小沢氏の連立構想、狙いは政策実現と衆院選戦略
読売新聞(2007/11/4)
民主党の小沢代表は自民党との連立政権構想をなぜ進めようとしたのか――。福田首相との党首会談から一夜明けた3日も、様々な見方が飛び交った。
(11月)3日明らかになった2日夜の民主党役員会の激論の模様からは、小沢氏が政策実現にこだわったこと、次期衆院選への思惑があったことなどが浮き彫りになった。
役員会の内容については、外部に漏らさないよう、かん口令が敷かれた。出席者によると、小沢氏は冒頭、「大連立という流れの中に、政策協議がある」と述べたうえで、自民党と連立政権を組む「利点」と「不利益」の双方を伝えた。
利点について、小沢氏は「参院選で訴えた政策が実現できる」と説明。
そのうえで、「政権を取りに行くのが我々の最大の目標だ。民主党は7月の参院選で勝利したが、このままでは、参院選で国民に約束した政策が実現できない。次期衆院選は厳しい」と語った。
一方、不利益については「自分たちだけの力で政権を取るという、本当の意味での政権交代にならない」と説明した。
一方、小沢氏はこれまでも、自民党と公明党の選挙協力を切り崩すことが重要だと強調していたことから、自民・公明両党の結束にくさびを打ち込むため、連立構想の検討に動いたとの見方もある。
2日の役員会では、小沢氏の説明の後、5、6人が発言を求めた。全員が反対意見を唱えた。小沢氏は「民主党として、最終的にどう決断していくのか、週明けに両院議員総会を開き、皆で決めたい」と述べた。幹部だけでなく、党に所属する国会議員全員による議論で決着をつけようと、連立にこだわったわけだが、賛同は得られなかった。

テロ特措法に限らず、年金問題、社会保障、税制問題、農業問題など国政の課題は山積みです。民主党の小沢代表の政権奪取を第一義とする政治姿勢には、大きな疑問と反発を感じます。国民の切実な悩みや苦しみに、民主党も自民党も真っ正面から取り組んでもらいたい、政局優先の国会議論には閉口します。

民主党の小沢代表は、11月5日に辞任を表明しましたが、その後、民主党内からの説得を受け、7日に辞任を撤回しました。
「民主党・小沢代表辞任を撤回」(2007/11/7)
「民主党内、絶対まとめる」大連立は小沢氏が持ちかけ
読売新聞(2007/11/4)
2日の福田首相と小沢民主党代表の会談で、議題になった自民、民主両党による連立政権構想は、実は小沢氏の方が先に持ちかけていたことが3日、複数の関係者の話で明らかになった。
「大連立」構築に向け、小沢氏がカギと位置づけたのは、自衛隊の海外派遣をめぐる「原理原則」だった。
関係者によると、小沢氏は当初から、首相側に連立政権の考えを持っていることを内々伝えていたという。
2日午後3時から行われた会談で、首相は新テロ対策特別措置法案への協力を要請。これに対し、小沢氏は「自衛隊派遣には原理原則が必要だ」と主張した。
さらに、自衛隊の海外派遣のあり方を定める一般法(恒久法)について、「『派遣は国連決議に基づくものだけに限る』と決めて欲しい」と求めた。内容の検討は、「内閣法制局に頼らない方がいい」などとも注文した。
首相は「与党が納得するかどうか確認したい」と答え、休憩を取ることにした。
直前に、小沢氏は「それさえ決めてくれれば、連立したい」と述べ、連立政権への参加を持ち出したという。
連立参加は、首相の方から要請した形とすることも小沢氏は求めた。民主党内の説得に有利と判断したと見られる。
会談が6時半から再開したところで、首相は小沢氏の主張に沿った文書を手渡した。
小沢氏は「これで決める。(連立参加で)私が党内をまとめます」と明言。首相が「大丈夫ですか」と問いかけると、小沢氏は「絶対にまとめます」と重ねて強調した。
そもそも、10月30日の最初の党首会談を持ちかけたのも小沢氏の側だった。
打診は10月半ば。30日の会談では、2日の再会談を確認するにあたり、31日の国会の党首討論をどうするかが話題になり、首相は予定通り行うことを主張したが、小沢氏は難色を示し、延期が決まった。
大連立:党首会談の全容判明 恒久法が政権論議の糸口に
毎日新聞(2007/11/4)
福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表との2回にわたる党首会談の全容が明らかになった。連立政権協議は両党間では決裂したが、両党首の間では基本的に一致していた。また自衛隊を海外に派遣する恒久法では国連決議を前提にすることで合意。連立政権ができた場合の閣僚ポストなどにも話題が及んでいた。
連立政権構想を強く主張してきたのは渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆だ。渡辺氏の持論に賛同したのが森喜朗元首相、青木幹雄前参院議員会長、中川秀直元幹事長ら。10月30日の「福田・小沢」第1回会談は森氏らに背中を押されるように実現した。
45分間の2人だけの協議では、90年以降の日本の安全保障政策について意見交換が行われた。
「湾岸戦争の時は大変でしたね」。首相は小沢氏に語りかけ、湾岸戦争時の130億ドル支援、96年の日米安保再定義、03年のイラク開戦などが話題になった。
福田氏は諄々(じゅんじゅん)と新テロ特措法案の意義、日米同盟の重要性を説いた。小沢氏は恒久法について、国連決議を前提にしなければ自衛隊派遣ができないという考え方をメモに書いて首相に渡した。首相は「国連決議だけの有無でいいのですか。相談させてほしい」と検討することを約束した。
恒久法が連立政権論議の糸口になった。そして話題は閣僚人事まで発展していった。連立政権ができた場合、民主党に振り分けられる財務相など数々のポスト名までが飛び交った。当初は政策協議を念頭にしていた首相も「連立政権協議をして、まとめられるのならそれでもいい」という考えに傾いていった。
2日の第2回目の会談。恒久法に関する国連決議原則について、首相は「これでいいですよ」と返答。小沢氏も「じゃあ、これで(民主)党内を説得しますから」と約束した。
そして小沢氏は「連立協議をするなら、国会を閉じなくてはいけない」と提案。連立政権協議の中で新テロ特措法案を話し合う考えを示し、首相は小沢氏は同法案に賛成する腹だと受けとめた。
首相からの連立政権提案を持ち帰る際、小沢氏は「決めてきます」と告げた。この言葉で首相は連立政権協議が始まると大いに期待した。
小沢氏は役員会で、恒久法の国連原則に首相が応じたことを報告したが政権協議そのものへの反対論にかき消された。
与党関係者によると、首相との会談で小沢氏は「総理、あなたから連立をもちかけたことにしてもらえませんか」と切り出し、首相は「その方が都合がいいのなら、それで結構ですよ」と即答した。このように政界には連立政権に関する「小沢首謀説」が流れている。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は3日、京都府内の講演で「小沢代表が大連立を持ちかけた事実はない。代表がうそをつくはずがない。自民党の情報操作だ」と反発した。