高速道路の不正通行が急増しています。2001年度は全国で約27万件だったのが、2005年度は3.4倍に当たる約93万件に上りました。高速道路各社のうち首都高速道路会社では2005年度に2億6000万円の被害が発生したと報告されています。不正通行の急増の主な要因は、ETCの普及です。
2001年3月から導入されたETCの車載装置は、料金の割引制度が導入されるなど促進策もあり、現在1383万台の車に搭載されています。全国の高速道路料金所のETCゲート利用率は約63%に達しています。料金所周辺の渋滞解消に役立つため、今年11月には二輪車への導入も決まっており、今後も広く普及するとみられます。
しかし、その一方でETCレーンでの料金を支払わない不正通行が激増しています。うち半数以上は、ドライバーがETCの車載装置に専用のカードを挿入し忘れていたり、通過時の徐行運転が不十分なために料金不払いとカウントされる「うっかりミス」です。しかし、残り半分近くが、ETCゲートの強行突破という悪質な行為です。
ETCゲートにあるバーは、誤作動で開かないトラブルに備え、車に傷を付けないようウレタン素材が使われています。これを逆手にとって、強行突破が繰り返えされているのです。
こうした中、不正通行撲滅のために国も動き出しました。2005年10月に改正道路整備特別措置法を施行し、不正通行には罰金刑を課しました。高速道路各社も悪質ドライバーに対し、割増金(正規通行料の3倍)を課しています。
ETCの出入り口には、テレビカメラが設置され、自動的に車のナンバープレートを記録しています。今年8月には、神奈川県警が、東日本高速道路会社の被害届を受理し、中央高速道などでETCゲートの不正通行をしていたとして、男性会社員を道路整備特措法違反で逮捕しました。不正通行は310回以上で、100万円の罰金刑を受けたうえ、東日本高速道路会社などから約90万円の課徴金を請求されました。
国交省は高速道路各社に積極的な被害届提出を指示しており、今後、全国の警察でこうした悪質ドライバー摘発の動きが加速しそうです。
また、9月26日、「無料通行宣言書」という用紙を料金所に手渡すことによって、高速道路の不正通行を進めている「フリーウェイクラブ」の会長が、道路整備特別措置法違反容疑で逮捕されました。
フリーウェイクラブは会費15000円を支払えば誰でも入れる組織。会員には「無料通行宣言書」が発行され、高速道路の料金制度に反対するための手段として、利用料金を払わずにこの通行書を渡すよう勧めてしています。
今年5月9日には、不正通行を繰り返した容疑者が逮捕されました。容疑者は514回の不正通行を繰り返していました。という驚くべき回数ですが、これも「無料通行宣言書」と同種である「旧500円通行宣言書」が使われていました。高速道路会社はこれらの不正通行に対し、断固とした態度をとっているのです。
更に9月には、有料道路の料金を支払わずに通行を繰り返し起訴されていた会社員に対し、罰金100万円の略式命令が下されました。会社員は、横浜新道を通行する際に、料金を支払うかわりに「無料通行宣言書」を料金収受員に渡し、無料で通行していました。1回あたりの通行料金は200円と軽微ですが、13回に渡り不正通行を繰り返しており悪質と判断。略式命令の上限である罰金100万円の支払い命令が下されました。
フリーウェイクラブは、1987年に設立され、会員は約2000人(2002年現在)。会員は会費を払って送付された「無料通行宣言書」による不正通行は2005年度、主な6つの高速道路会社で少なくとも約1万6000件に上るとみられています。不正通行の横行を受けて昨年10月、道路整備特措法が改正され、30万円以下の罰金刑が盛り込まれました。
参考:フリーウェイクラブのホームページ