4月22日、連合いばらき県北地協主催の第88回日立地区メーデーの集会が開催されました。井手よしひろ県議も来賓として出席しました。今回のメーデー宣言には、「長時間労働の撲滅 ディーセント・ワークの実現」という目新しいスローガンが登場しました。
「ディーセント・ワーク(decent work)」とは、働きがいのある人間らしい仕事と意訳されています。1999年の第87回ILO総会に提出された事務局長報告において初めて用いられ、ILOの活動の主目標と位置付けられました。
この言葉が使われ始めたバックボーンには、グローバル競争の加速化が大きな関わりを示しています。グローバル化は各国の経済成長を進める上で非常に重要な要素となり、実際多くの利益と発展をもたらしました。しかしその一方で、激しい経済競争のために働く人の権利の軽視や所得格差の拡大、失業率の増加など、働く人たちにとって深刻な問題を発生させています。
このような状況を改善するために、ILOは21世紀の新たな目標として「ディーセント・ワーク」を掲げたのです。
ILOは、「ディーセント・ワーク」 の具体的な意味・考え方を5つの項目にまとめています。
・公正なグローバル化
現在のグローバル化モデルは、人々が暮らす場所に十分な仕事を生み出していない。世界の成長を、特に若い男女に、より多くのディーセント・ワークの機会を提供するものに作りかえなければならない。
・貧困削減
雇用創出と貧困削減は不可欠に結びついている。仕事は貧困脱却への道であり、ILO憲章にも「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」と記されている。
・保障
仕事のあるコミュニティは平和に暮らせるところである。このことは、地域社会、国、国をこえた地域、世界というすべてのレベルに当てはまる。
・尊厳
労働は商品ではない。労働に対する費用は、人間の尊厳と家族の幸福の源となる仕事に対する対価を反映している。
・多様性
政策は、それぞれの国に特有の必要性に応じて策定されなければならない。あらゆる状況に適合する万能薬は存在しない。
また、以下のような戦略目標が掲げられています。
・全ての人が収入を得るのに十分な仕事があること。
・働く人が安全で健康的に働けるよう、社会的に保障されること。
・職場での問題を平和的に解決できるよう、社会対話が推進されること。
・働く人が不利な立場に置かれないよう、権利が保障されること 。
日本政府としては、「ディーセント・ワーク」の概念の普及に努めるとともに、様々な労働政策を推進することによりディーセント・ワークの実現に努めています。平成24年7月に閣議決定された「日本再生戦略」においてもディーセント・ワークの実現が盛り込まれています。
さらに、国は「ディーセント・ワーク」を次のような願望が集大成されたものと整理しています。
・働く機会があり、働きに応じた収入が得られること。
・働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること。
・家族の生活が安定しており、自己の鍛錬もできること。
・公正な扱い、男女平等な扱いをうけること。
また、政府部内の様々な議論の場において、仕事と生活の調和の重要性が、今日の我が国社会にとって最も緊要な課題の1つとして注目され、また、厚生労働省においても、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と公正かつ多様な働き方の実現」を掲げるというような状況の下で、この「ディーセント・ワーク」は、仕事と生活の調和を図る際の仕事のあり方を明らかにするために欠かせない概念としています。