井手よしひろ県議は、日立市の山側団地の活性化策として 「公共関与のコンビニエンスストア」の設置を提案しています。日立市の山側には、昭和40年代から50年代にかけて、大規模な戸建て住宅団地が次々と造成されました。北から要害団地、青葉台団地、堂平団地、平和台団地、中丸団地、塙山団地、金沢団地、台原団地、みかの原団地など、300~800世帯の住宅団地は、それ自体が自立したコミュニティを形成しています。
こうした山側の団地へのアクセスは一本または二本の肋骨方向の道路によって結ばれており、急な坂、狭い幅員と大規模災害や降雪の際は陸の狐島と化してしまいます。更に、団地造成当初は各団地の中心に日立製作所の関連の小売業者や生活協同組合の小売店舗が立地し、地域の生活を支えていました。しかし、車社会の発展やコンビニ、スーパーなどの進出により、団地内店舗は金沢団地内の生協直営店、台原団地内のコンビニ店舗だけになってしまいました。
いずれの団地も高齢化率が50%を超える状況となっており、車を運転できなくなった住民にとって買物の場の確保は深刻な問題です。車に高齢者が昼間、集い合える場の創出を重要です。できるだけ多くの機会を作り、自宅に閉じ込もりがちな高齢者の外出を促し、地域のコミュニティの中に生かしていただくことは、介護予防の大きな柱となります。介護の専門家などが集いの場にいれば、認知症の早期発見など、地域包括ケアサービスの拠点ともなります。年金や預金の引き出しや 預け入れなど金融の拠点郵便局の機能も地域の中心に、是非必要な施設です。更に、行政の窓口も必要です。住民票、印鑑証明の諸手続が出来る施設が大事です。
こうした時代の要請を考慮すると、各団地の中心にコンビニエンスストアの誘致が不可欠となります。ただし、民間事業者の商業ベースには乗らないと思われますので、「公共関与のコンビニ」という発想に至ります。
店舗施設・空調などの設備の整備は行政が行い、維持費、管理費の一部も負担します。小売店舗の運営は専門の業者に委託することやコミュニティビジネスとしてNPOやボランティア、地元自治会に委託します。金融機関や郵便局の機能は、関係機関との連係で設置します。高齢者の集うスペースは地域包括システムの一環として包括支援センターとの連係で、民間委託します。
こうした「公共関与のコンビニ」を地域コミュニティー組織(コミュニティ推進協力議会など)と連係して立上げることを検討すべきです。
埼玉県で「介護ローソン」が誕生
井手県議の提案する「公共コンビニ」の発想に近い取組みが、今年4月に埼玉県でスタートします。
さいたま市に拠点を置く「ウィズネット」は、埼玉、東京、神奈川に78のグループホーム、33の介護付有料老人ホームを展開する介護事業者です。認知症の高齢者約1600人をケアしています。
このウィズネットはコンビニ大手のローソンと協力して、今年4月3日に埼玉県川口市に「介護ローソン」 1号店をオープンさせます。コンビニの商圏は約350メートルといわれており、歩いて行ける場所に介護・福祉の拠点を整備しようとする野心的な取組みです。
「介護ローソン」には、売場と併設してサロンスペースが設置され、朝8:30から夕方5:30まで、ケアマネジャーや相談員が常駐します。ここで血圧を測ったり健康相談をしながら、認知病などの前兆をケアマネージャーが把握しようという試みです。運営するウィズネットの高橋行憲社長は「一ケ所で新鮮な食品や生活必需品が買えますから、一日のうち何度もコンビニを訪れるのが習慣となっている高齢者もたくさんいます。そのコンビーに介護拠点を併設すれば、自然な形で、介護・福祉対策を進めていけるのです。コンビニのまわりにハイキングコースを作り、一周するごとにロッピー(ローソン独自のポイントサービス)のポイントがもらえる。旅行にそのポイントが使える。そんな楽しみもこれからたくさん考え、「介護ローソン」でお年寄りに元気になってもらいたいと思います」と語っています。
埼玉県川口市の第1号店に続き、8月にはさいたま市大宮区に2号店がオープンします。今後3年間で、介護ローソンは30店舗まで拡大する予定です。
こうした新らたな挑戦をしっかりと見とどけながら、日立における「公共コンビニ」の構想を深化させていきたいと思います。(「介護ローソン」の情報は、月刊「潮」2015年4月号、柳川優さんのルポルタージュを参照させていただきました)