被災150世帯の生活保護停止 補償・義援金を収入認定
共同通信(2011/6/17)
福島第1原発事故による東京電力からの仮払い補償金や震災義援金を受け取った福島県南相馬市の約150世帯が、6月に入って生活保護を打ち切られていたことが16日、同市への取材で分かった。
南相馬市によると、各世帯が受け取った額や用途を調査。生活必需品などの購入額を差し引いても、6カ月以上生活できると判断した世帯は支給を打ち切った。「厚生労働省の指針に従った」としている。
同県いわき市も6月、同様に2世帯の生活保護を打ち切った。
厚労省は5月、仮払い補償金や義援金について、生活再建に充てる額を超えた場合は収入と認めるよう各都道府県に指針を示していた。

その後、いわき市でも2世帯が打ち切られ、川俣町では2世帯が支給を停止されていることも判明しました。
国の基準では、義援金や賠償金は収入として認定されるが、住宅補修や生活必需品購入などの自立更生に必要な費用を申告すれば、収入から控除されることになっています。南相馬市は各世帯が受け取った賠償金などの額を調査し、自立更生費との差額分で6カ月間生活できると判断した世帯への支給を打ち切りました。
震災前、南相馬市の受給世帯は約400世帯で、廃止世帯はその約4割に当たります。受給世帯のうち、賠償金などの対象は約320世帯あり、まだ収入などを確認していない世帯もあるため、市は生活保護を打ち切る世帯は増える見込みです。
南相馬市の担当者は「今後、生活費がなくなった場合、再度、生活保護を申請することもできる」と説明し、「国の基準に従った対応であり、問題はない」と、地元紙のインタビューに答えています。
賠償金や弔慰金、義援金、被災者生活債権支援金などについて、財務省は「非課税扱い」にすることが決定しています。しかし、厚労省は、これらのこれらの支援金から生活必需品を購入した金額を差し引いた額については、「収入」として認定するとしています。
これでは、例えば、被災者生活再建支援法の基礎支援金100万円を受給したとしても、そのことによって、年間約100万円の生活保護費がカットされてしまえば、基礎支援金は何の意味もなくなってしまうということになります。
そもそも、平成19年の被災者生活債権支援法の大改正によって、それまで義務付けられていた購入した生活必需品の報告や領収書の添付等々の被災者にとっては大変煩わしい手続きは一切なくして、見舞金である以上なにに使ってもらっても構わないという観点から、支援金の渡し切り制度が実現したわけです。
その被災者の立場に立った法改正の主旨とは全くかけ離れているのが、生活保護行政における厚労省の態度です。
何としても被災者が1日も早く生活を再建できるよう、生活保護の考え方を改めるよう、国会での議論を進めてもらいたいと要望します。