4月4日、東海村の村上達也村長は、日本原子力発電東海第2発電所について、枝野幸男経済産業相と面会。「私は福島原発事故発生以後、村民の命そして故里を守るためには、東海第二原発と今後どのように付き合い対処すべきかを考え続けてまいりましたが、その結論は言うまでもなく、福島の二の舞は絶対に避けなければならないということであります」との内容の『意見・問題提起』文書を直接提出しました。
『意見・問題提起』では、「日本原電は津波対策、電源確保対策等の強化を図っています。それ自体は評価できますが、根本的に原発事故を防止するにはそれでは十分とは思われません。問題は、政府や電力業界の考え方や姿勢にあるのではないかと思量されます。これが改革されない以上、私たち村民はおろか、周辺自治体の住民の安全は確保されないとの結論に至りました」と指摘し、「東海第二原発は永久停止、廃炉にしてもらいたい」と提言しています。
その上で、・「脱原発依存」政策の行程表、そして廃炉基準を早急に明示願いたい。・「脱原発依存」政策の推進のためには、エネルギー政策の中での原子力の位置付けを「基幹電源」から「補助電源」へ変更すべきである。・責任の所在が不透明な国策民営の原発政策から、国が法律上責任を持つ事業体制に改革するため、日本原電(株)の再構築が必要。・JAEA核燃料サイクル工学研には高レベル放射性廃液が約400m3 あり、東海第二原発の建屋内の燃料貯蔵プールには2,000体の使用済核燃料が保管されている。これらの安全対策に万全を期すことは勿論、ガラス固化や乾式キャスクへの収納を早期に進めるとともに、これらの最終的な処理処分の方針を明らかにしてもらいたい。・東海村が構想している「原子力センター構想(仮称)」へのご理解とご支援をお願いしたい。など、具体的な7項目の提言を行いました。
地元紙「茨城新聞」の報道によると、村上村長は要望項目について「枝野経産相からは、具体的回答はなかった。ただ、『関心を持っているので今後とも話し合いをしたい』とのことだった」と説明しています。
井手よしひろ県議は、村上村長の提言について全面的に賛成です。ただ、“廃炉”に至る過程における雇用の確保や村の活性化策などについては、丁寧に住民に説明する必要があると思います。東海村の村民が多くが“廃炉”に慎重なのは、自らの生活に不安が残るからです。この不安を払拭することも首長の重要な役目だと考えます。
なお、4日、東海村役場よりご提供いただいた『意見・問題提起』の全文を以下にようにご紹介します。
政権の中枢にあって日夜国家国民のためにお働き頂きありがとうございます。そのようなご多忙極まる中、時間を割いて頂き真に感謝にたえません。
さて、私は福島原発事故発生以後、村民の命そして故里を守るためには、東海第二原発と今後どのように付き合い対処すべきかを考え続けてまいりましたが、その結論は言うまでもなく、福島の二の舞は絶対に避けなければならないということであります。
日本原電は津波対策、電源確保対策等の強化を図っています。それ自体は評価できますが、根本的に原発事故を防止するにはそれでは十分とは思われません。問題は、政府や電力業界の考え方や姿勢にあるのではないかと思量されます。これが改革されない以上、私たち村民はおろか、周辺自治体の住民の安全は確保されないとの結論に至りました。
そこで、私の意見・問題提起を以下のとおりまとめましたので、ご検討のほどお願いいたします。
平成24年4月4日
経済産業大臣 枝野 幸男 殿
Ⅰ.東海第二原発は永久停止、廃炉にしてもらいたい。
- 日本原電(株)の東海第二原発は、全国の原発の中で最も人口密集地帯にあり、しかも茨城県の産業、行政の中心地にあり、福島の如き事故が生起した場合の被害は天文学的。
- 30Km圏100万人の避難は現実的に困難。
CF:茨城県知事の県議会答弁「県内にあるバスを総動員しても1回に24万人しか搬送できないため、一斉に避難させるのは不可能」 - 小さな日本原電(株)の賠償能力にいたってはないに等しい。
- 茨城県沖を震源とする大地震・大津波の発生可能性の指摘あり。
- しかも運転開始後34年目の老朽原発。
以上は、東海第二原発と同じく1978年に運転を開始し、既に廃炉を決めた浜岡2号炉と同じような状況。 - 3/23現在、茨城県内11の市町議会と5人の首長が廃炉を要求している。
Ⅱ.「脱原発依存」政策の行程表、そして廃炉基準を早急に明示願いたい。
- 「原子力発電への依存度をできる限り低減させること」との国の基本方針を早急に具体化し、原発の数を漸減させる計画を明示していただきたい。
- その際、老朽化の度合いや立地条件(地震・津波などの自然条件、人口密集・社会経済の中心などの社会条件)を総合評価し、リスクが高く地域住民が容認できないものから廃炉すべきである。
- これらは、立地地域自治体にとっても重要関心であり、さもないと住民への説明、将来設計ができない。
- 廃炉によって、多くの立地地域が短期的には財政的に大きな影響を受けるので、緩和策として、過去の「旧産炭地振興臨時措置法」のような支援策を考えてはどうか。
Ⅲ.「脱原発依存」政策の推進のためには、エネルギー政策の中での原子力の位置付けを「基幹電源」から「補助電源」へ変更すべきである。
Ⅳ.責任の所在が不透明な国策民営の原発政策から、国が法律上責任を持つ事業体制に改革するため、日本原電(株)の再構築が必要。
- 「脱原発依存」や核燃料サイクルの凍結、そして何よりも原発のリスクの甚大さを考えれば、もはや、原発は通常の民間事業では成立し得ない。電力会社の都合にあわせた総括原価方式による国民へのコスト転嫁も、もはや許されない。
- 日本原電(株)は、原発のパイオニア企業として設立されたが、敦賀1号炉は42年を経過し廃炉は必至、3、4号炉の増設も困難。今の姿での存続は難しい。
- 原発の安全性を可能な限り高めつつ「脱原発依存」政策を遂行するため、国が原発経営に一定の関与をする法律を制定し、全国の原発の運転や廃炉、使用済燃料の貯蔵、放射性廃棄物の処理等を日本原電(新生「げんでん」)に集約してはどうか。
Ⅴ.JAEA核燃料サイクル工学研には高レベル放射性廃液が約400m3 あり、東海第二原発の建屋内の燃料貯蔵プールには2,000体の使用済核燃料が保管されている。これらの安全対策に万全を期すことは勿論、ガラス固化や乾式キャスクへの収納を早期に進めるとともに、これらの最終的な処理処分の方針を明らかにしてもらいたい。
Ⅵ.東京電力の解体、発送電・配電分離を早期に具体化することが、日本のエネルギー政策改革のキーポイントである。明確なご判断を願いたい。
- 東電の電気料金値上げ要求は、従来のままでは受け入れがたい。
Ⅶ.東海村が構想している「原子力センター構想(仮称)」へのご理解とご支援をお願いしたい。
- “東海村らしさ”(パイオニア、大事故を経験)を活かした、原子力に関するサイエンスと人づくり等の拠点として世界に貢献する「COE」を目指す。
- 原子力科学の新たな展開、原子力安全・福島貢献等の負の課題の解決の先導、これらを支える人材育成と国際的なまちづくりを進めていく。
以上