民主党は10月3日、政府の郵政民営化関連法案の対案となる「郵政改革法案」を衆議院に提出しました。
郵便事業の現状(国営)維持を中心に、決済・少額貯蓄サービスも国営としました。簡易保険の事業それ自体を廃止することとしました。
当初、前原代表が主張した郵便貯金の廃止は大幅に後退し、定額貯金だけの廃止に改められました。
それ以外の郵便貯金に対する政府保証もつけることにしました。
廃止する郵便貯金の種類を定額貯金に限定したのは、「通常貯金だけの運用では、郵便事業の赤字を埋めるだけの利益が出ないことがわかった」ためと説明されています。
民主党案では、日本郵政公社は2007年10月までに100%子会社の郵便貯金会社を設立。同時に定額貯金を廃止し、定期貯金や通常貯金などを郵貯会社に引き継ぐとしています。郵貯の預入限度額は現行の1000万円から段階的に引き下げ、最終的に500万円とします。
簡易保険についても、07年10月に廃止。公社100%出資の複数の郵政保険会社に、保険契約を分割譲渡します。公社は、保険会社の全株式を12年9月末までに売却し完全民営化されます。売却した株式を、公社や郵便貯金会社が買い戻すことは禁止しました。公社職員の身分は非公務員とするとともに、天下りは禁止することを明記しています。
民主党の郵政民営化法案を概観して、強く思うことは、この法案にはたして民主党全体の同意が得られているのかという素朴な疑問です。07年までに定額貯金を廃止し、郵便貯金の預け入れ限度を700万円に引き下げるとすると、果たしてどれだけの人員削減が必要なのでしょうか?こうした人員削減も含めて、労組を支持母体とする民主党の国会議員との意見のすり合わせはできているのでしょうか。
衆院選での民主党大敗の要因は、いくつも指摘されていますが、私は、国の基本的な枠組みについて、党内での統一ができていないことが挙げられるのではないかと思います。
郵政労働者の立場を守る立場の議員とドラスティックに人件費や人数の削減を指向する議員が同衾する体質が、国民の理解を得られていないのではないかと考えています。
付け焼き刃で提出した郵政民営化法案に、民主党の深き憂鬱が垣間見られます。