公立病院の「合併プラン」策定へ
茨城新聞(2009/3/6)
県が「再編・ネットワーク化構想」
県や市町村が開設する公立病院の改革に関し、県が「再編・ネットワーク化構想」の概要をまとめたことが5日、分かった。県内の市町村立7病院のうち北茨城市立総合病院と筑西市民病院について、近隣の公立、公的病院との統合の必要性を打ち出したのが柱で、今月中に公表される。
「平成の大合併」で県が市町村合併パターンを示したのと同様、同構想は事実上の「病院合併パターン」との見方もある。市町村は医師不足に加え、赤字運営にも苦しんでおり、県は関係機関を仲立ちし、病院や診療科目の集約化、病院のサテライト化(診療所化)などを大胆に進めることで医療の質を維持したい考えだ。
構想案によると、北茨城市立総合病院は、JA県厚生連が運営する高萩協同病院(高萩市)と再編、統合の検討が必要とした。同病院は県最北端の総合病院として、救急をはじめ小児科、産科など医師が減少している分野の医療を支えている。しかし、建物は老朽化し市が建て替えを検討している。
北茨城市など県北東地域では、中核的な役割を担う日立製作所日立総合病院(日立市)に患者が集中。同病院の負担軽減を図るためにも、北茨城、高萩両市内で病院再編を図り、機能強化する必要があると方向付けた。
一方、筑西市民病院については、同市と桜川市が運営する県西総合病院(桜川市)、民間病院との再編、統合を検討すべきとしている。橋本昌知事は昨年、両病院と協和中央病院(筑西市)の合併の必要性を示唆しており、民間病院は協和中央病院を想定しているとみられる。
筑西市民病院は慢性的な医師不足で診療科が徐々に縮小し、昨年一月、稼働病床数を百七十三床から六十床に減らして運営。来年四月に民間移譲する方針が打ち出されている。
再編の実効性を挙げるには医師確保が大前提となるが、公立病院の診療体制は大学病院からの医師派遣に頼っており、これまでは派遣大学の系列の違いなどが再編のネックとなってきた。同構想では関係者の調整を図る場として、市町村や関係団体などからなる新たな組織の設置が必要としている。
総務省は二〇〇七年十二月策定の「公立病院改革ガイドライン」に基づき、各都道府県には「再編・ネットワーク化」の計画(構想)を、公立病院には病院ごとの「改革プラン」をそれぞれ策定するよう求めている。期限は三月末。同構想をどう扱うかは各自治体の判断にゆだねられる。
県立および市町村立の病院を経営している地方公共団体は、総務省の「公立病院改革ガイドライン」に沿って、3月末日までに「公立病院改革プラン」を策定することになっています。この改革プランでは、1.経営の効率化、2.再編・ネットワーク化、3.経営形態の見直しの3つの視点から公立病院改革を進めていくことになっています。
県は、特に2.の再編・ネットワーク化を進める観点から、積極的に改革プラン作成に携わることが求められています。
ただし、今回の県の「再編・ネットワーク化構想」は、その曖昧な記述や位置づけが原因となって、県民に誤った情報を提供する危険性があると危惧するものです。県の構想が市町村それ自体の改革プラントとの整合性が図られていません。さらに、その表現が玉虫色で、具体的構想のイメージが読み手によって、勝手に想像できてしまいます。
その端的な例が、「再編・ネットワーク化」という言葉自体が、「合併」を意味しないと言うことを理解しなくてはなりません。
したがって、茨城新聞のような間違ったメッセージが伝わってしまいます。例えば、県内の市町村立7病院のうち北茨城市立総合病院と筑西市民病院について、近隣の公立、公的病院との統合の必要性を打ち出したのが柱で」、との表現は明らかの事実誤認です。北茨城市立総合病院は、現在、北茨城市で建て替えの検討が進められており、「北茨城市立総合病院は、JA県厚生連が運営する高萩協同病院(高萩市)と再編、統合の検討が必要とした」との表現が、あたかも両病院の合併統合など示唆した内容になっていますが、そのような事実はありません。両病院は地域の核となる病院として、たとえば、協同病院では小児科をより充実させ、北茨城市立病院では産婦人科診療を充実させようといった診療科目ごとの連携や医師、看護士などのマンパワーの有効活用を提案したものと見るのが正しいと思います。
したがって、「『平成の大合併』で県が市町村合併パターンを示したのと同様、同構想は事実上の「病院合併パターン」との見方もある」との、書き方は明らかに県の「再編・ネットワーク化構想」の主旨を歪曲するものといえます。
そもそも、この構想自体が設置市町村の意向を十分に汲んだものとは言い難く、このような、考えを病院設置者である市町村は納得できるはずがありません。
3月10日の県議会保健福祉委員会では、井手よしひろ県議を含む3人の委員から、この「再編・ネットワーク化構想」について、厳しい意見が続出しました。これに対して、山口やちゑ保健福祉部長は「(市町村の構想がまとめる前に)もっと早く示せば良かったが、あくまでも市町村が参考にしてもらうための一つの材料。以前に県が示した市町村合併パターンでも、一部はパターン通りにならなかった」と釈明しました。
(この記事は、2009/3/9に掲載いたしましたが、3/10の県議会保健福祉委員会の議論を加味して3/10に一部加筆・訂正いたしました)
なお、新聞報道による誤解を避けるために、構想の概要を追記に掲載いたします。
1.構想策定の経緯等
公立病院(県立病院及び市町村立病院)を設置している地方公共団体は、総務省の「公立病院改革ガイドライン」に沿って、今年度中に公立病院改革プラン(以下「改革プラン」という。)を策定することになっている。
この改革プランでは、?経営の効率化、?再編・ネットワーク化、?経営形態の見直しの3つの視点で公立病院改革を進めることになっており、このうち、県は、再編・ネットワーク化の検討にあたり主体的に参画することが求められている。
県では、第5次保健医療計画(H20~24年度)との整合性を図りつつ、公立病院の再編・ネットワーク化の方向性について、茨城県医療改革推進本部(本部長:川俣副知事)において検討し、「公立病院の再編・ネットワーク化構想」を策定した。
2.構想の概要
(1)公立病院の再編・ネットワーク化構想の策定にあたって
・地域住民の安心・安全を確保するためのセーフティーネットとしての医療提供体制をどう構築し、その中で公立病院の役割が何であるかを広域的な視点から議論することが求められている。
・茨城県医療改革推進本部は、公立病院の設置者が公立病院のあり方について住民や医療関係者を含め幅広い議論を行うために「公立病院の再編・ネットワーク化構想」をまとめた。
(2)この構想の基本的な考え方
・公立病院の再編・ネットワーク化を図るためには、第5次保健医療計画で定めた4疾病5事業の医療提供体制に十分留意して進めなければならない。
・公立病院を設置する地方公共団体は、ガバナンス(統治能力)を発揮して、住民の目線に立ち、病院の存在意義や役割を考える必要がある。
・県は、県民に等しく安定した医療サービスを提供するため、公立病院の再編・ネットワーク化の推進について、各地方公共団体とともに積極的に取り組む。
(3)再編・ネットワーク化の基本的なパターン
公立病院の財政健全化及び地域格差を是正して、安定した公的サービスを提供するためには、下記のような公立病院の基本的な再編・ネットワーク化のパターンを検討する必要がある。
パターン | 方法等 |
機能分担及び連携(ネットワーク化) | 病院間による診療科の分担・連携 病状期による機能分担 |
機能再編・統合 | 病院の再編・統合 基幹病院・サテライト方式への再編 |
機能の見直し | 再編・統合後の診療科(医療機能)の見直し |
(4)再編・ネットワーク化の具体的な方向性
?県立中央病院,県立友部病院,県立こども病院(茨城県)
・県立3病院については、政策医療を担う病院としての役割を最大限発揮させるため、県立3病院の将来一体化した診療のあり方についての展望も視野に入れつつ、病院経営の健全化が必要である。
・水戸地域で課題となっている二次救急医療体制について、救急患者の最終的な受け皿となるコア的機能を持つ病院としての役割を検討しつつ、救急に実績のある病院を中心に連携を深め、人材育成も含めより機能する救急医療体制づくりに貢献することが必要である。
?笠間市立病院(笠間市)
・経営状況を十分考慮し、在宅医療を支援する高齢者医療の後方支援病院としての機能を担うとともに、県立中央病院との連携(急性期を過ぎた回復期・亜急性期患者の受け入れなど)や経営形態の見直しが必要である。
?小美玉市医療センター(小美玉市)
・医療資源が限られている小美玉市の救急医療の実施など政策医療への貢献が必要である。
?北茨城市立総合病院(北茨城市)
・日製日立総合病院の負担軽減を図るためにも、北茨城及び高萩両市のエリアをカバーできる医療機能を整備することが必要である。
・老朽化している病院の建て替えにあたっては、規模の見直しとともに県北医療センター高萩協同病院との再編・統合を検討することが必要である。また、経営形態の見直しも必要である。
?村立東海病院(東海村)
・地域住民が求める身近な医療機関としての機能充実を図るとともに、中核病院との連携も併せて検討していく必要がある。
?つくば市立病院(つくば市)
・医療機能が充実した医療圏にあって、公立病院として他の病院でカバーできない機能を兄いだす必要がある。また、経営形態の見直しも必要である。
?筑西市民病院(筑西市)
・これまでの筑西市や筑西市議会での検討結果等を踏まえ,経営形態の見直しを行うとともに,県西総合病院や民間病院との再編・統合も検討する必要がある。
?県西総合病院(県西総合病院組合(桜川市,筑西市))
・筑西・下妻医療圏では、地域医療が担える中核病院の整備が必要であり、筑西市民病院や民間病院との再編・統合等を含め、早急に検討する必要がある。
・また、県内で唯一臨床研修病院がない医療圏であり、医科大学との連携等による臨床教育体制を視野に入れた中核病院の整備が必要である。
・医師や医療機能の確保を図るため、引き続き、県外の中核病院等とのネットワークづくりも重要である。
日立市民です。市は日製病院に頼りすぎていたのでは?と今更ながら感じます。
私の妻は里帰り出産のため診察のみ日製病院にお世話になりましたが、日立が地元なのにわざわざ他市でお産をしなければならない妊婦さんも多いと思います。
今から病院を設立というのは無理な話ですが、日製病院の産婦人科の健診出産部門を市に移管して間借りする形で経営をするとか、日立市出身の医学部生に奨学金を創設して、一定時限の市内勤務をお願いするとか、あらゆる方法で改善して頂きたいと思います。
井手議員には、党や議会を通して、地方医療の現実にこれまで以上に取り組んで頂きたいと思います。