軽減策も盛り込まれました。
住宅への対応では住宅ローン減税が大幅に拡充され、自動車関係諸税については取得税の「廃止」(消費税率10%時点)が明記され、重量税は「エコカー減税の恒久化」などの方向性が示されました。
いずれも公明党の主張が反映されたものです。とりわけ自動車取得税の廃止は長年の悲願であり、ようやく実現に至ることができました。
また、低所得者ほど負担感が重い消費増税とのバランスを取るために実施する、いわゆる富裕層への増税でも公明党が議論をリードしました。
一方、今回の税制改正では経済再生を力強く進める施策も大きな柱となっています。
従業員の給与を増やした企業への法人税の優遇措置や、中小企業の交際費の控除限度額の引き上げ、孫への教育資金の贈与税軽減など、民主党政権では踏み込めなかった政策が目白押しです。これらを早期に実現し、一日も早い経済再生につなげていくべきです。
一部に重量税の税収が道路の維持管理・更新などの財源に位置付けられたため、「道路特定財源」の復活との報道があります。これはまったくの誤解です。道路特定財源とは重量税などの税収を一般会計とは別の特別会計で管理するものでしたが、前回の自公政権時代に廃止されました。ただ、道路や橋、トンネルなどの老朽化対策などに必要な財源を自動車を使用する人が主に負担することは至極当然です。
(写真は公明党税制調査会長斉藤鉄夫衆院議員)
- 車の購入時に課税される自動車取得税は、消費税率が10%に引き上げられる2015年10月に廃止します。取得税の廃止は、消費税率の引き上げに合わせ、2段階で実施します。
- 車の重さに応じて車検時に課税する自動車重量税は消費税率を8%にする14年10月の段階で、燃費性能に応じた軽減措置を設け、14年度改正で具体策を検討します。
- 重量税は道路の維持管理や老朽化した区間の造り直しのための財源と位置付けることが決まりました。道路の維持管理をめぐっては、山梨県の中央自動車道・笹子トンネルなどの老朽化対策が喫緊の課題としてクローズアップされています。このため、重量税の課税根拠を明確にしました。
所得税、相続税を強化
- 所得税は最高税率を40%から45%に引き上げます。新たな区分として課税所得4000万円超を対象に適用します。
- 相続税の最高税率は50%から55%に引き上げます。また、相続税が発生しない上限額である基礎控除額を4割引き下げ、「5000万円プラス法定相続人1人当たり1000万円」を「3000万円プラス1人当たり600万円」と変更します。所得税、相続税ともに2015年1月から実施します。
- 控除の引き下げにより、地価の高い都市部の小規模住宅を相続する場合、新たに課税されるケースが増える見込みです。このため、相続税の軽減対象となる宅地面積を従来の240平方メートル以下から330平方メートル以下に拡充する緩和策を合わせて実施します。
- 最高税率引き上げは、自民、公明、民主3党が昨年6月に合意した「社会保障と税の一体改革」で、積み残しの課題となっていた富裕層への課税強化の一環です。
住宅ローン減税が拡充
- 2013年末に期限が切れる住宅ローン減税は、期間を17年末まで4年間延長し、一般住宅では最大200万円となっている控除(減税)額を最大400万円に倍増します。
- 住宅ローン減税は年末のローン残高の1%を10年間、所得税や住民税から差し引く仕組みで実施します。現行は対象残高の上限が2000万円、10年間の減税額が最大200万円(毎年最大20万円)です。
- 消費増税前の14年1~3月の入居者には現在と同じ最大200万円の減税措置を適用します。税率が8%に上がる14年4月から17年末までに入居する人については、減税額を最大400万円(毎年最大40万円)とします。
- 所得税や住民税の納税額が少ない中低所得者は住宅ローン減税の控除額を使い切れないため、14年4月から17年末までに入居する中低所得者に対しては現金給付を行います。
日本経済の成長促す
- 今回の税制改正では、政府の緊急経済対策に盛り込まれた税制支援策を具体化し、経済成長を促します。
- 具体的には、給与が2012年度比で5%以上アップした企業は増加額の1割(中小企業は2割)を法人税から税額控除。雇用促進税制もてこ入れし、雇用者数を増やせば1人当たり40万円(現行では20万円)を税額控除します。さらに、研究開発投資の税額控除上限を2割から3割に引き上げるほか、中小企業の交際費を損金算入できる制度も拡充します。
- 一方、祖父母から子、孫といった直系の親族に教育資金を一括贈与した場合、贈与税を非課税とする制度を創設します。高齢者の資産を子孫の入学金や授業料といった教育費に活用し、若年世代への資金移転を進めて消費を活発化させるのが狙いです。13年4月から15年末までの時限措置です。贈与を受ける対象者は30歳未満とし、祖父母全員で子、孫1人当たり1500万円まで非課税とします。