
茨城県つくば市と東京・秋葉原を結ぶ「つくばエクスプレス」(TX)は、2005年8月24日の開業から、丸20年という大きな節目を迎えました。この20年間で、TXは茨城県、特に沿線地域に計り知れない変化と発展をもたらし、その勢いは今後も加速していくと期待されています。

この20年間でTXが茨城県にもたらした変化
この20年を振り返ると、TXは茨城県に大きな人口流入と地域経済の活性化をもたらしました。開業前と比較して、TXの茨城県内沿線3自治体(守谷市、つくば市、つくばみらい市)の人口は約1.3倍に増加し、この増加傾向は今後も続くと予測されています。
これは、都心へのアクセス時間が大幅に短縮されたことに加え、沿線での計画的な開発により、質の高い住宅や宅地が供給されてきた結果と言えるでしょう。実際に、2024年7月時点の茨城県内平均地価トップ3には、守谷市、つくば市、つくばみらい市といったTX沿線自治体が名を連ねており、TXがもたらした不動産価値の向上は明らかです。

TXは、東京・秋葉原のIT拠点とつくばの研究開発拠点を直結することで、筑波研究学園都市のさらなる発展を強力に後押ししました。
さらに、沿線の八潮市、三郷市、流山市、柏市などでも生活利便性が向上し、人・物・情報の流れが活発化することで、業務機能や研究開発機能の移転・整備が進みました。
これは、首都圏一極集中の是正にも貢献しています。開業に伴い、沿線の計画開発地や既存市街地が活性化し、地域産業や商業が大きく発展し、県経済全体に広範な経済波及効果を生み出してきたのです。
交通面でも、東京圏北東地域の交通体系は格段に充実し、都心までの時間距離は大幅に短縮されました。TXの輸送実績は当初の予測を大きく上回り、2025年度の需要予測であった1日あたり31.5万人を、2013年度には前倒しで達成しています。2025年3月31日現在では、1日あたりの輸送人員が過去最高の約40.3万人に達し、コロナ禍以前の水準まで回復しました。
首都圏新都市鉄道株式会社の経営状況も好転しています。2009年度決算で初の経常黒字を達成して以来、2025年3月期には営業収益479億4196万円、経常利益71億9574万円、当期純利益59億9408万円を計上し、3期連続で最終利益を記録するなど、安定した経営基盤を築いています。

今後の展望:TX延伸による茨城県の未来
茨城県は、このTXの成功を足がかりに、さらなる飛躍を目指しています。その鍵となるのが、TXの土浦方面への延伸構想です。2023年6月には、延伸方面が土浦方面に、JR常磐線との接続駅が土浦駅となることが決定され、2045年の開業を目指して具体的な検討が進められています。
このつくば~新土浦間の約10kmの延伸は、これまで「ミッシングリンク」とされてきたつくばと土浦を結び、TXの整備効果を茨城県全域に広げることで、本県の将来的な経済発展に大きく寄与すると期待されています。概算事業費は約1,320億円と試算されていますが、費用便益比(B/C)は1.60(乗用車利用者便益を含む場合は3.33)と1を上回っており、社会的意義のある事業であることが確認されています。採算性に関しても、土浦延伸単独でも43年後には累積資金収支が黒字に転換する見込みです。これにより、守谷~土浦間の移動時間は約28分、東京~土浦間は約9分短縮される見込みです。
さらに、国際競争力強化に資するプロジェクトとして位置付けられているTX東京延伸(秋葉原~新東京間約2km)との一体的な整備も検討されています。一体整備の場合、概算事業費は約3,070億円と試算されますが、費用便益比は1.35(乗用車利用者便益を含む場合は1.96)と、こちらも社会的意義のある事業であることが分かります。特に、一体整備であれば累積資金収支の黒字化が27年後と、土浦延伸単独よりも早期に達成できると見込まれており、鉄道ネットワークの効果が最大化され、より大きな社会的・経済的効果が期待されています。東京延伸が実現すれば、茨城県側から都心部への通勤・通学需要が増加し、羽田空港へのアクセス性も向上するでしょう。
TXの延伸により、茨城県は以下のような具体的な効果を享受すると期待されています。
秋葉原駅から鉄道2時間圏域の県内居住人口が13.8万人、面積が356百万平方メートル増加し、東京圏からの新たな人の流れが生まれることで、若者の移住・定住が促進されるでしょう。
つくばと水戸という二大都市圏が鉄路で結ばれることで、広域的な産学官連携や地域医療・福祉の充実が期待されます。
公共交通サービスが向上し、超車社会からの転換・脱却、災害時などの輸送障害発生時における広域的なリダンダンシーの確保、通勤の速達性・利便性向上に貢献します。
中間駅を中心とした新しいまちづくりが進み、地方の中心都市を核とした地域生活圏の形成、企業誘致による地域経済の活性化、職・住・遊・学機能の再構築が図られます。県央・県北の観光地への移動選択肢も増加し、進学選択肢の多様化にも繋がります。
首都圏新都市鉄道は、これらの未来の発展を見据えつつ、現在の課題にも真摯に取り組んでいます。混雑緩和のため、2030年代前半の完了を目指し、8両編成化事業(約360億円)を着実に推進しており、1編成あたりの輸送力を約30%増加させる計画です。また、開業から20年が経過し、経年劣化した鉄道設備の大規模な更新も急務となっていますが、リスク管理と予防保全により、今後も安心と信頼の鉄道輸送を堅持していくとのことです。さらに、少子高齢化による将来的な労働人口減少への対応として、適切な人材確保・育成や働きやすい職場環境づくりにも力を入れています。

1994年に茨城県議会議員として当選以来、当時の県議会議員にとって、つくばエクスプレスの全線開通はいわば悲願でした。
度重なる開業延長や計画変更など、多くの困難を乗り越えて2005年8月24日を迎えました。
写真は、7月26日に行われた試乗会でのスナップです。
つくばエクスプレスは、この20年間で茨城県の発展に不可欠な存在となりました。これからも、延伸計画の実現や経営基盤の強化を通じて、地域の価値創造をリードし、茨城県の未来を大きく切り拓いていくことを期待します。