8月29日、日本原子力発電(原電)は、東海第2原発の周辺15自治体でつくる「東海第2発電所安全対策首長会議」(座長・高橋靖水戸市長)の要望を受け、新たな原子力安全協定を締結する方向で、新たな協定案を示しました。東海第2原発の再稼働や運転延長などの重要事項にかかわる自治体への報告や自治体側が必要に応じて現地を確認し、意見を述べる権限(意見権)を盛り込んだ内容です。
原電は今年3月、東海村と隣接自治体(日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市)に水戸市を加えた6市村と、再稼働に関わる事前了解権限も認める新たな原子力安全協定を結びました。首長会議では、さらにUPZ圏内の自治体(常陸大宮市、大洗町、城里町、高萩市、笠間市、鉾田市、茨城町、大子町)に小美玉市を加えた9市町に、安全協定の締結や施設を新増設する際に意見を述べる権限の確保などを求めていました。
原電は29日、水戸市内で開かれた首長会議でUPZ圏内の8市町まで安全協定締結の対象を拡大する新たな協定案を提示。年間主要事業計画や定期検査計画など重要事項を報告するとともに、自治体側の必要に応じて現地を確認し、意見を述べる権限を認めました。小美玉市については「協定とは別枠で報告連絡を行う」としました。
今回示された新協定案には、6市村に与えられた事前了解権は含まれません。原電の剱田裕史東海事業本部長は「再稼働に至るステップは複数あり、節目ごとに各自治体へ報告を行っていく」と説明。新協定案について「安全確保のために必要があれば現地を確認していただき、意見を頂戴する。基本的には(首長側の)ご了解をいただいたと思っている」と述べました。
新協定案について高橋市長は「一部の文言で修正が必要となるが、(首長会議が)求めてきた権限は得られることになる。今後、8自治体が新たな安全協定を結ぶことになり、小美玉市についても何らかの形で(権限を)担保し、(9市町)全ての自治体が同じ権限となる」との認識を示しました。具体的な締結時期については「できるだけ早く完成形として公表したい」としました。
9市町の「意見権」については、再稼働や運転延長の実質的な歯止めにはなりません。しかし、いったん深刻な事故が起きれば、その被害は広範にわたるため、20キロ圏内の自治体が正式なテーブルで原電に意見を述べられる権限の明確化は大きな一歩であると評価します。