4月8日から11日まで鳥取県と島根県に出張しました。首長をはじめ自治体の防災関係者から様々なご意見をうかがう中、仮設住宅の在り方について、改めて考えをまとめました。
度重なる自然災害が全国各地を襲う中、被災者の命と生活を支える「仮設住宅」のあり方が、今あらためて問われています。これまでの仮設住宅は、いかに迅速に建設するかが最大の関心事でした。しかし、長引く避難生活を強いられる被災者の現実を目の当たりにするにつれ、単なる「スピード」だけでなく、「居住性」や「継続利用」を視野に入れた柔軟な発想が求められる時代へと変わってきています。
そうしたなかで、注目すべき二つのアプローチがあります。
ひとつは、工場などであらかじめ高品質な住居ユニットを製作し、災害時に迅速に現地へ運搬・設置できる「ムービングハウス」の構想です。これは“社会的備蓄”という発想が不可欠であり、建てては壊す従来の仮設住宅の在り方を大きく覆す可能性を秘めています。備蓄とは、食料や医薬品に限られるものではなく、“居場所そのもの”を備えておくという考え方にシフトしていく時代が到来しています。
もうひとつは、熊本県が実践してきた「くまもとモデル」に代表される、木造仮設住宅の活用です。能登半島地震でも、「まちづくり型応急仮設住宅」「ふるさと回帰型仮設住宅」として展開されました。鉄筋コンクリート基礎を備え、県産木材や畳をふんだんに使ったこの住宅は、断熱性・遮音性に優れ、住む人に温もりと安心感を与える空間として高く評価されてきました。被災される方が、高齢者が多い中、昭和の香りがする木造棟割住宅は、住む方に温かさも提供します。
写真は、ムービングハウスと熊本モデルの仮設住宅が、並んで建設された熊本水害の際の球磨村の仮設住宅です。
この両者に共通するのは、「仮設住宅を一時的なものとして終わらせない」という思想です。ムービングハウスは、被災地に仮設として供給した後、地域の公共住宅や福祉施設、あるいは空き家対策のツールとして再活用することが可能です。くまもとモデルの木造住宅もまた、仮設期間終了後に市町村へ譲渡され、公営住宅や地域の集会所として利活用されてきました。
しかし、仮設住宅の本来の役割は短期間で、被災した方々に、生活再建の場を提供することです。仮設住宅に提供に半年以上がかかる現状は容認できません。備えは、時間と知恵があってこそ機能します。平時の今こそ、災害のたびに一から住まいを建てるのではなく、“活かせる仮設住宅”という発想を社会全体で共有し、次なる災害に向けた住まいの備えを築いていくべきです。