茨城県北芸術祭では、県北5市1町の地域の特色をアートに昇華させた作品が数多く登場します。緑あふれる山々や紅葉の渓谷、化石を産出する海岸、そして何と言っても日本最古の5億年前の地層。日本の近代化を支えた鉱山や炭鉱など、多くの地質・自然・文化資源を誇る県北地域。アート作品の原点となっているのは、県北地域の土地そのもの魅力なのかもしれません。
県北地域には8つものジオサイトが存在します。ジオサイトとは、地球科学を中心とした自然・文化的みどころである「ジオポイント」をテーマごとにまとめ、ルート化したものです。県北地域には個性豊かなジオサイトが各地にあり、「茨城県北ジオパーク」を形成しています。県北芸術祭の公式ガイドブックにも、県北ジオサイトの紹介が載っています。
是非、県北芸術祭の素晴らしい作品と共に、ジオサイトにもご注目ください。
このブログでは、8つのジオサイトの内、日立ジオサイト、五浦海岸ジオサイト、袋田の滝ジオサイトをご紹介します。
日本最古5億年前の地層の上から日立を一望!日立ジオサイト
日本に存在する最古の地層である、約5億年前のカンブリア紀の地層や岩石を見ることができるのが日立ジオサイトです。豊かな地質は日本の四大銅山の一つである「日立鉱山」の繁栄をもたらし、国内有数の工業都市として発展しました。
その5億年前の地層は、身近な場所で見ることができます。日立市民の憩いの場である神峰公園。動物園を見下ろすところまで坂をあがると、公園内には幾つもの岩がむき出しになっています。これが5億年前の石の露頭です。公園内には日立鉱山の創業者・久原房之助や日立製作所の創業者・小平浪平などを讃える石碑がいくつかあります。これらも5億年前の花崗岩を基礎にしたり、露頭をそのまま使うなどしているのです。
神峰公園の山頂にある展望台の足下にも、日本最高の岩がごろごろとむき出しになっています。太古のロマンを是非感じてください。
岡倉天心もあこがれた五浦海岸ジオサイト
大昔は深い海の中にあった五浦海岸。海中で砂泥が溜まって固まり、地殻変動によって陸地になりました。波の力で削られた岩礁や崖は変化に富んだ景色を生み、貝化石や海底に住む生物の巣穴の化石も多く発見されている。
新しい日本画の創造を目指した「岡倉天心」がその本拠地とした茨城・五浦の六角堂。天然のコンクリート(炭酸塩コンクリーション)の上に建てられた六角堂は、杜甫の草堂、親鸞が夢のお告げを受けた京都の頂法寺の六角堂、茶室のイメージが渾然とした建築です。
数億年前に五浦の海岸は深海にあって、メタンガスが噴出し、その熱を求めてたくさんの生物が密集していたといいます。生物の呼吸による大量の二酸化炭素が海中のカルシウムと反応して、炭酸塩コンクリーションという堅い岩となりました。それが隆起して海上に露出し、岩の中にたくさんの貝の化石を含み複雑な形になったのです。茨城大学の安藤寿男教授の研究によれば、このような地形を海岸で直接観察できる場所は、日本ではこの五浦だけです。天心はこの地形を見て、ここを拠点に日本美術の再興を目指したのです。
かつてに海底火山が雄大な滝に変身/袋田の滝ジオサイト
大子町にある日本三名瀑のひとつ「袋田の滝」。かつて陸地だった一帯に徐々に海が浸入し水没。約1500万年前には大きな海底火山があったとされています。現在の滝が流れる岩肌は、海底火山のマグマが噴いて固まった一枚岩(溶岩)なのです。
参考:茨城県北ジオパークのHPhttp://www.ibaraki-geopark.com/