先のBlogでも触れましたが、民主党出身の本岡昭次副議長の「散会宣言」問題は、良識の府・参議院の歴史に大きな禍根を残しました。
参院規則82条には、「議事日程に記載した議事を終わったときは、議長は散会を宣言することができる」と定められています。これは、「散会を宣告できるのは議事がすべて終わった時点であり、それ以外は延会手続きを取らなければならない」という意味に他なりません。
「散会はできません」と参院事務総長が、本岡副議長に散会宣言を制止する言葉が、テレビの実況からもはっきりと聞き取れました。にもかかわらず、本岡副議長は議会のルールを犯す暴挙に出ました。
その理由をマスコミに問われ、本岡副議長は「民主党に言われたからやっただけ」と、議長の権限を党利党略で利用したことを認めています。
議長・副議長は、その偏らない議会運営を保障するため、所属する政党から離れ無所属の立場になります。多数決の国会運営にあっても、議長は第一党から、副議長は第二党からという慣例が続いていました。
しかし、今回の本岡副議長の「散会宣言」は、そのような議会の基本ルールを根本から崩してしまいました。正に、「参院の権威が傷ついた」(6月6日付読売新聞)、「権利の乱用との批判を招きかねず『憲政史上例のない禁じ手』」(6月6日付産経新聞)とのマスコミの批判も当然です。
さて、こうした状況を党の民主党の国会議員はどのように認識しているのでしょうか。
ご本人・本岡昭次副議長のホームページは、菅直人代表の辞任で更新が止まっています。菅直人元代表の今日の一言は「国会も最終盤、閉会すればすぐに参院選となる。」と達観した内容です。岡田克也現代表のホームページには、全くこの問題の記載はありません。
唯一、党の公式ページには、岡田代表のコメントが載っていました。
と、散会問題には全く触れていません。ニュース・トピックス 2004年06月07日
「参院の混乱について明確なけじめ求める」岡田代表
岡田代表は、6月7日の臨時役員会では、年金法案をめぐる参院の混乱および内閣不信任案の扱いについて議論がなされたことを報告。参院での混乱をめぐっては、厚生労働委員会での質問封殺による強行採決、不信任案が出された議長による本会議の議事進行など、与党の度重なる暴挙が「わが国の議会制度の根本が問われる危機的な状況を招いている」との認識を確認し、「きちんとしたけじめ」「国民に分かるような決着」を求めていくことで一致した、と明らかにした。
民主党の皆さん。本岡副議長の犯した罪の重さを自覚され、一刻も早く正常な国会審議を再開してください。会期末まで、残された日数はもう10日あまりしかありません。
本岡副議長の「散会宣言」問題では、読売新聞の飯田政治部次長のコラムが正鵠を得ていると思います。お叱りを覚悟で引用させていただきます。
年金国会「散会」、傷ついた権威
政治部次長・飯田政之(2004.06.06)
成立した年金改革関連法は「抜本改革」というにはほど遠い。自民党の国会運営にも一部で問題があった。しかし、たとえそうだとしても、こんな奇策で年金改革関連法案を廃案に持ち込み、国民の理解が得られると思っていたのだろうか。本岡昭次参院副議長のとった行動のことである。
参院本会議で議長不信任案を処理する間、倉田議長は席を外さざるを得ない。議長席についた本岡氏は、多くの案件があるにもかかわらず、何の説明もなしに、突然、「散会」を宣告した。結果的には大きな混乱もなく、法案は成立したが、このことが議会政治に残した傷跡は看過できない。
もとより、議長は議会の秩序保持、議事整理などに大きな権限を持つ。厳正・公平・中立であるのが前提だ。ときに議長を代行する副議長も同様だ。
本岡氏は「民主党に言われたからやっただけ」と説明した。この発言でも明らかなように、議長席をまさに自分の出身党派のために利用してしまった。
<中略>
行司役である議長、副議長は、自分一人の行動で重要法案の成否を決してしまうような行為は厳に慎まなければならない。
まして、副議長自ら議会のルールを根底から覆すような議事運営に出ることは許されない。参院の権威が傷ついた。