

言うまでもなく民主主義では政策決定までの十分な議論と、手続きの透明化が重要です。政権が代わったとはいえ、国民から見れば政府は政府です。その政府が方針転換するのであれば、転換に至る理由をまずは関係者、さらに国民に十分に説明し、理解を得るべきです。
新政権の政権運営の特徴は3つあると思います。その第一は「マニフェスト至上主義」です。9月17日、長妻昭厚労大臣は職員への訓示の際、民主党のマニフェストを高く掲げながら、「このマニフェストは、国民と新しい政府との契約書、あるいは命令書」と語り、職員は「このマニフェストを全員胸ポケットに入れておけ」と語りました。この映像にはゾッとさせられました。多くの国民は、政権交代という民主党の主張には賛意を示しました。しかし、それは民主党のマニフェストを無条件で承認したわけではありません。国民は民主党マニフェストに対し、白紙委任はしていません。
本来、この時期、民主党に求められることは、官僚に対しても、地方自治体に対しても、そして何よりも国民に対して、自らのマニフェストの正当性を説明し、納得させることです。それなしに、水戸黄門の印籠のごとく、マニフェストをかざし、問答無用で政策を進めようとする姿は、正に本末転倒の姿です。
二つには、余りにも拙速な政権運営です。鳩山総理は、温室効果ガス25%削減を国際公約として、国連や各国首脳との会談の場で公表しました。確かにその国際公約は野心的なものであり、ヨーロッパを中心とする国々から賞賛を受けたことも事実です。しかし、国内の産業界や地方自治体などの同意なしに、どのようにして具体的に削減を進めていくのでしょうか。万が一、国民に過度の負担が掛かった場合、国際公約だからといって、その負担を国民に強要するのでしょうか。その他、八ッ場ダム工事中止にしても、長寿医療制度の廃止、障がい者自立支援法の廃止にしても、制度を廃止したその後の代替え案の提示もないままの発表に、現場を預かる地方自治体の担当者は茫然自失状態と言っても過言ではありません。
第三に、政治の目的が全く見失われてしまっていることです。政治は国民のためにあるという目的を、現政権はすでに忘れています。総選挙以来、井手よしひろ県議は、県内の様々な方、約300人と語り合ってきました。そこで聞かれた県民の声は、「高速道路を無料にしてくれ」とか「子ども手当て2万6000円がほしい」とか「高校の授業料をタダにしろ」とかいう意見は誰ひとりからも聞かれませでした。「景気を良くしてほしい」「明日の仕事の場を確保してほしい」「安心して子供を産める病院を確保してほしい」との切実な声が、生活の現場から上がる国民の率直な声なでした。こうした国民の声に、民主党新政権は耳を閉ざしていると言わざるを得ません。
こうした視点から、鳩山新政権がスタートしてから今日までの、政権運営について、橋本知事はどのような印象を持っているのか、その所見を質しました。
橋本知事はこうした民主党政権について、「政権発足後すぐに、大型公共事業の中止・凍結等の大きな方針転換が行われましたが、その際、中止の判断に至った理由や代替案等の説明が一切ないまま結論を押しつけるという、初めに結論ありきの進め方には、関係自治体や住民は大変困惑しているところであります。また、マニフェストに盛り込まれている政策の財源を生み出すために、経済対策として措置された補正予算の一部を一方的に執行停止するという、やや強引な進め方に対しても、地方側としては違和感を覚えております。さらに、政治主導とは言え、政務三役だけが集まって全てを決定しているため、事務方にはほとんど何を聞いても分からない状況が続立ていることは異常であり、一日も早く政と官が協力し合って、業務がスムーズに進むようになり、中央政府としての力を十分に発揮できる状祝になることを期待しているところです」と、所見を述べました。