薬物依存症治療共同体構想に賛同、友部病院を全国のモデルに
6月25日、井手よしひろ県議は同じ公明党の田村けい子県議らと共に、薬物依存症施設「茨城ダルク・今日一日ハウス」を訪れ、代表の岩井貴代仁さんより、ダルクの現状と薬物依存症への県の対応などについて意見を伺いました。これには、地元結城市の黒川充夫市議、下妻市の山中祐子市議が同行しました。
ダルクとは、Drug(薬物)、Addiction(病的依存)、Rehabilitation(リハビリテーション)、Center(センター)の頭文字を組み合わせた造語。覚醒剤、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から開放されるためのプログラムを持つ民間の薬物依存症リハビリ施設です。「今日一日ハウス」とは、「今日一日だけ薬を使うのをやめよう」というスローガンが元になっています。
岩井代表は自らも17年間にわたる覚醒剤の薬物依存経験があり、1992年7月に茨城ダルクを開設。全国53箇所展開するダルクのうち、岩井さんが関係したダルクは既に9箇所となりました。現在は、全国薬物依存症家族連合会事務局長も務めています。
現在の入寮者は30名。平均年齢は20歳後半。使用薬物は、シンナー、覚醒剤、アルコール、抗精神薬(病院で処方された薬)、大麻、市販薬(鎮咳剤)など様々です。障害者自立支援法の下のサーービスは提供せず、入寮費や食費は家族の負担や生活保護(公的扶助)によって賄われています。
茨城県桜川市真壁の公共保養施設「福祉センター・あまびき」では、月一回「茨城ダルク家族会」が開かれています。身内や知人に薬物依存者を抱える人たちが集まる自助グループで、薬物依存症者に振り回された崩壊寸前の家族が、本来の家族機能を回復できるようにする事、同じ悩みを持つ家族同士が互いに励まし合い、成長していく活動が行われています。
3000人に及ぶ薬物依存患者とのふれあいの中から迸る岩井代表のことばの迫力には終始圧倒されました。以下の岩井代表の話しのポイントを整理しておきます。
- 薬物依存への入り口はタバコ。入寮した約1000名の寮生にアンケート調査すると、そのほとんどが小学校4~5年生ごろからタバコに関心を示した。最近自動販売機で未成年が買えないようにする話があるが、家にタバコが置いてあったら何にもならない。まず最初は、親の吸い残しのタバコを吸うことから始まる。私は、子どもがタバコを吸わないようにするために「灰皿に水を入れる運動」を提唱してきた。
- 最近はやっているのが「ガス」。ライター・ボンド・制汗剤・卓上ガスボンベ、プロパンなど、身近にあり、これはつかまらないためにすごくはやっている。宮城県で爆発事故があった。中学生が「ガス」依存になっており、学校で指導されたが、マンションで吸引して爆発事故となった。学校でもやるのだから、もう依存症になっている。先生は、すぐに警察か病院に通報しなくてはいけなかった。教師が薬物依存について、余りにも無知である。
- 10代のシンナー依存は深刻である。成長期のシンナーは肉体的に深刻なダメージを与える。警察は、シンナーでは事件化しなくなってしまった。家庭や学校でも、シンナー依存を重要視していない。これは問題だ。
- 相談の窓口を広く告知するのが大事。「ダメ絶対に」との標語も結構だが、そこにはダルクの電話番号を入れてほしい。地域の相談窓口の充実が大切。特に民生委員・保護司・更生保護女性会がなってほしい。薬物をやったら一緒にダルクに行く、そのことをしっかりと覚えてもらいたい。単に教えるのではなく、一緒に動くということが大事ではないか。
- 薬物相談では、茨城方式を広めていきたい。つまり、相談窓口は「精神保健福祉センター・保健所」、解毒の場「県立友部病院」、回復の場「ダルク」というシステムが出来上がった。
- 県立友部病院の新築に伴って、空き病棟を活用した「薬物依存者退院支援施設」構想を実現したい。医療と福祉が統合された自助的回復活動の施設=治療共同体を、この茨城で創設する。県の積極的な支援が望まれる。
