母子加算は07年度から3年間で全廃
憲法に保障された最低限の生活を保障する、生活保護制度の見直しを求める動きが始まっています。
10月25日、全国知事会と全国市長会が設置した「新たなセーフティネット検討会」は、現役世代に対し保護費の支給期闇を最大5年間とする「有期保護制度」の創設や、高齢者世帯を別の制度に分離することなどを国に提言しました。
現行の生活保護制度は、保護の期限に制限が無く、少子高齢化や人口減少、家族や就業形態の変化などに対応できていなくなっています。
実際、市民相談などで多くの方と接する中で、生活保護費、アルバイトやパートタイムで働く社員の収入水準とあまり変わらなく、著しく勤労意欲を減少させているとの声を良く耳にします。また、支給額が国民年金を上回っているケースもあり、若いフリーターの中には、「年金の保険料は払う必要ない、最後は生活保護で面倒をみてもらえる」との話しも出るのが事実です。
05年度の生活保護受給者は、全国で約148万人、100人当たりの割合を示す保護率は1.16%で95年度の1.7倍に達しました。保護費の合計は約2兆5900億円に膨らんでいます。
受給世帯のうち高齢者世帯が44%、傷病・障害者世帯が38%で、自立が困難な人が8割を占めており、今後、約265万人に上るニートやフリーターなど年金の未加入や未納者が将来受給者になれば、ますます財政負担は増大し、制度が維持できなくなる可能性も懸念されています。
こうした流れを受けて、厚生労働省は11月30日、生活保護の「母子加算」を段階的に原則廃止する方針を固めました。「母子加算」は15歳以下の子どもがいるひとり親の生活保護世帯に支給されてます。厚労省は、07年度から3年間で段階的に廃止します。16~18歳の子どもがいる世帯は、既に05年度から削減が始まっており、07年度で廃止されます。削減対象を拡大することで、社会保障費の伸びを抑えるのが目的です。
母子加算は現在、約9万世帯に支給されています。月額2万2000円~2万3260円。これを毎年3分の1ずつ減らし、3年間で全廃する方針です。
生活保護費の見直しも必要な課題です。しかし、生活保護制度は、国民の生活を守る最後のセーフティネットであり、地方毎の保護率の格差や支給額のあり方を巡って、慎重な論議が求められます。
と同時に、生活保護費の水準より低く設定されている最低賃金の基準などの見直しと同時に議論されて行かなくてはいけないと思います。
生活困窮者が、衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助であり、飲食物費、光熱水費、移送費などが支給される。主として第一類と第二類に分け計算され、第一類が個人ごとの飲食や衣服・娯楽費等の費用、第二類が世帯として消費する光熱費等となっている。
教育扶助
生活に困窮する家庭の児童が、義務教育を受けるのに必要な扶助であり、教育費の需要の実態に応じ、原則として金銭をもって支給される。
住宅扶助
生活困窮者が、家賃、間代、地代等を支払う必要があるとき、及びその補修、その他住宅を維持する必要があるときに行われる扶助である。原則として金銭をもって支給される。
医療扶助
生活困窮者が、けがや病気で医療を必要とするときに行われる扶助である。原則として現物支給(投薬、処理、手術、入院等の直接給付)により行われ、その治療内容は国民健康保険と同等とされている。なお、医療給付は生活保護指定医療機関に委託して行われるが、場合により指定外の医療機関でも給付が受けられる。予防接種などは対象とならない。
介護扶助
要介護又は要支援と認定された生活困窮者に対して行われる給付である。原則として、生活保護法指定介護機関における現物支給により行われる。介護保険とほぼ同等の給付が保障されているが、現在普及しつつあるユニット型特養、あるいは認知症対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護は利用料(住宅扶助として支給)の面から制限がある。
出産扶助
生活困窮者が出産をするときに行われる給付である。原則として、金銭により給付される。
生業扶助
生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、又は技能を修得するための費用、就労のためのしたく費用等が必要なときに行われる扶助で、原則として金銭で給付される。平成17年度より高校就学費がこの扶助により支給されている。
葬祭扶助
生活困窮者が葬祭を行う必要があるとき行われる給付で、原則として、金銭により給付される。
これらの扶助は、要保護者の年齢、性別、健康状態等その個人または世帯の生活状況の相違を考慮して、1つあるいは2つ以上の扶助を行われる。
一番問題になる不正受給には、不正就労がその要因となっています。源泉税の申告をしない雇用主の下で現金払いによる就労、また友人の名義を使った就労、オークションや中古リサイクル店などへの売却、仕送りの受け取り、アルバイト収入などがあります。本来はすべて収入として申告するべき物であるが、これらを怠り不正受給となる事が多いのが現実です。
不正受給が跡を絶たない理由は、福祉事務所が不正追求に及び腰であり、ほとんど刑事告発をして来ず、また警察も積極的に立件に乗り出さなかったという行政側の姿勢にも問題があります。納税者の感情としては詐欺罪等で立件をし、裁判に付す事が強く望まれます。
申請時の水際作戦とは、申請の受付窓口である市町村や福祉事務所が申請書を交付しないという問題です。申請に訪れた生活保護の希望者を、指導や相談と称して、申請を受け付けずに門前払いしているケースもあります。生活保護扶助費用の1/4が自治体予算からの支出となるため、財政状況が厳しい自治体に、その傾向が見受けられます。
地域格差についても大きな問題があります。全国的に見ても受給比率が高いといわれる大阪府、東京都、長野県などでは、比較的優遇されているといわれており、全国的に見ても受給比率が低い富山県や福岡県では、上記水際作戦だけでなく、法のぎりぎりの範囲まで申請を却下するという動きがあるといわれています。扶養照会(福祉事務所が申請者・受給者の三親等以内の親族に対して扶養が出来ないかを確認する事務手続き)を逆手にとって、繰り返し親族に問い合わせをするケースなどもあります。