民主党は、先月(10月)18日、7月の参院選で掲げた公約の1つである農家の販売価格が生産額を下回った場合、国が戸別に補償する「農業者戸別所得補償法案」を国会に提出しました。
民主党の農業者戸別所得補償法案によると、対象は自給自足を除く農家(いわゆる販売農家)です。品目は、価格が続落するコメや麦、大豆のほか、雑穀や菜種、飼料作物など。さらに、品質向上や経営規模拡大、環境保全への貢献、コメに代わる農産物の生産に、補償金を加算する規定を盛り込み、農家間の競争を促すとしています。
中山間地域等直接支払制度は現行法の5年間の規定を「恒久措置」としています。同法案の施行に伴う必要な予算は年間1兆円を見込んでいます。一方、参院選の政権公約で掲げた「コメの強制減反を廃止」については盛り込まず、補償条件に「生産数量目標」に従うことを盛り込んでいます。(参院選の民主党のマニフェストではすべての販売農家を所得補償の対象にするとしていましたが、その公約は守られず条件が付きました)
この法案に対し、11月1日の参院農林水産委員会で公明党の谷合正明議員が質問に立ちました。
谷合議員は、法案の目的に食料自給率の向上をうたっていることに言及し、民主党が10年後に食料自給率を50%に引き上げることを政策目標にしていることを踏まえ、報道などで民主党が示している品目別自給率目標の根拠を質しました。これに対して、民主党の法案提出者は、「確たる予想を持ち合わせていない」と、明確な根拠がない無責任な予測であることが明らかになりました。
更に、谷合議員は、所得補償制度の財源として民主党が述べている1兆円の積算根拠についても質問。民主党の法案提出者は「確たるものに基づいて決めたということはないのが事実」と明確な積算根拠がないことを認めました。
現状の政府の農業政策が、大規模農家に経営支援を集中させていることから、「小規模農家の切り捨て」との批判も多いことも事実です。与野党をあげての真摯な農業政策への取り組みが必要です。
この法案は、参議院は通過する見込みですが、衆議院では成立する可能性がなく、臨時国会の会期末には「廃案」となります。