井手よしひろ県議ら公明党茨城県議会の議員団は、6月7日、「筑波大学陽子線医学利用研究センター」(つくば市天川)を訪れ、センター長の秋根康之教授らの案内で施設を視察しました。この視察には、県議会議員会の足立寛作代表、鈴木孝治県議が参加しました。
陽子線医学利用研究センターは、水素の原子核から電子を取り除いた陽子の束を(陽子線)を活用したがん治療の研究が進められています。陽子線を体内の病巣に照射し、がん細胞だけを破壊することができます。筑波大学ではすでに1600人を超す患者に陽子線治療が施されており、外科手術に劣らない治療成績が納められています。特に、肝臓がん、食道がん、肺がん治療などに大きな成果を挙げています。患者への身体的負担の少ない治療法として国民から大きな期待が寄せられています。
井手県議らは、秋根センター長から施設の概要について説明を受けた後、実際に施設内を視察しました。栄武二教授の案内で、陽子線の照射室、治療照射装置(回転ガントリー)、陽子加速器(ライナックとシンクロトロン)などを順次見学しました。
栄教授からは、以下のような貴重なご意見を伺いました。
*筑波大の形式の陽子治療装置は、医学的にも工学的にもほぼ完成の域に達している。
*加速器など工学的な装置は、性能を追求することも大切だが、運用のコストやメンテナンスの容易さを考慮することも重要。
*陽子線治療の普及には工学系の専門家を育成する仕組みが日本には整っていない。一番大切なのは人材の育成。
実際の装置を見学した後、秋根センター長、栄教授との意見交換を行いました。
井手県議が「陽子線によるがん治療を、医療行為として患者負担を試算するとどの程度のなるか」との質問に対して、秋根センター長は「極く荒い試算としては、年間800人を治療すると仮定すると1人当たり144万円程度の治療費となる。肝臓がんの一般的な治療費が120万円程度であることから、将来、保険適用も可能ではないかと考える」と回答しました。
茨城県では、JCO臨界事故をきっかけとして国からの交付金を活用した粒子線治療機関を整備する計画があります(粒子線治療装置についてヒアリング)。FFAGと呼ばれる新型の加速器を利用しようとする計画が進んでいましたが、現在、抜本的な見直しが行われています。秋根センター長は、ほぼ実用化された陽子線治療(筑波大方式)と一般の放射線治療施設を組み合わせた「県北放射線医療センター」といった方向性が、県民にとって一番身近で、現実性が高いのではないかとの見解を示しました。。
参考:筑波大学陽子線医学利用研究センターのホームページ