11月28日、茨城県東海村の日本原子力発電(日本原電)東海第2発電所(東海第2原発)は、営業運転開始から38年を迎えました。東海第2原発は、国内初の出力100万キロワットを上回る沸騰水型の大型原発として、1978年11月28日に営業運転を開始しました。
東日本大震災では、5メートルを超す津波の被害を受け、原子炉の冷却に必要な3台の海水ポンプのうち、1台が水没して使えなくなりました。原子炉は地震の揺れで自動停止し、冷温停止の状況で安定しています。その後は一度も運転せず定期検査に入り、現在に至っています。津波があと数メートル高ければ、福島第1原発と同様の深刻な事態となったのではないかといわれています。
日本原電は、再稼働の前提となる原子力規制委員会による適合性審査を2014年5月に申請しました。停滞気味だった審査は本年度に入り開催頻度が増え、これまでに計35回開かれています。これまでに、原発ごとに想定する最大規模の津波高を17.1メートルとすることが了承され、地震・津波に関する審査は一つの山を越えました。
一方で、古い原発特有の課題となるケーブルの防火対策や、防潮堤を越えてくる津波に備えた対策など、設備関係の議論はあまり進んでおらず、合格までには相当な期間を要する見通しです。
さらに、安全対策がいつ完了するかも見通せない。津波対策でかさ上げする防潮堤は標高18~20メートルで総延長2キロ超。審査の見通しが立たなければ、これらの対策にも本格着手できないうえ、完成には年単位の時間がかかるといわれています。
と同時に、40年超え運転の是非も今後、大きな焦点として浮上します。東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年とされ、規制委が認めれば一度に限り最大20年間延長できることになっています。
日本原電の村松衛社長は「まずは審査が最優先」と延長申請は審査終了後に判断する考えを示しています。運転延長するには40年を迎える1~1年3カ月前までに規制委に申請する必要があります。東海第2原発では、来年(2017年)11月末が期限になります。
再稼働への「地元同意権」などを定めた安全協定については、東海村や水戸市などの立地・周辺市町村は被害が広範囲に及んだ福島の事故を踏まえ、日本原電に対して枠組み拡大を求めていますが、協議はほとんど進んでいません。
日本原電と地元自治体は「県や地元自治体に発電所の今後にかかる判断を求める時の前まで」に協定を見直すとする覚書を結んでいます。今後、規制委の審査の進展に合わせて見直し協議も本格化するとみられます。
ただ、再稼働の前提に自治体の同意が必要とすることには、法的な拘束力はありません。茨城県と東海村以外が協定を締結しても、どのような効力があるかは明確になっていません。
その上、自治体の避難計画づくりも難航しています。対象となる原発から半径30キロ圏の住民は全国最多の約96万人に上り、県外の受け入れ先市町村はまだ決まっていないのが現状です。要配慮者の支援体制に加え、大地震などとの複合災害を想定していない点など多くの課題が積み残されています。
11月24日の定例記者会見で橋本昌知事は、再稼働の是非について「原電から運転延長の考え方を何も聞いていない。当面は新規制基準への適合性審査が進められているので、その結果を待つ状況にある」と語りました。40年を超えての運転については「(規制委で)安全が確認されれば、あとは地元が納得するのかにかかってくる。廃炉にしているところもあり、必ずしも例外が多過ぎるわけではないという考えもできる」「前々から減原発、原発を徐々に減らしていくという方向で進めていくべきではないかと申し上げている。安全性が十分に保たれ、地元が納得するのであれば動かすことに絶対反対ということはない」と述べるにと留まりました。
東海第2原発は、再稼働させず廃炉に
東海第2原発稼動から38年。来年8月には東海村の村長選です。そして9月には県知事選があります。いよいよ廃炉か、20年運転延長かという重大な決断の時期を迎えようとしています。井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は、再稼働させずに廃炉という主張をこれからも貫いてまいります。
(写真は、日立市の南部久慈町の住宅街から撮影。東海第2原発までの距離はわずか4キロ余り。30キロ圏内に96万人もの県民が居住する)