厚生労働相の諮問機関「労働政策審議会分科会」は、『ホワイトカラー・エグゼンプション』という考え方を打ち出しました。
労働基準法では、労働時間を1日8時間、週40時間と決めています。その基準を超えて働かせるためには、割り増し賃金=残業代を支払わなければいけません。しかし、同じ8時間働いても、人によってその結果に差が出てくるのが普通で、要領よく効率的に働いた人より、仕事をこなせず残業をした人の方が残業代が高くなる弊害もあります。
そこで、登場したのが『ホワイトカラー・エグゼンプション』制度です。これは、管理職一歩手前の人、例えば、①重要な権限と責任を持つ、②年収がある程度高い、③使用者から具体的な指示を受けない-といった条件が当てはまるホワイトカラーの従業員を対象に、労働時間の規制を外し、残業代は払わなくても良くする制度です。
しかし、この制度には、労働強化につながるという心配から、強い反対論があります。
例えば、年功序列の賃金制が崩壊し、成果による格差が大きくなった現在、労働組合の組織率は下がる一方で、労働者の立場は著しく弱くなっています。特に、サービス残業の問題は深刻化しています。こうした中で「残業代ゼロ」の働き方を解禁したら、結果的に賃金切り下げになってしまします。
また、年収がある程度高い人が対象といっておきながら、日本経団連は昨年春、年収400万円以上を対象とする案を提案しており、この水準では、労働者のかなりの部分が残業代ゼロの中に含まれてしまいます。
さらに、仕事の手順について裁量を持つ労働者はいても、仕事の質、量、スケジュールまで自分で決められる人は、ほんの一握りの人たちです。経済界の中でも、経済同友会はこんな理由から、ホワイトカラー・エグゼンプションに慎重姿勢を打ち出しています。
こうした状況の中で、『ホワイトカラー・エグゼンプション』の見切り発車は許されるべきではありません。
公明党の太田昭宏代表は、1月2日の新春街頭演説で、制度の導入には慎重な姿勢を示しました。
通常国会提出は時期尚早=ホワイトカラー残業代廃止で-太田公明代表
時事通信(2007/1/2)
公明党の太田昭宏代表は2日午前、JR新宿駅前で街頭演説し、一部のホワイトカラーを残業代の支払い対象から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション制度」導入について、「残業代がなくなるのではないか。安定した仕事、生活を成り立たせるには慎重を期してやっていかなければならない」と述べ、今月召集される通常国会への労働基準法改正案提出は時期尚早との考えを示した。その上で、太田氏は議論を深めるための与党協議会設置を提案した。

