茨城県議会3月議会では、現在、定期点検中の東海第2発電所の再稼働の問題が大きな論点の一つとして、クローズアップされています。茨城県の橋本昌知事はこれまで、原子力政策や東海第二原発の再稼働について慎重な姿勢を見せつつも、「国の原子力発電の指針が示されておらず、東海原発と女川原発には国から再稼働の要請がない」として、自らの考えをはっきりと示していませんでした。
議論のきっかけは、井手よしひろ県議の公明党代表質問です。井手県議の質問に答えて、橋本昌知事は、東海第2発電所で深刻な原発事故が発生した場合の避難について、「県内のバスを総動員しても 1回に24万人しか搬送できない」との試算を示しました。30キロ圏内の自治体の総人口は106万人で、知事は「一斉に避難させることは不可能」と、避難計画の策定が不可能であることを明らかにしました。これは、避難計画が立案できない中での再稼働は想定できないとの姿勢の現れとして、注目されました。
また井手県議は、原発の稼働は原則40年と国が示したことを受け、33年経過した東海第2発電所は、たとえ再稼働させたとしても稼働期間が残り少ないとして、ポスト原発の将来像を知事に質しました。橋本知事は「これまでに蓄積した村の施設や優秀な研究者を生かし、つくば市とも連携して世界最大の巨大加速器を備えたスイスの欧州合同原子核研究所のような科学拠点都市として発展することを期待する」と述べました。
日本で最初に原子の灯がともった茨城県の知事が、原子力発電所の廃炉を前提に、ポスト原発の姿に言及した答弁は初めてです。この点も高く評価されました。
翌日6日の一般質問では、自民党とみんなの党の議員が、東海第2発電所の再稼働問題に触れました。
自民党の議員は、「原発事故がありうるとの前提にたてば、東海第二原発は廃炉にすべき」と自民会派としては、初めて『廃炉』を表明。知事に対して、旛色を鮮明にするよう迫りました。続いて登壇したみんなの党の議員も、橋本知事の姿勢を「国待ち」と批判。「国から求められていないという理由で議論しないのはリーダーシップに欠ける」と、知事の姿勢を批判しました。
これに対しては、橋本知事は「全て再稼働、全て廃炉のどちらも現実的ではない。安全が担保され、住民の納得が得られれば再稼働し、それ以外は再稼働しない。あえて言えば減原発というスタンス」と答えました。「(原発を)ゼロまで持っていってしまう脱原発依存とは違う」と自らの立場を説明しました。