7月23日、井手よしひろ県議は岡本三成衆議院議員(公明党・北関東比例ブロック)と共に笠間市福田のエコフロンティア笠間を訪れ、運営する茨城県環境保全事業団の経営状況やレベニュー債の償還状況などを現地調査しました。
県環境保全事業団は、茨城県の第三セクターです。1993年に県が約8億円を全額出資して設立。2005年に公共関与の廃棄物の最終処分場と焼却施設を併設した「エコフロンティアかさま」を開業しました。その建設費約246億円のうち約182億円は、国の政策投資銀行などからの借り入れで調達しました。
しかし、地元住民などの反対運動のために、10年間で事業を終了させるとの同意のもとに事業がスタートしたために、毎年約20億円もの過大な借入金返済が発生することになりました。そうした折、資源のリサイクル、ゴミの減量化などが功を奏し、最終処分されるゴミが集まりにくくなってきました。1993年度に約144万トンだった県内の産廃の最終処分量は、98年度約59万トン、2003年度約20万トンと、10年間で約7分の1に激減しています。
その結果、当初予定していた年間の売上げ目標の46億円は、半分から6割程度の約25億~30億円の間で推移するようになりました。毎年の施設のランニングコストが約15億円を要することもあり、毎年20億円にも上る借入金の返済が大きな負担となってきました。県は(1)民間金融機関からの借入金に関しては、茨城県が損失補償契約を締結、(2)返済原資に比して単年度の返済額が過大であることから、資金不足を茨城県からの短期貸付金で対応する──といった、いわば小手先の対応を繰り返してきました。このスキムでは、万一、事業団が破綻した場合は、その損失を県が県民の税金で補わなくてはなりません。
その後、茨城県は地元住民と粘り強い交渉を行い、10年の事業期間を30年程度に大幅延長することに同意を得ることが出来ました。県の損失補償に依存しない超長期資金を、調達する方法を模索しまました。当初は民間金融機関からの超長期資金調達を検討しましたが、償還20年以上の希望に各金融機関とも門前払いの状況でした。
井手県議が新たな資金調達の枠組みを提案、岡本(現衆議院議員)氏が日本初の「レベニュー債」を実現
このような状況下、2010年6月の県議会総務企画常任委員会で、井手県議が「レベニュー債」という全く新たな仕組みでの資金調達法を提案。県の財務担当部署は、その年の夏には、世界最大の投資銀行であるゴールドマン・サックス銀行と接触。将来の処分場の収益を新生信託銀行に信託して証券化して、優先して利益を受ける権利(優先受益権)をゴールドマンサックス社に譲渡して投資家に販売、約100億円を調達する内容で合意しました。償還期間24年以内で調達金利は2.51%と決まりました。
レベニュー債とは、上下水道や電力といった公益事業、病院、公営住宅、有料道路などの利用収入を元利返済に充てる債券で、米国では一般的な地方債となっています。
このゴールドマンサックス側の責任者が、この日、現地調査を行った岡本衆議院議員でした。茨城県のレベニュー債導入の取り組みは、内外の金融機関や専門家から高く評価されました。2011年5月、金融情報提供会社であるトムソン・ロイター・マーケッツ株式会社による「DealWatch Awards 2011(ディールウォッチ・アワード2011)」において、「Innovative Debt Deal of the Year」を受賞しました。
レベニュー債導入で財務体質が大幅好転、わずか3年での3分の2を償還
県環境保全事業団がレベニュー債を発行する最大のメリットは、従来の資金調達には民間銀行から借り入れていた約90億5000万円に、県の損失補償契約(返済が困難になった場合は、県民の税金で補填するという契約)がつけられていましたが、レベニュー債導入で損失補償を外すことができた点です。さらに、投資家が信託受益権を保有していることで、今後事業に無駄が生まれないような監視がされ、財政規律が高まったことです。
レベニュー債導入により、県環境保全事業団の財務内容が大幅に好転しました。毎年の返済金額は約4億円程度に圧縮されました。初年度である2011年度は、返済予定の約3億円に対して、震災による売上増も相まって、15億円も返済することが出来ました。
その後も経営は順調に推移し、12年度24億5千万円、13年度24億円と、この3年間で64億円余りを償還しました。2013年度末の残高は35億8千万円にまで圧縮できました。
この日現地調査を行い、財政健全化の状況を確認した岡本衆議院議員は「茨城県が発行したレベニュー債は、日本で初めての事例として高く評価されました。また、新たな経営のスキムが確立できたことで、収益が劇的に向上しています。今まで、いわばどんぶり勘定で行われていた地方自治体の事業に、グローバルスタンダードの金融ノウハウが導入を出来たことは大きな成果です」「今後は、この成功事例を他県にもどんどん紹介して欲しいし、最終処分条以外の事業にも展開して欲しいと思います」などと語りました。