新聞各紙の報道によると、政府は、国際熱核融合実験炉(ITER)の建設地について、青森県六ヶ所村への誘致断念も視野に入れて関係国と調整に入る方針を固めました。
建設地誘致に名乗りを上げている欧州連合(EU)との調整の結果、工事の受注や職員枠確保などの面で、日本が相応の利益が得られると判断したためです。
これにより、ITERの建設地は、フランスのカダラッシュに絞られる見通しが濃厚となりました。政府としては候補地となっている青森県や関係国との調整を経て、6月にも関係国間で正式合意にこぎつけたい考えです。
一方、3日夜にはフランスのシラク大統領は、仏国営放送の特別インタビュー番組でITERについて「カダラッシュに誘致できるだろう」、「日本との交渉を終えつつある」と述べ、早期合意の方向性を示しました。シラク大統領は、仏が国際社会で重要な位置を占めていることを示す例としてITERを取り上げました。「欧州各国の合意を取り付けた後、ロシアや中国の支持を得て、カダラッシュに建設できる一歩手前まで来ている」と語りました。
参考:ITER(国際熱核融合炉実験炉)計画について(外務省のHPから)
ITERの動向は茨城県の開発にも大きな影響
青森県六ケ所村への誘致ができない場合、茨城県の県北地域の将来設計にも大きな影響を与えます。
那珂市には原研那珂研究所があり、臨界プラズマ装置「JT-60」を擁する核融合研究の世界的な拠点となっています。ITERをめぐっては、県が国内候補地に名乗りを上げ、最終的に六ケ所村に敗れた経緯があります。
仮に六ケ所村にITERの建設が決まれば、国内の核融合研究は青森県に集約されると見込まれ、那珂研究所は規模や機能の縮小が避けられないと思われていました。研究所職員約300人の相当数も六ケ所村へ移住すると想定されていました。フランスへの建設が決まれば、那珂市にそのまま残る可能性も出てきました。また、実験炉建設の国内支援機能が那珂市、六ケ所村の二極に分散される公算も残っています。
日本にITERを誘致すれば、財政負担が30年間で6000億~8000億円とみられ、県内の各施設の予算にも深刻な影響が出ることも懸念されただけに、むしろ国際間の共同研究体制を確立し、フランスへの施設建設を進めることは、茨城県にとっては得策かも知れません。
重水素と三重水素を燃料に核融合反応を安定的に起こすことができるか検証する炉。10年かけて建設し、その後20年間運転しながら研究開発を進める。計算上は1グラムの燃料で石油8トン分に相当し、「夢のエネルギー源」の期待もかかるが、核融合発電の実用化は早くても今世紀末とみられる。