3月9日、井手よしひろ県議は保健福祉委員会の審議に臨み、県立中央病院内に整備されている緊急被ばく医療施設の活用について質問しました。
放射線による被ばくから住民の命を守るための拠点(緊急被ばく医療施設)は、茨城県内に2ヶ所整備されています。
茨城県内には東海第2発電所など、原子力関係の事業所が21カ所もあります。被ばく事故が起こる潜在的リスクは非常に高いのが現状です。
このような状況で平成11年9月30日に、東海村のJCOで発生した臨界事故は、我が国で初めて周辺住民が避難した過去最悪の事故でした。その当時、県の被ばく医療対応施設としては国立水戸病院(国立病院機構水戸医療センター)に整備された「茨城県原子力医療センター」のみであり、被ばくされた人はそちらに搬送されました。この事故をきっかけに、原子力災害時の緊急医療体制強化の一環として、県立中央病院内にホールボディーカウンタ(以下WBC)を2基を備える「茨城県放射線検査センター」が新たに整備されることになりました。
「茨城県緊急被ばく医療活動・健康影響調査マニュアル」では救護所等の初期被ばく医療施設において、さらに高度の診断・医療が必要と判断された被災者を受け入れる二次被ばく医療を担う機関として、上記2施設が位置づけられています。
茨城県放射線検査センター
茨城県放射線検査センターは、茨城県立中央病院の救急外来玄関前に鉄筋コンクリート造り平屋建て、160m2の施設として平成13年3月に竣工、9月より運用が開始されました。その目的は原子力災害時の二次被ばく医療施設として、放射線測定、二次除染、応急処置を行うこと、ならびにWBCによる内部被ばくおよび中性子線等の外部被ばくの線量測定のために使用することを想定しています。
設備としては、除染室には専用の排水・貯水設備をもった立式シャワー2基、ベッド式シャワー1基、および頭部除染用シンク2基を備え、測定装置としてはWBC2基(スクリーニング用+精密測定用)、低バックグラウンド自動分析装置、ハンドフットクロースモニタを整備しています。
さらに待合室のスペースは、平常時には被ばく医療研修のための講義室として利用できるようになっています。また、各種サーベイメータが県内の各保健所に整備されており、有事の際には測定スタッフがそれらを携帯して集合することになっています。
これら設備の管理運営にあたっては、平常時の管理は茨城県保健予防課が担当し、県立中央病院が協力する形になっています。原子力災害時には県立中央病院が組織する医療救護班が運営することになっています。二次被ばく医療施設である水戸医療センターの原子力医療センターと県立中央病院の茨城県放射線検査センターの役割分担としては、前者には救急救命センターが併設されていること、後者には2種類のWBCが備わっていることから、基本的には救命措置が必要な被災者の受け入れが前者に、汚染状況の評価が必要な人を多く受け入れることが後者に求められています。したがって、特に被ばく量測定に関しては、有事に際し外部からのスタッフが多数参加することが想定されています。
今回の福島第1原発事故を受けて、大規模な被災を受けた県立中央病院でしたが、被ばく患者の受け入れの準備態勢を整えました。福島からの避難者の被ばくスクリーニングを行うために、2名の職員を派遣しました。実際に、被ばくしたした方の受け入れを行った実績はありませんでした。
一方、実際に被災を受けた状況でセンターの運営を見てみると、2台あるWBCが非常用電源に接続されていなかったことや、除染を行う温水が供給できなことが判明し、震災後緊急の改修を行ったところです。
井手県議は、この2台のWBCを任意の放射線影響検査に活用できないか、県に検討を要望しています。設備自体は県立中央病院に置かれていますが、実際の運営は県保健予防課が所管しており、難しい課題もあるようです。