9月12日、安倍首相は世界の女性指導者が集った国際シンポジウムで講演し、女性の活躍を後押しする「全ての女性が輝く政策パッケージ」を、10月に策定する考えを示しました。
一部の民間企業では、女性の発想を商品開発に生かす取り組みが出てきています。子どもを抱いたままでも乗り降りしやすくするためドアが大きく開く自動車や、爪が長い女性でもカバーを開けやすいノートパソコンなど、女性社員の発案で数々のヒット商品が生まれています。
女性役員の比率が高い企業グループは、低いグループに比べて売上高利益率が4割以上も上回るとの海外の調査結果があります。育児や介護支援などワーク・ライフ・バランスに取り組む企業の方が、業績が良い傾向にあることも、よく知られていることです。女性の意見を企業経営に取り入れれば、その企業の発展だけでなく、経済全体の底上げにもつながります。
一方、女性の活躍は地場産業の活性化など地方創生とも密接な関係があります。
地域活性化の成功例として有名な徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」は、料理の添え物だったモミジを持ち帰ろうとした女性客を見て思い付いたといわれています。このビジネスの担い手も、地元農家の女性たちです。和歌山県古座川町では、廃棄していたゆずの皮がもったいないと、女性の有志で加工品開発を開始。事業の拡大に伴って、若者のUターンを促す要因にもなっています。
生活に密着した女性特有の着眼点や柔軟な発想は、地域に眠る資源を掘り起こす鍵になります。国の政策パッケージに加え、地域独自の推進プランを策定すれば、女性の活躍を一段と後押しできるはずです。
埼玉県は、女性の活躍を支援する施策を一元的に担当する「ウーマノミクス課」を設置。女性が働きやすい職場づくりを行う企業を認定し、優遇策を実施するほか、女性の就業・起業の支援などを強力に進めています。認定企業は県内で1000社を超え、着実に広がっています。
こうした自治体の取り組みを政府は積極的にサポートし、普及させていくべきです。
茨城県議会では田村けい子県議が知事に提案
一方、茨城県の女性の活躍支援に関して、先の県議会一般質問では、公明党の田村けい子県議が取り上げました。以下、質問の原稿を引用します。
私たち公明党茨城県本部女性委員会は、県内7カ所の先進的取り組みを調査いたしました。わが県内にも次世代育成支援対策推進法に基づき、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた「くるみんマーク」認定企業をはじめ、企業内保育所の設置、女性管理職登用のための研修制度など、先進的な取り組みをしている企業・団体も存在します。また県ではワークライフバランス推進のため、「仕事と生活の調和推進計画」の策定を働きかけており、本年7月末の策定数は297社と、理解が進んできています。しかしながらその取り組みはまだ、スタートしたばかりであり、女性の活用を一層進めていくことが望まれます。
先日、女性活躍推進の先進県である埼玉県へ伺い、埼玉県三大プロジェクトに位置付けられているウーマノミクスプロジェクトについて調査を行いました。ウーマノミクスとは、ウーマンとエコノミクスをあわせた造語です。我が国においては、女性の就業率は子育て中の30代の女性の就業率が低下する、いわゆるM字カーブを描いており、この対策が重要とされています。埼玉県においては、全国と比較して、30代女性の就業率が低く、将来の生産人口を見通した時に、女性の就業率を高めることが労働政策上の重要課題としています。女性がいきいきと夢を持って活躍することができるよう、社会進出を進め、女性が得た収入を消費や投資に使い、それが地域経済の活性化につながるよう取り組むのが「ウーマノミクス」の考え方とされています。
何よりも、私が注目したのは、平成24年に設置された「ウーマノミクス課」。産業経済部の中に設置されており、さらに県内経済団体においてウーマノミクス推進組織が作られているところからも、経済政策として位置付けられていることがわかります。
女性の活躍推進のためには、従来の男女共同参画の推進の枠組みから飛び出して、思い切った発想の転換が求められます。
埼玉版ウーマノミクスプロジェクトには、働きやすい環境の整備、女性の就業・起業支援、消費・投資拡大のための情報発信の3つの柱があります。働きやすい環境の整備については「多様な働き方実践企業」認定制度、メンター共有制度、県庁周辺の企業との保育所の共同設置など、先進的な取り組みを行っています。
「多様な働き方実践企業」認定制度では、県が認定のための項目を6つ設け、該当する項目数によりプラチナ・ゴールド・シルバーの3段階の認定を行っています。認定されることで、企業のイメージアップにもつながり、新卒採用時にも学生からの好感度が増すなどのメリットもあります。わが県で行っている「仕事と生活の調和推進計画」では、宣言することで認定が受けられますが、埼玉県の事例も参考に、多様な働き方が選べる企業を育成するよう、取り組みの強化が望まれます。
また、モノづくりの視点から女性の力を発揮させる試みとして「神奈川なでしこブランド」も参考になります。女性が開発に貢献した商品・サービスを県として認定し、PRを行うというものです。
農業・水産業における女性の活躍推進も重要です。農業委員等への女性委員の積極的登用を働きかけるとともに、女性農業者の労働条件の改善に向けた家族経営協定の締結の推進なども望まれます。
本年、県では、「ウィメンズパワーアップ会議」を設置し、会議での議論をふまえ、女性の活躍推進のための施策を検討するとしています。経済活性化のための重要な柱である女性の活躍推進をどのように進めていくのかが非常に重要です。