人口減少対策が地方自治体の最重要な課題となっている中で、人口減少に歯止めをかけるために独自の対策を実施する自治体も増えています。茨城県内では、「子育て上手常陸太田」を掲げて、様々な施設を展開する常陸太田市の取り組みが注目を浴びています。
常陸太田市の人口は、2004年の市町村合併時に約6万8000人でした。しかし、今年(2014年)9月1日現在、約5万3000人までに減少しました。65歳以上の高齢化率は3割を超えています。危機感を抱いた常陸太田市は、少子化・人口減少対策に本腰を入れ、企画課内に少子化、人口減少対策係を設置。今年4月には課に格上げしました。
人口減少に対する基本的な方針は、一定程度の人口減少は避けられないとことを前提に、短期的には転出者が転入者を上回る社会減を抑制。長期的には出生数を増やす施策が必要だとしています。
そのために、20~30代の若者世代が地元にとどまりたくなる、魅力あるまちづくりを進めることにしています。具体的には、就労、結婚・妊娠、出産や子育てがしやすい環境を整備し、長期的な課題である出生率の向
上をめざしています。必要な財源は既存の施設を細かく見直して捻出しました。
●医療費、助成制度の拡充
常陸太田市では、医療費助成制度(マル福制度)を、県の制度に上乗せして実施しています。中学卒業まで入院、外来まで医療費を助成(無料化)しました。対象者の自己負担額は一人あたり1日600円(月2回限度)、入院で1日300円(月3000円限度)です。
また、妊産婦の医療費助成は、助成対象を産婦人科との診察だけではなく、歯科や眼科などの通常の疾患にまで拡大し、所得制限も撤廃しました。
医療保険が適用されず高額な不妊治療についても、体外受精などの費用の一部を助成しています。
試みです。現在隊員数は92人に上っています。
●子育て支援
保育園と市立幼稚園の利用料については、第3子以降は無料で、2人以上入園している場合は、2人目にお利用料を上限月3000円に減額しています。
乳児のおむつ代の助成も行っています。乳児1人につき月2万円を上限に、おむつ購入費を助成しています。利用件数は2013年度で263件と、多くの親から喜ばれています。
●若者の定住促進
人口増のカギとなる女性や若者を施策の照準に据え、定住促進に力を入れてきました。
市内の民間賃貸住宅に住む新婚家庭に対し最大3年間、月2万円の家賃補助を行っています。最大12万円の前払いも制度化しました。市の調査によると、利用者の約7割がこの制度をきっかけに常陸太田市内への転居を決めたという結果となっています。
市内で住宅を購入した子育て世帯などには、最大20万円を助成します。
また、地元の銀行は「子育て支援住宅ローン」を実施し、金利の引き下げを行っています。
●市の独自施策を積極的にPR
こうした多彩な支援策を多くの市民に知ってもらうために、常陸太田市では2013年2月に、市民を中心に「子育て上手常陸太田推進隊」を発足させました。パンフレットと名刺を配布し、隊員に口コミで市内外にPRしてもらう試みです。現在隊員数は92人に上っています。