1億4400万支払いで和解へ
東京新聞(2009年3月10日)
給与削減分請求訴訟 県社会福祉事業団、原告以外の84人にも
法的な理由なく給与を削減されたとして、知的障害者総合援護施設・県立あすなろの郷(水戸市)の職員と元職員が、経営主体の県社会福祉事業団(理事長・橋本昌知事)を相手取り、給与の削減分の支払いを求めた訴訟で、水戸地裁の勧告に基づいて、事業団が職員側に1億4400百万円を支払うことで、双方が和解を調整していることが9日、分かった。
事業団は原告に加わっていない職員にも和解金と同等の支払いをする方針で、和解関係費は総額2億2800万円になる。
県によると、事業団が給与を削減した背景には、事業団の職員給与を県職員に準ずるとした旧厚生省の通知が2002年に助言に緩和されたほか、県が05年度に事業団への県負担金を約14億円圧縮する方針を打ち出したことなどがある。
あすなろの郷の職員給与について労使交渉がまとまらないまま、事業団は06年度から10年度までの間に平均16%の給与削減に踏み切った。このため、職員ら177人が06年12月、提訴していた。
事業団は原告の支払請求額が当初の約2億円から約5億2000万円に年々増えていることなどから、うち一定額を支払うことで和解する方針を固めた。
原告の職員と元職員177人に1億4400万円を支払うほか、原告に加わっていない職員84人にも同条件で5800万円を支払うなど、和解関係費は2億2800万円となる。うち県費を財源とする5200万円の補正予算案が県議会で可決されれば、年度内の和解を目指す。
3月10日、県議会保健福祉常任員会が開かれ、県障害福祉課より平成20年度の補正予算に、「知的障害者総合援護施設・県立あすなろの郷」の職員(元職員)との給与削減分の支払いを求めた訴訟和解のための予算について質疑応答が行われました。井手よしひろ県議がこの問題を取り上げました。
あすなろの郷はもともと県立施設として建設され、その職員も県職員と同程度の給与が支給されて来ました。
しかし、職員の高齢化も進み、県の他の部門との人事の交流もほとんどなかったため、その結果、施設運営の中で人件費の割合が非常に高くなってしまっています。ちなみに決算が確定いしている平成19年度の数値では、指定管理料の3分の2を占めるに至っています。
こうした経営状況の中で、平成17年度の包括外部監査では職員給与の見直しが指摘され、それを受け、平成18年度に給与の改定が行われました。それは、18年度から22年度年度までの5年間で、平均16%の大幅な給与カットを行いました。これは、50歳の主任クラスの場合、年収743万円から615万円に128万円もの給与引き下げとなるものです。
この大幅給与カットには、組合の理解を得ることができず、組合員ら177人が平成18年年12月に裁判を起こしていました。
昨年秋、裁判所から双方に和解の方向性が示され、3月までに指定管理者の更新時期が迫っていることもあり、県側も予算措置を行うことになったものです。
和解によって、50歳の主任クラスの場合、年収743万円から615万円に下げられた給与が635万円に20万円引き上げられます。この4年間分が一括して、原告だけではなく、すべての職員に支払われます。
あすなろの郷に関しては、平成20年度の包括外部監査で、退職金の引当を指定管理料から支出することに対して疑義が示されています。35年勤務の平均的な退職金額は1852万円に達し、民間の水準を6.4%上回っています。高額な給与をベースとして大量の退職者が続く平成29年度まで、人件費負担があすなろの郷の経営を大きく圧迫することは避けられません。