公明党は9月30日党大会を開催し、大田昭宏代表、北側一雄幹事長の新体制で、新たなスタートを切りました。
翌10月1日付マスコミ各社は、公明党の新出発に対して社説を掲載しました。
それぞれの社説は、公明党と自民党の連立について、その大半を割いて論評を加えています。
読売社説は、「自民党と連立を組んで7年。公明党が自負するように、自公連立は、「政治の安定」に寄与してきたと語り、毎日新聞は、「バブル崩壊後の経済危機、金融危機による「失われた10年」をようやく克服できたのは、公明党の連立入りで政権基盤が安定したことも一因といえるだろう」と、自公連立の成果高く評価しています。
連立の中での公明党の姿勢については、各社の主張によって、公明党への注文は大きな差が出ています。読売社説では、「公明党は、観念的に平和を唱えるのではなく、『平和創出の積極的平和主義』に立つとしてきた。引き続き、こうした立場から、現実的な対応をすべきだ」と書き、安倍総理が進める日米同盟の強化という課題に、積極的に取り組むことを期待しています。反対に、朝日社説は、「かつて太田氏は連立政権における公明党の役割について、『右傾化へのブレーキ役』と語っていた。本当にその役割を果たせるのか。いよいよ真価が問われる。責任はきわめて重い」と、集団的自衛権や教育への国の関与を強めることに対して、公明党が歯止めとなることを要請しています。
憲法問題、格差是正、外交問題などなど、新公明党に課せられて課題はあまりに重く、その解決を国民は注視しています。
我々地方議員も、「大衆とともに」との立党精神を今一度確認し、大田代表、北側幹事長と共に日々の活動に取り組んでいきたいと決意を新たにしています。
【読売新聞社説】2006/10/1
[公明党新体制]「『連立第2期』に改めて負う責任」
執行部体制が変わっても、政権与党として、政治の安定と国益に立った政策の実現という責任を負うことは変わらない。
公明党大会は、その基本を確認したということだろう。
公明党は第6回党大会で、神崎武法代表・冬柴鉄三幹事長から、太田昭宏代表・北側一雄幹事長の体制への移行を正式に決めた。安倍新政権誕生とほぼ時を同じくしての新体制のスタートである。
太田新代表は、就任のあいさつで、安倍政権下での自公連立を「連立第2期」と位置づけ、内外の「劇的な構造変化」に対処することの重要性を強調した。
自民党と連立を組んで7年。公明党が自負するように、自公連立は、「政治の安定」に寄与してきた。今後も、例えば、当面、臨時国会での優先課題である教育基本法改正案など、重要政策推進のための政治的基盤となる。
公明党は「平和」「福祉」を看板にしてきた。平和の問題では、小泉前政権下で、インド洋への海上自衛隊艦船派遣や、イラク南部の陸上自衛隊派遣など、国際平和活動のための特別措置法制定に貢献してきた。
今後、米軍再編の下で、日米同盟の強化という課題に取り組まねばならない。安倍政権としては、無論、公明党の協力なしには、問題解決は出来ない。
公明党は、観念的に平和を唱えるのではなく、「平和創出の積極的平和主義」に立つとしてきた。引き続き、こうした立場から、現実的な対応をすべきだ。
財政再建のため、厳しい歳出削減を進めねばならない現状は、福祉の党という立場には、“逆風”とも言える。
公明党が推進してきた児童手当の拡充などには、時に、ばらまきとの批判もあった。今後は、持続可能な社会保障制度の確立や少子化対策など、税財政全体に目配りをした公正、妥当な福祉政策の推進に力を尽くしてもらいたい。
自民、公明両党の先の連立合意は、憲法改正の問題には触れていない。自公両党間の隔たりが大きいからだろう。
公明党は、現憲法は変えず、人権など新たな条項の追加にとどめる「加憲」の立場だ。戦後レジーム(体制)からの船出を主張し、その中核に新憲法制定を置く安倍首相とはまったく異なる。
だが、憲法制定時とは様変わりした時代の変化に、「加憲」で対応できるのか。十分、考えるべき点だ。
太田代表は、「互いに言うべきことは言う」「時に自民党をリードする気概を持って課題に挑戦する」と言う。
無論、大事なのは、自党の利害・打算ではなく、国益に立った対応だ。
【朝日新聞社説】2006/10/1
太田公明党 ブレーキ役の正念場
公明党は党大会で新しい代表に太田昭宏氏を選んだ。自民党との連立7年の実績を強調し、今後の運動方針を決めた。
太田氏は平和運動に熱心な創価学会育ちだ。男子部長や青年部長を歴任し、自らも「戦争体験の継承運動」に取り組んだ。その活動を朝日新聞に投稿したこともある。
連立を組む自民党も党首が交代した。安倍新首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、憲法改正や教育の再生に意欲をみせる。党や内閣の布陣も強い保守色を醸しだしている。
「大衆とともに」を立党の精神とし、「清潔、人権、平和、福祉」を党の看板とする公明党とは体質が違う。政策や理念もまったく違っている。
かつて太田氏は連立政権における公明党の役割について、「右傾化へのブレーキ役」と語っていた。本当にその役割を果たせるのか。いよいよ真価が問われる。責任はきわめて重い。
まずは憲法問題だ。安倍氏は「私たちの手で新しい憲法を作っていく」と述べ、新憲法の制定を政治スケジュールにのせると明言している。自民党がまとめた新憲法草案は、9条を改め、「自衛軍」を創設するとしている。
一方、公明党はいまの憲法を評価し、環境権や知る権利など、新たな理念を加える「加憲」の立場だ。戦争の放棄を定めた9条は今後も堅持し、その上で自衛隊の法的な認知や、平和への貢献などを加えるかどうか検討すべきだという。
憲法と密接にかかわる集団的自衛権の行使についても、安倍首相は「保持するが行使できない」という政府解釈の変更に前向きだ。
しかし、公明党は行使を否定し、冬柴国土交通相も入閣の際に「それはできない」とくぎを刺している。
教育問題でも食い違いが目立つ。安倍首相は自著で学校評価制度の導入など、国の関与を強めることを強調している。これに対して公明党は教育の自主性の確立や地方分権の推進を打ち出しており、めざす方向は百八十度違う。
こうした重要テーマへの安倍首相の態度は今のところあいまいだ。しかし、ひとたび具体的な政策に踏み込んでくれば、公明党との基本的な立場の違いが明らかになるに違いない。
神崎氏が小泉前首相の靖国参拝を「苦渋の選択」として容認したように、太田氏も安倍首相に妥協すれば、それこそ「何のための連立か」との批判を招く。党の存在理由も問われるだろう。
というのも公明党は自民党に譲歩を迫る手立てをもっているからだ。
自民党は89年以来、参院で過半数を切っている。昨年の総選挙で衆院では圧勝はしたが、これも公明党・創価学会の支援のたまものだ。遠慮は無用なのだ。
太田氏は大学時代は相撲部の主将だった。得意技は、ぶちかましからの一気の寄りだ。遠慮なく自民党にぶつかり公明党らしさを押し出してもらいたい。
【毎日新聞社説】2006/10/1
公明党新体制 連立に埋没せず「らしさ」を
公明党は30日に開いた党大会で太田昭宏代表を正式に承認した。あいさつに立った太田代表は、7年間の自民党との連立政権の経験を踏まえ「お互いに言うべきことは言う『連立第2期』にしなければならない」と語り、「新しい公明党」を目指す方針を打ち出した。
「新党平和」と「公明」が合流し、「公明党」として再発足して以来、神崎武法代表-冬柴鉄三幹事長体制が続いていた。小渕恵三政権下の99年10月には自民、自由両党と連立政権を組み、与党入りを果たした。
神崎体制に代わる太田体制と、ほぼ同時期に誕生した安倍晋三首相との自公政権はまさに「第2期」の出発点にふさわしいが、問題は遂行すべき政策だ。
この7年間で、公明党と自民党との相互関係は深まった。支持団体による組織票が減っている自民党にとっては、公明党、さらには固い票を持つ支持母体の創価学会からの選挙時の支援は、重要性を増している。
バブル崩壊後の経済危機、金融危機による「失われた10年」をようやく克服できたのは、公明党の連立入りで政権基盤が安定したことも一因といえるだろう。
その一方で、公明党も与党入りすることで、保守票にもウイングを広げ、一昨年の参院比例代表では15%を超える862万票を獲得した。党組織を末端で支える地方議員の数も増えている。
半面、公明党の独自色が薄らいでいるというマイナス面の指摘も少なくはない。公明党は結党以来、平和主義と福祉政策に重点をおいてきた。憲法改正の自民党と加憲の公明党とでは憲法観でも隔たりがある。集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈問題でも食い違いが目立つ。
所得再配分機能に力点を置く公明党の政策と市場原理の「小泉改革」とでは相いれない点も少なくない。太田代表が打ち出した「生活現場主義」も「小泉改革」で進んだ格差を是正できるかどうかは未知数だ。これまでも公明党は児童手当の拡充策などに努めたものの、十分な成果を生んだとはいえない。格差拡大を放置しては党の基本理念にも反するはずだ。
小泉純一郎首相(当時)に靖国神社参拝を自粛するよう公明党は再三にわたり申し入れた。だが、小泉首相は毎年1度の参拝を続けた。安倍首相も、公明党の意向に反して官房長官当時の4月に参拝している。抑止機能を公明党は果たすべきだった。
その上、参拝問題を契機に中、韓両国との首脳外交は暗礁に乗り上げている。日中関係の改善に公明党は国交正常化当時から深くかかわってきた。太田代表も「中、韓両国との首脳間対話が最も大事だ」と力説する。積極的に関与し、打開策づくりに尽力することが求められよう。
連立政権の下に埋没しては「数の論理」にくみすることになる。立党の原点でもある「大衆とともに」の視点に立って、公明党はもっともっと努力すべきだ。