厚生労働省は、身体障害者や知的障害者の入所施設の新設に対して、補助を行わないことを4月30日、全国の自治体に改めて通知しました。(共同通信の配信2004年4月30日17時01分)
障害者が地域で暮らす脱施設を進めるための対策です。厚生労働省は、2002年12月に「入所施設は真に必要なものに限定する」との方針を発表しましたが、その後も申請が多いことから、より厳しい姿勢で臨む必要があると判断したものです。
入所施設の建設費は国が2分の1を、都道府県が4分の1を補助しています。建設する社会福祉法人や市町村の支出は全体の4分の1ですむため、これまで入所施設の大部分は国の補助を受けてきました。国が支援しなくなれば、都道府県が補助を上乗せするのは財政的にも厳しく、新増設は難しくなるとみられます。
厚労省は、地域交流やサービスの拠点になる施設や、施設でないと対応できない重い行動障害がある重度心身障害児の施設など、特に必要がある場合に限り例外的に補助を認めることにしています。その場合も有識者や保護者らから意見を聞いて厳密に判断し、6月に都道府県に内示する予定です。
各自治体からの2004年度の補助申請は、例年の半分程度に減ったものの、新設が52件、定員増を伴う増改築が11件出されています。新設の内訳は知的障害者入所更生施設が18件、身体障害者療護施設が11件、重度心身障害児施設が4件などとなっています。
厚労省は、障害者が地域で生活するための支援態勢を充実させるため、新増設の補助をデイサービスや通所授産施設の整備などに充てるほか、知的障害者や精神障害者が単身でも公営住宅に入居できるようにしたり、グループホームとして利用できたりするよう国土交通省と協議するなど、受け皿作りに力を入れていくとしています。
さて、入所施設の是非については、議論が分かれるところです。私も、地元に知的障害児施設を作る運動に協力をしています。「親なき時」が来ることを心配され、地道に寄付活動などを進められている方々です。ここ半年の厚労省の急ハンドルには、大きなとまどいと動揺が起こっているといっても過言ではありません。当事者の皆さまに、あまりにも情報が少ない、説明がなされていないというのが現状です。県や市町村の担当者も、ことの急展開にあたふたとしているというのが本音ではないでしょうか。
「カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル」に次のような記述がありました。
「カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル」
地域での普通の暮らし-支援者-地域生活支援=入所施設
【現在(イマ)】
地域での普通の暮らし-支援者-地域生活支援=入所施設
(注)
1 支援者には、親含む(人)
2 地域生活支援は、社会的資源(モノ・金)、制度的保障と多岐にわたる
3 「終着駅」としての入所施設
この式で、左辺から右辺へ移項すると――
【近未来(コレカラ)】
地域での普通の暮らし=入所施設※+支援者+地域生活支援
になるんですね。
(注)
※この式での入所施設は、
・一時避難の場所(シェルター)
・地域生活の練習をする場所=通過していく施設
として機能する。
カイパパの指摘する「支援者」や「地域生活支援」の具体像を提示することなしに、入所施設をカットする方針は、障害者の親御さんたちには理解して頂けるでしょうか。心配です。
井出様
はじめまして。カイパパです。記事引用&Trackbackありがとうございます。
厚生労働省の動きは、たしかに強引にうつるかもしれませんね。
しかし、私は、時代の潮流が確実に変化しているあらわれのように感じています。
本人の選択を親が代わってすることの、根源的な問題(「親と子の利害対立」といってもいいかもしれません)に思いをいたらせると、
「親の安心のために、安全な入所施設」――というのは、最適解ではなかったのでは?
04/03/17 社会保障審議会障害者部会(第6回)議事録
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/txt/s0317-1.txt
の中で、
「入所施設を因数分解してみると、色々な機能があることが分かる。もう少し精緻な議論をすることで、地域生活に必要な資源は何かが見えてくる」といった趣旨の発言をしている委員がいます。
これには「なるほど」と思いました。
現在、入所施設は住居、就労の場、日中活動の場など、さまざまな機能を担っていますからね。
私は、入所施設は、今後、一時避難所(シェルター)と自立生活の練習の場としての役割を担っていくのかなあ、と考えています。
わが子の将来としては、あくまでも生まれ育った地域で普通に暮らしていく可能性を探りたいです。
これから、もっと勉強して自分の考えをかためていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。