10月1日から茨城県は、医療福祉費支給制度(マル福)の所得絵制限を従来の393万円未満から、年間622万円未満に大幅に緩和しました。これは、子育て支援を充実するべきだとの井手よしひろ県議ら公明党などの提案を受けて実現したものです。
マル福の事業主体は市町村ですが、支給額の2分に1を県が負担しています。県の所得制限緩和を受けて、複数の自治体が独自に、対象年齢の拡大や所得制限の撤廃などを行っています。
■所得制限緩和、自己負担軽減も
各市町村の助成の対象年齢(年次)については、牛久、小美玉両市が10月から、従来の中学3年から高校3年までに引き上げました。両市を含め対象を高校3年までとする自治体は11市町となりました。
さらに、古河市は昨年度(平成27年度)から、境町は本年度から、ともに対象を20歳(学生)まで引き上げています。残り31市町村は対象を中学3年までとしています。
一方で、子どもの父または母の所得の制限を撤廃、または緩和する動きも拡大しています。10月から、那珂市が中学3年まで撤廃したほか、水戸市は未就学時点まで撤廃し、中学3年までの所得制限を緩和。ほかの自治体にも緩和の動きが広がっています。既に4月時点で34市町村が一部条件付きで所得制限を撤廃しました。
さらに外来600円(1日)、入院300円(同)の自己負担については、7市町村が外来、9市町村が入院で、それぞれ全対象の自己負担をなくしました。
県によると、小児マル福に対する都道府県の補助制度で、対象年齢(年次)を入院・外来ともに小学生以上としているのは本県を含めた17都府県にとどまっており、全国的にも進んだ取り組みといえます。
■マル福拡大の隘路となっている国の国保補助ペナルティの撤廃を!
こうしたマル福制度拡大に流れに、ブレーキを指している国の制度があります。国保の“ペナルティ制度”です。市町村が子ども医療費の窓口払いの撤廃など、窓口負担軽減のための単独事業を行った場合、国民健康保険会計への国からの補助を減額する措置がいまだに行われています。乱診乱療など医療費の増嵩に歯止めをかける単に30年前(昭和59年)に作られた古い制度です。少子化、人口減少など、社会状況は大きく変化しました。子どもを産み、育てやすい地域社会を作ることは喫緊の課題です。
公明党は、昨年(平成27年)2月18日の山口那津男代表の本会議質問や3月17日の参議院予算委員会における西田実仁議員が、この問題を取り上げました。これをきっかけに、国はやっと検討会を立ち上げて、今年度中に結論を出すことになっています。
今回の動きは、山口代表が地方創生の観点から議論を開始したことに大きな意義があります。地方において人口減少問題に真正面から取り組むとして、各自治体に地方版の人口ビジョンや総合戦略の策定を求めていながら、乳幼児医療の助成制度を行えば国庫負担金が減らされるということは理論的に矛盾しているからです。地方創生の新たな交付金は子どもの数が多い自治体を評価して配分するということまで言っているわけですから、股裂きの政策立案となっているわけです。
当時の厚生労働大臣は、少子高齢化が進行する中、子育て支援、地方創生、地域包括ケア等の幅広い観点から検討する場を設け、関係者を交えて議論すると明言しました。時代に対応した新たな制度になるよう見直しを進めていくべきです。平成30年には国保の財政運営が都道府県単位になるわけですから、見直しをする大きなチャンスです。
■茨城県内自治体の課題は、一部底負担の撤廃
一方、マル福の対象年齢の拡大などが進んだ茨城県においては、一部自己負担の撤廃、もしくは縮小が課題です。先にも述べましたが、県内の多くの自治体では、外来600円(1日)、入院300円(同)の自己負担があります。
例えば、千葉県では外来の自己負担は300円(または所得により無料)となっています。
栃木県では月額500円です。2日間かかれば茨城県が1200円(1200円が限度額)であるのに対して、栃木県は500円で済みます。境を接する県でこれだけの差があることは、茨城県の子育て支援にかける意気込みに差を感じてしまいます。
茨城県議会公明党としては、国保の“ペナルティ制度”の早期是正を図り、自己負担の軽減に全力を挙げたいと思います。
参考:茨城県内市町村のマル福制度
http://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/koso/kokumin/koso/nhi/documents/2810sityouson.pdf