子育ての最大の阻害要因は、子育てを犠牲にした働き方と経済的負担の重さ
公明党は4月27日、チャイルドファースト(子ども優先)社会の構築をめざす「少子社会トータルプラン」を決定しました。その基本的な考え方は、子育てのさまざまな阻害要因を取り除くことです。
阻害要因の中でも最も大きな要因は、子育てを犠牲にした働き方と経済的負担の重さです。
まず、子育ての時間を犠牲にした働き方の問題です。正規労働者は長時間労働に苦しんでおり、例えば南関東では、平日の帰宅時間が23時から翌朝3時までの間になる父親の割合が20%に達しています。反対に、パートや派遣などに代表される非正規労働者は、不安定な身分保障からくる将来への不安で結婚に踏み切れない人も多いのが事実です。
また、女性の正規労働者にとって、結婚、出産、育児は大きな負担となっています。育児休業が法律的には認められていますが、現実には取りにくい環境があります。男女共同参画社会の遅れが、少子対策の遅れに連結しているものと考えられ、早急な是正が求められています。
時間外労働の割増賃金率を40%に引き上げを
公明党の少子化トータルプランでは、時間外労働の割増賃金率の引き上げを提案しました。日本の時間外労働の割増率は25%(休日35%)と、諸外国(50%)に比べて低い現実があります。このことが、コスト削減の観点から、少人数で時間外労働を増やすことに結びつきやすくなります。そして、時間外労働が増えた人の家庭では、母親が育児のすべてを担うことになり、過重な負担がかかってしまいます。そこで、割増賃金率を40%(休日50%)に引き上げ、一人に長時間、働いてもらうのではなく、雇用の機会を増やすことで全体のバランスをとっていく方向に改めるという発想です。
ただし、中小企業には厳しい措置なので、正規労働者を増やして対応してくれる中小企業には、緩和措置や助成金、税制の優遇を検討することにしています。
そのほか、パートや派遣など非正規労働者については、一定期間、雇用を継続した場合、正規労働者への移行を義務づけるとともに、非正規労働者の多い企業には、雇用保険料の引き上げも視野に入れています。
さらに、正規短時間労働の位置づけを明確にしながら、正規労働者と非正規労働者の間の賃金や社会保険の加入における格差をなくします。非正規労働者への社会保険の未適用が、非正規労働者の増加に結びつき、経済的理由で結婚できない人を増やす要因になっているからです。
オランダには、夫婦それぞれが0.75人分ずつ、合わせて1.5人分働き、お互いに時間をつくりながら子育てする仕組みがありますが、このオランダ方式の導入も検討することとしています。
経済負担の軽減のために、児童手当を18歳までに拡大・支給額も倍増
二つ目の阻害要因は、子育てに関する経済負担の重さ。特に、教育費がかかりすぎる問題があります。
少子社会トータルプランでは、経済負担の軽減のために、児童手当を18歳までに拡大し、かつ支給額も倍増できるよう、財源の確保に努めることを提案しています。
また、高等教育の家庭負担が増大していることを踏まえ、奨学金を一層受けやすくするとともに、利息の上限を抑制し、利子補給を行います。
それから、保育所の入所要件から、「保育に欠ける」との条件を見直し、どんな家庭のお子さんでも、保育所に入れるようにします。
また、今年10月から本格実施される就学前の乳幼児を対象とした「認定こども園」を拡充し、保育所待機児童ゼロ作戦を強化するほか、ともに小学生を対象とした放課後児童クラブ(厚生労働省の所管)と地域子ども教室(文部科学省の所管)を一体化して小学6年生まで預かる「放課後子どもルーム」(仮称)の創設を進めます。
財源の確保については、育児保険制度を検討
こうした子育て支援の財源の確保については、育児保険制度を正式に提案しました。この問題は、年金、医療、介護、雇用、労災と現在ある各保険制度との関連もあるので、ここからの支援を強化することも、次善の策といえます。また、財源がなお足りない場合には税制からの支援を検討するとしています。広く薄く負担する消費税の導入についても理解を求める必要があります。いずれにしても子育ては、社会全体で支援しなくてはならない最重要な課題です。
(この記事は、公明新聞の記事と坂口力前厚生労働大臣の発言をもとにまとめました)
参考:公明党「少子社会トータルプラン」<概要>