県警本部長は、改めて暴力団と対決姿勢を強調
県議会は“言論の府”です。多様な県民の声を代表して県議会議員が、様々な議論を交わすことは、大変重要なことです。
しかし、これも一般的な県民の感覚を外れて極論に走ると、非常に違和感があります。
12月6日の一般質問。取手市選出の細谷典男議員の質問で、「暴力団にも人権がある。県の暴力団排除条例は違憲である」との極めて異例な発言が飛び出しました。
細谷議員は、守谷市の松葉会事務所の問題にも触れ、「住民に不安を覚えさせる恐れ」や「粗野で乱暴な言動」は存在しないと言い切りました。
みずほ銀行が暴力団員への融資問題で社会的に大きな批判を受けている最中、県議会議事堂はシラケた雰囲気に包まれました。
暴力団の存在を容認するような発言は看過できません。県議会としては、最終日12月16日に、守谷市の住民から提出された「松葉会事務所の撤退に向けた支援を求める請願」を採決する予定です。暴力団排除の強い姿勢を示していきたいと思います。細谷県議には、発言の撤回を求めます。
なお、この県議会でのやりとりを報道したのは、読売新聞と茨城新聞。そして毎日新聞が小さく取り上げました。なぜか、朝日新聞が一言も取り上げなかったのにも不思議な思いを感じました。以下、読売新聞と茨城新聞の報道内容をご紹介します。
県議が一般質問で「暴力団排除条例は違憲」
読売新聞(2013/12/7)
県議会は6日、一般質問が行われた。守谷市大木の指定暴力団「松葉会」事務所の撤退を求める住民運動を巡り、細谷典男県議(無所属、取手市区)は、暴力団員が不当な規制で差別されているとして、「暴力団排除条例は違憲。撤廃すべきではないか」とただした。
県警本部長 改めて暴力団と対決姿勢
大平修・県警本部長は「暴力団は排除すべき対象。憲法違反にはあたらない」と答弁し、暴力団との対決姿勢を改めて示した。
守谷市の事務所周辺について、細谷県議は、暴力団対策法で禁止行為とされている「住民に不安を覚えさせる恐れ」や「粗野で乱暴な言動」は存在しないと主張。さらに、「事務所を構え、銀行口座を開き、余暇にゴルフという普通のことができない。生活手段すら奪われ、逆に社会不安や不測の事態を引き起こしかねない」と述べ、「法の下の平等を定めた憲法に違反する」と条例の撤廃を求めた。
これに対し、大平本部長は「条例は県民の安全と平穏の確保が目的で憲法に何ら違反しない。弱い立場にある労働者を食い物にしてきたのが暴力団。これまでも多数の市民を犠牲にしてきた。暴力団犯罪を徹底検挙し、排除活動を支援していく」と既定方針を強調した。
県警組織犯罪対策課によると、昨年末の県内の暴力団構成員・準構成員は約1400人(前年比約200人減)で、2009年以降、減少を続け、昨年の検挙人数も493人と前年比155人減。
だが、同課は、過去最多の被害額を更新し続けている振り込め詐欺などによる資金調達が進み、「犯罪の巧妙化と潜在化が進んでいる」とみている。
この日の論戦について、守谷市の事務所近くに住む男性は「発砲事件や抗争はいつ起きるかわからない。危険を未然に防ぐのが大事なはず」と反発。事務所を買い取る姿勢を明らかにしている守谷市の会田真一市長も「住民が事務所の存在そのものに脅威やストレスを感じていることが問題だ」と不快感を示した。
県は11年4月、暴力団排除条例を施行し、暴力団関係者との不動産取引や利益供与などを禁止。守谷市の住民らは今月2日、6万9547人の署名と共に、松葉会事務所の撤退に向けた支援を求める請願を県議会に提出、16日の県議会で採択の可否を決める。
橋本知事は議会終了後、「考え方は人それぞれだが、県警本部長の答えが一般的県民の意見という感じがする」と述べ、白田信夫議長は「あくまでも個人の考え。県議会としては条例にのっとって県民のために毅然(きぜん)と対応していく」と話した。
県暴力団排除条例/憲法違反に当たらず
茨城新聞(2013/12/7)
県暴力団排除条例は憲法違反の可能性があり、撤廃すべきではないか。
大平修県警本部長 同条例は2011年4月に施行され、同年10月までに47都道府県全てで同様の条例が施行された。県内でも地域の実情を踏まえ条例が今年4月までに全市町村で施行され、排除の気運は高まった。
憲法違反との指摘だが、同条例は暴力団の排除を推進し、県民の安全で平穏な生活の確保と社会経済の健全な発展に寄与することを目的に制定・施行され、憲法に何ら違反しない。弱い立場にある労働者を食い物にしてきたのが暴力団で、対立抗争や発砲事件を繰り返し、数多くの市民を犠牲にしてきたことだけを見ても、指摘は当たらないと考える。
【県議会記者席から】
〇「暴力団員というだけで一律に排除の対象とする暴力団排除条例は憲法違反の可能性があり、撤廃すべき」と主張した細谷典男氏(無所属)。「暴力団を容認するものではない」とした上で「暴力団対策法の改正などで済み、条例は不要」と持論を展開した。
「暴力団は排除すべき対象」とする大平修県警本部長との議論は平行線をたどり、「今後も質問する」と対決姿勢を示した。