来年(2017年)の県政の大きな課題の一つは、「東海第2発電所の再稼働問題」です。
12月22日に行った知事への来年度政策要望では、「UPZ圏内の人口が約96万人にのぼること、運転開始後38年が経過しようとしていることなどを総合的に判断し、再稼働させずに廃炉とするよう、国並びに事業者に積極的に働きかけること」と、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は廃炉を強く主張しました。
日本原子力発電東海第2原発は、運転開始から38年を迎えました。原発を動かし続けられるのは原則40年で、運転期間を延長しなければ廃炉は避けられません。東海第2原発は1978年11月に営業運転を開始。国内初の100万キロワット超の大型原発として、注目されました。国は原発の運転延長を最大20年まで認めています。この再延長に関する東海第二発電所の申請期限は来年11月です。この時までに機器の劣化などを調べる特別点検も済ませておく必要があります。
期限迫るも安全体制整備は遅れる
福島第一原発事故を教訓に、原発を再稼働させる基準はより厳しくなりました。東海第2原発を運営する日本原電は2014年5月、安全強化策が新基準をクリアするかの審査を国の原子力規制委員会に申し込みました。これまでに最大の津波想定などを協議してきました。現在までに、施設の耐震設計のもとになる基準地震動が妥当と認められました。
今後の規制委員会での議論の最大のポイントは総延長18.5キロにも上る電気ケーブルの防火対策です。
8月23日、原子力規制委員会の更田豊志委員長代理らが、東海第2発電所の現地調査に入りました。東海第2発電所のケーブルは、多くが新基準が求める難燃性ケーブルではありません。対応策として日本原電は3月、審査申請時の防火塗料を塗る方法から、防火シートを巻く工法に変更する方針を示しました。
「(新基準ではケーブルを)難燃性に取り換えられる所は全て替えてもらうことが基本だ」と、原電側から防火シート工法のサンプルを示された更田委員長代理は全交換が原則と強調したいわれます。
また、肝心な安全対策がいつ完了するかも見通せません。津波対策でかさ上げする防潮堤は標高18~20メートルで総延長2キロを超えます。フィルター付ベントの工事なども完成のめどが立っていません。2017年6月までに終える予定だった安全対策工事の完了時期は、大幅にずれ込む可能性が高まっています。
原子力安全協定の事前承認権限拡大
「地元自治体の同意」といった課題もあります。
12月21日、東海第2発電所が立地する東海村と、隣接する日立市、那珂市、常陸太田市、ひたちなか市に水戸市を加えた6市村長で組織する「原子力所在地域首長懇談会」は、日本原電東海事業本部の幹部と対峙しました。「自分たちは『乙』に入れないのか」首長の一人から質問がだされました。乙とは、茨城県と東海村が日本原電と「原子力安全協定」を結ぶ当事者ということです。現在は、乙が茨城県、乙が東海村です。日本原電側は、「周辺自治体にも東海村と同様に丁寧に説明し、対応していきたい」との言葉はありましたが、首長らが求める肝心の事前了解権限に触れることはありませんでした。
「(首長側の)要求に対する回答のレベルとしては、ゼロ回答に近い」と、首長懇の座長を務める東海村の山田村長はあきれた表情を浮かべました。
現行協定は、再稼働に必要な安全対策工事を含め、施設を新設・増設する際に「事前に甲及び乙の了解を得る」と定めています。事前了解の権限を持つのは県と村だけで、隣接自治体は「丙」と位置付けられ、県と村から必要に応じて意見を求められる立場にとどまっています。
このため、各首長は東京電力福島第1原発事故後、被害が広範囲に及んだ事故の教訓を踏まえ、原電に対し「東海村と同等の権限」を求めてきました。
そもそも原子力安全協定は、国中心の原子力行政に地元が関与することを目的に、茨城県では1974年に事業者と自治体との間で締結されました。単なる「紳士協定」とする考え方と、法律上の「契約」とする説で意見は分かれています。しかし、現実的には大変重みがあり、全国どの自治体でも、再稼働にあたっては立地市町村と都道府県の承認を得ています。
一方で、周辺自治体への権限拡大には慎重な意見もあります。県と村以外は施設の安全性を検証する体制(人材)も整っていないのが現実です。
協定見直しの期限は「(日本原電が)自治体に発電所の今後にかかる判断を求める時の前まで」と決まっている。再稼働に向けての大きなハードルとなってます。
難航する住民の避難計画の策定
2011年3月11日、東日本大震災が発生。東海村と日立市を結ぶ国道245号の久慈大橋は通行止めになりました。国道6号の榊橋にも大きな段差が出来、通行に支障が出ました。茨城の大動脈・常磐道も長時間にわたり通行規制が行われました。
日本原電東海第2発電所の過酷事故を想定し、東海村が策定を進める広域避難計画案では、村民は取手、守谷、つくばみらいの3市に逃げることになっています。計画案は単独の原発事故を想定され、地震によるインフラの損壊など複合災害の対策は盛り込まれていません。地震に加え原発事故が発生したら、震災以上のパニックが必ず起こります。
東海第2発電所の避難計画策定の対象は、原発から半径30キロ圏の14市町村に広がり、人口は約96万人に上ります。
県計画は40万人を30キロ圏外の県内30市町村で収容します。56万人を福島、栃木、群馬、埼玉、千葉の隣接5県に避難させるとしています。避難経路や自家用車で逃げることは決まったが、福島を除く4県は受け入れ先の市町村が決まっていません。
要配慮者(要支援者)への支援や30キロ境界付近で予定する汚染検査の態勢など課題は山積です。地震や津波などとの複合災害を想定した計画作りは具体化していません。
東海第2発電所周辺の住民が万が一の事故が起こった場合、安全な避難が出来ないようでは、原発を再稼働させることは絶対に許されないのです。
茨城のブランド向上に原発はむしろマイナス!
さらに、茨城のブランド力を高めるために、原子力発電所が稼動している地域というイメージはむしろマイナスです。茨城県は、日本で最初に原子の灯がともった地域です。原子力の先進地として、「未来を開く原子の火」と誇りを込めて県民の歌を歌ってきました。
しかし、自然エネルギーへのシフトが指向されている現在、原子力を卒業した地域というイメージづくりが最も重要だと思います。
来年秋には、県知事や東海村長の選挙も行われます。原発再稼働の問題が重要な争点となってきます