6月18日、茨城県議会は6月定例議会の最終日を迎え、議員提案により上程された「茨城県薬物の監用の防止に関する条例」を全会一致で可決しました。9月1日から完全施行されます。
この条例では、危険ドラッグなど規制対象薬物を「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。)を有し、かつ、人の身体に使用された場合に人の健康に被害が生ずると認められる物」と広く定義し、規制を加える特徴があります。(条例2条7項)
薬物濫用の防止に関し、県と県民の責務を明確にし、第10条では、監用またはそのおそれがあると認められるものを、知事が「知事指定薬物」として指定できることにしました。
そして、「知事指定薬物」は、販売、販売目的での所持・購入、譲り受け、使用などを一切を禁止しています(第12条)。
また、広告や使用する堤所の提供・あっせんも禁じています。(第12条)
広告の禁止にあたっては、第17条でインターネット上の広告を掲載したプロバイダーなどに対しても、削除要請できるとしました。
禁止行為を行った者に対しては警告を発し、従わない者に対しては中止命令をする事が出来る旨規定しました。さらに禁止行為を行った者に対する罰則は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科す事になりました。(第21条) これは、地方自治体が条例で認めることのできる、もっとも重い罰則となりました。
今回の条例の制定にあたっては、関東近県の地道府県がいち早く条例での規制を厳しくしており、茨城県では行政の対応が遅れたたために、規制の空白地帯になることを避けなくてはという、県議会議員の危機感が制定への議論の発端となっています。特に、いばらき自民党の政務調査会ではこの問題を重要視し、半年以上をかけて議論を積み重ねてきました。罰則を伴う厳しい条例であるため、関係者との意見調整や水戸地検との詳細な検討を重ねたと聞き及んでいます。
茨城県議会公明党も条例制定の取組みに全面的に協力し、今回の全会一位での条例可決につながりました。
2014年9月の公明党・田村けい子県議の一般質問
近年、危険ドラッグの乱用が、若い世代を中心に急速に広がっており、危険ドラッグに起因する事件・事故や健康被害等が深刻な社会問題になっています。本年6月、池袋で、危険ドラッグを吸った男が運転する車が暴走し、8人が死傷するという事故が発生し、国も対策に乗り出しています。
危険ドラッグは、覚醒剤や大麻と似た作用のある化学物質を植物片にまぶしたもので、合法ハーブやアロマなどと称して販売されており、使用すると意識障害やけいれんなどを起こし、最悪の場合は死に至るケースもあるといいます。店舗やインターネット上で販売され、県内にも店舗は1店舗、インターネット業者も2業者確認されており、簡単に入手できる環境となっています。
警察庁のまとめによると、危険ドラッグ関係の事件は昨年になって急増。摘発された人数は176人に上り、このうち交通事故を起こしたのは40人で、前年の19人から倍増しているといいます。
我が県においては、危険ドラッグに起因した交通事故の発生は現在のところないものの、吸引による健康被害が7月末で25件発生しており、うち6件6名が救急搬送されています。
国は、危険ドラッグの根絶に向け、化学構造が似た物質群を一括して規制する包括指定制度の導入や麻薬取締官の権限強化などの対策を進めています。
本年4月からは、指定薬物の所持・使用なども禁止となり、売る側だけでなく、買う側も処罰の対象になりました。これらを周知徹底し、購入・使用を防ぐ取り組みの強化が望まれます。
県においては、「茨城県薬物乱用防止五か年戦略」を策定し、総合的かつ効果的な対策を推進することを決定しています。販売店に対する立入指導の強化を図るとともに、薬物乱用防止の啓発活動こそが根本的な解決との認識に立ち、広報・啓発が必要です。
特に、危険ドラッグは若い世代を中心に乱用が広がっており、学校教育での意識啓発が重要と考えます。
2012年に行われた国立精神・神経医療研究センターの全国中学生調査によると、回答者約5万4000人中、危険ドラッグを入手できる可能性があると答えた割合が全体の15.6%に上り、実際の使用者も120人いたとの報告もあります。
教員向けの研修などを充実させ、子どもたちに正しい知識を浸透させることも重要です。
また、薬物は依存性が強く、再犯も多いのが特徴で、使用者の家族が相談しやすい体制を拡充するなど、薬物依存から抜け出す仕組みも強化しなければならないと考えます。
県は危険ドラッグ対策をどのように進めていくのか伺います。